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Experience Driven ShowcaseNo.44

インバウンドは 「もの」消費から「体験」へ
~JRAの新しいチャレンジ~

2015/12/21

百貨店や流通でインバウンド消費が炸裂した今年の日本ですが、今後はサービス、エンターテインエントの分野でもインバウンド対策が重要になっていきます。日本中央競馬会(JRA)が11月15日に東京競馬場で行った、中国人顧客向けのイベントもまさにその先駆けの取り組みです。
この企画を手掛けた電通プロモーション・プロデュース局の山本暁野氏が、中国人ならではの視点で本当に中国人に効果のあるインバウンドについてレポートします。

編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

JRA独自のインバウンドイベントにチャレンジ!

「爆買い」が2015 年のキーワードになるほど、訪日外国人、特に訪日中国人が日本でさまざまな商品を大量購入することはもはや社会現象になっています。炊飯器、温水洗浄便座を代表とする家電から、青汁やサプリなど健康目当ての買い物まで、デパート、ドラッグストア、コンビニまで中国人の爆買い軍団が押し寄せています。

その中で、日本の魅力は買い物だけにあるのか?爆買いは、為替や季節など多くの外的要因に影響される一過性の現象ではないか?など、さまざまなクライアントが、インバウンドのネクストステップに関して感心を高めています。

はっきり申し上げます。日本の魅力は買い物だけではありません。豊富な自然、豊かな文化遺産、日本独自の文化など、日本人にとって当たり前のような日常には、実は中国人にとって魅力的なところがたくさんあります。
そんな中、インバウンドのネクストステップに注目して、新しいチャレンジを行っているのが、JRAです。

出典:日中コミュニケーション(株)

 

日本の「文化としての競馬」を、知識や経験として伝える

11月15日の日曜日、東京競馬場に中国人観光客20人ほどを乗せた大型バスが到着しました。日本旅行の最終日、彼らの目当ては、JRAが開催する訪日中国人のための競馬体験会です。中国本土に競馬がないため、彼らにとって、JRAでの競馬体験は独特で非常に興味のある内容なのでしょう。バスを降りてからすぐ「競馬はどうやって遊ぶの?」「楽しいの?」などツアーガイドにさまざまな質問が飛ぶほど、非常に関心が高い様子です。

出典:日中コミュニケーション(株)

 

到着後、すぐ競馬を体験するのではなく、まず案内されたのは、JRAの競馬博物館です。競馬の歴史、競馬が日本に導入されてからのストーリー、模擬レースの参加などを通じて、初めて競馬場に訪れた中国人旅行者に競馬は文化の一つであり、日本では老若男女問わず楽しめる国民的なエンターテインメントだということをしっかりアピールしました。

出典:日中コミュニケーション(株)

 

その後、JRAが用意した来賓室に旅行者一行を案内し、今回のツアーを企画した中国国際旅行社の劉さんから競馬のレクチャーを受けました。馬券の買い方から競馬場の楽しみ方まで、競馬ファンの劉さんは自分の経験も交えて中国人に分かりやすく説明してくださいました。テーブルには、JRAが中国人来場者のために特別に制作したガイドブックや馬券購入ツールなども設置されていて、日本語が全く分からない中国人でも簡単に楽しめるようになっています。

出典:日中コミュニケーション(株)

 

いざ馬券を購入してさっそくレースに参加! 最初は楽しみ方があまり分からないまま、とりあえず買ってみた人が多かったのですが、試しに1レース参加した後は、それぞれ自分なりの楽しみ方を見つけたようでした。「この馬が絶対一番」とか「私の目に間違いはない、この馬を買うべき」など、馬券を購入するときはもちろん、レースが始まると「頑張れ!」「走れ!」などの声が飛び交って、来賓室は大盛り上がりの状態でした。

出典:日中コミュニケーション(株)

 

中国ではなかなかないドキドキ体験で、参加者から「日本に来て初めて体験したことで、とても面白かった、次回も来たい!」の声を多数頂きました。レースに参加する他、実際引退した競走馬との触れ合い、パドックでの競走馬の視察、パドックに隣接する日本庭園の見学、スタンド7階から東京競馬場の緑いっぱいの全貌を眺めながらレースを観戦するなど、ドキドキの競馬体験だけではなく、美しい景色など、参加者自らの体験を通じてさまざまな楽しみ方があることを伝えることができました。

 

「体験」がつくるインバウンドの可能性を開発していく

ツアーの後、何人か参加者にインタビューを行いました。若い女性の参加者から「今回の初めての体験で、日本の知られてない一面を知ることができて、とても楽しかったです。日本はショッピング以外の観光資源もたくさんあるんだと感じました」。また、50歳代の女性参加者から「緑がいっぱいで競馬場というよりテーマパークですね。今度は孫を連れてきたいです」とのコメントを頂きました。

現在、東京競馬場に来場される中国人団体ツアー客は年間で300~600人程度です。400万人の訪日中国人全体に比べるとまだまだ少ないですが、彼らの体験を伴った口コミは、きっと訪日予定者に大きな影響を与えるでしょう。

また、彼らは今回の体験会でJRAや競馬に対して新しい認識ができたので、次回訪日する際またの来場も期待できるところです。

日本独自の「体験」こそ何よりも楽しくて価値があることを、参加者や口コミの接触者に知っていただき、さらに体験会のPR記事によって、日本はショッピング大国である以上に観光大国であることをより多くの訪日中国人に伝えることができたはずです。

JRAの「体験」をキーワードとしたインバウンド施策は今後も続く予定です。
次回の電通報には、今回の体験イベントの仕掛け人との対談を予定しているので、乞うご期待!