セカイメガネNo.38
インサイトを視覚化する
2015/09/23
広告会社のインサイト部門で働くのは幸せで、悩み多い。「インサイト」はデータから読み取る。近頃注目の「ビッグデータ」は、イコール「ビッグニュース」である。そうした潮流は少なくとも私たちインサイト部門を面白くしてくれる。
けれども、一般的にインサイトは「退屈」で、「重要な戦略を説明する前段」扱いされることが多いのも事実だ。さほど期待されていない。もちろん、実際にインサイト部門に働く私には異論がある。この業界で一番楽しい仕事がインサイトだと正直思うからだ。
昔からの格言。「自分が心から愛してできることを見つけなさい。そうすれば生涯、ただの一日でさえ、人に無理やり働かされる感覚を持たずに済む」
ウィキペディアはインサイトをこう定義する。「ある人、もしくはあることについてのより深い理解」
こんな例がある。仕事のできる人と職場で親しくなった。その人はソーシャルメディアでは子猫の写真ばかりアップしている。友人のそうした一面こそインサイトだ。別の例を挙げよう。別れた恋人とソーシャルメディアでは友達関係を続けている。元恋人はセルフィーを熱心に投稿し、他人に関心を持たない。これもインサイトだ。相手より自分に関するインサイトだ。別れた後、自分は変化し成長し、相手はそうでなかったことに気付けたからだ。
人間や製品をより深く理解するのは面白い。そのインサイトがより多くの人たちに共有し記憶されればさらに面白い。本物のインサイトは相手と関係を構築し、情報を伝えやすくし、記憶を助ける。人間は読んだものの20%しか記憶しないが、見たものなら80%記憶する。ソーシャルメディアで画像、写真が主流になっているのも自然の成り行きだ。
私たちはインサイトを視覚化してプレゼンテーションする新しい手法を最近開発した。インフォグラフィックスを多用したポスターだ。人間、製品について発見したことを絵と文字で一枚にまとめて相手と共有する。この手法はクライアントに好評だ。なぜならプレゼンテーションで人が記憶するのは実はインサイトの部分だったのだ。クライアントはそのポスターをオフィスに持ち帰ってインサイトを上司やスタッフと簡潔に共有する。
ビッグデータの世界で、データを意味あるものに変換する面白い手法―集積した知識を絵と文字に凝縮し、クライアントの戦略に変換すればよいことを私たちは発見したのだ。
(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)