民放5局社長に聞く BS16年目の展望
第3回〜BS-TBS・星野誠社長~
2015/12/02
2000年12月1日に始まったBSデジタル放送が16年目を迎えました。メディアの特性を生かした番組で着実にファンを拡大し、成長を続けてきたBS民放5局。15周年の節目を機に、各社トップにコンテンツの魅力や強み、今後の取り組みについてインタビュー、さらにBSの将来を表す漢字一文字と、込めた思いを語っていただきました。
極めて高い自社制作率がBS-TBSの強み
──社長に就任されて、半年がたちました。BS-TBSの魅力をどのように捉えていますか?
BS-TBSは自社制作率が極めて高く、ゴールデン帯では85%を占めています。それらの番組のクオリティーも非常に高いと感じています。この半年で、ようやく自社や他局の番組を見通したというところですが、BS-TBSがキャッチフレーズとして掲げる「満足・気分」の通り、見終わった後に満足する気分になる番組が多いと自負しています。
自社制作の番組が多いのは、開局時からの傾向です。制作費をどの程度掛けるべきか、当初こそ試行錯誤が続きましたが、開局15年を迎えて成熟期の一歩手前、まさに大人のメディアになりつつあると思います。全体の番組セールスと収益、制作費のバランスがこの数年で安定してきています。
──BS-TBSはBS開局以来、売り上げトップを走り、BSの発展をリードしてこられました。その中で、星野社長が開局16年目に目指す姿を教えてください。
16年目の1年は、特に激動の年になるでしょう。例えば4K・8K放送実現へのロードマップが明らかにされ、来年はその入り口です。地上波キー局では、見逃し配信が始まりました。テレビと通信、地上波も衛星も入り交じり、さまざまな対応にも迫られます。その中で今後もBS-TBSは、リーダーとして力強く動いていきます。
対外的には「最大・最良」。これは非常にシンプルで、セールスを「最大」に、そして視聴データを活用して「最良」の番組をさらに増やしていきたい。4月から機械式接触率調査が始まっていますが、ここで一番の好成績を狙います。そのためにも、良質なコンテンツで視聴者と広告主企業に満足いただくことは大前提です。
──今後の成長の核となるコンテンツについて、お聞かせいただけますか。
まずは、看板番組の「吉田類の酒場放浪記」。私がこの半年で外部の方とお会いして、必ず名前を挙げていただく番組です。ただ、一方でこれ以外の番組名がなかなか挙がらないのが課題です。
そこで社内では最近、「第二の“酒場”をつくれ」を合言葉に、各ジャンルにおけるキラーコンテンツの制作に取り組んでいます。早速この10月には、「マンデードキュメント」と「外国人記者は見た!日本 in ザ・ワールド」という二つの報道系の番組をスタートさせました。これをうまく伸ばして、皆さんの口の端に上るようにしたいと思います。
スポーツで力を入れているのは、ゴルフです。昨年11年ぶりに復活した男子プロのマッチプレー選手権「ネスレ日本マッチプレー選手権 レクサス杯」を今年も放送し、BS放送でホールを追い、インターネットでのライブ配信用にもコンテンツを提供しました。見逃し配信とは逆に、スポーツでは“生”にこだわっていきます。
社会や人生を考える情報を得る「広場」として機能したい
──報道系では、BS-TBSはストレートニュースを持っていませんね。
地上波とすり合わせたわけではありませんが、私の考えは、ここは明確に役割分担をすべきだと。ストレートニュースは地上波に任せて、その多角的な見方や味付けの部分についてはわわれわれもやらせてもらうという方針です。先の二つの報道系新番組も、この考えに基づいています。
ニュースに限らず、視聴者に多角的な情報を提供して、これからの生き方を考える材料にしていただきたい。私のBSのイメージは「広場」です。政治や社会について、日本が世界からどう見られているのか、そういった議論の材料を取りにくる場としてBS-TBSが機能するためにも、総合編成に引き続き注力していきます。
BSは地上波に比べて、各局の番組の切り口が似通っているといわれます。同じシニア層の好みをくんだ結果なので、私は必ずしも悪いとは思っていませんが、その中でもBS-TBSらしい独自のコンテンツを提案する必要はあります。同時に、夜10時や11時の時間帯を中心に、若者向けのコンテンツも模索しています。
──BSの未来を、漢字一文字で表していただけますか。
これからのBSが直面する、変化、強化、進化…それらを踏まえて「化」と書きました。これら複数の点から変貌を遂げて、BSが中長期的にもっとメジャーなメディアになるという願いも込めています。
BS-TBSとしては、まず、若者へ向けての変化。それから、コンテンツの強化。今は地上波の番組でも、制作費を含めてさまざまな制約が出てきているため、表面上BSと似てくる番組も出てくるかもしれません。そのときは、こちらがもっと知恵を絞って、新たな切り口の内容を提案していかないといけない。その意味でも、コンテンツの強化は欠かせないと思います。
さらに、進化の部分では、メディアとしての進化が問われています。ネットとの共存をはじめ、多角的に通信と融合する、新しい形の模索が始まっています。
スパンとしては、BSが20歳の成人を迎える5年後くらいでしょうか。東京オリンピック・パラリンピックの年であり、4K・8K放送の在り方もはっきりするであろう2020年には、BS-TBSも社会における中心的なメディアとして大“化”けしていたいと思います。
開局15周年「BS見本市15祭」
BS民放5局は開局15周年を記念し、12月1日から「BS見本市15祭」を実施する(2016年1月31日まで)。期間中は、紀行、ドキュメンタリー、映画など、5局厳選のアーカイブ作品60番組以上を計130時間にわたって放送。さらに年末年始(12月28日~1月3日)は、5局共同特別番組「バック・トゥ・ザ・21世紀」を各局日替わり2時間で届ける。俳優の吉田鋼太郎氏が「吉田未来研究所 所長」に扮し、21世紀の五つのテーマ「怪物」「仕事」「東京」「女性」「時間」の研究成果を発表していく。