2016年デジタルの10大潮流No.1
「閉ざされた庭」―囲い込まれるアプリ
2016/02/03
電通イージス・ネットワーク傘下のCaratが毎年恒例の「TOP 10 TRENDS」を発表した。世界最大級のメディアエージェンシーの立場から、台頭するテクノロジーや現象を、広告主にとって重大な影響をもたらす局面にあるかどうかの視点で徹底検証。コミュニケーションに携わる際にはぜひ押さえておきたい、2016年の潮流を10回に分けて紹介します。
デジタルメディアはますます閉鎖的になり、アプリの中で完結するエコシステムをつくり上げてユーザーを囲い込む、「閉ざされた庭」と化している。
2000年初頭のポータルサイトを彷彿とさせる「閉ざされた庭」は、パブリッシャーにとってはより長くユーザーをアプリ上に滞在させることができ、ユーザーは別のアプリやサイトへ移動するより時間短縮となる利点を持つ。例としては、SnapchatのDiscover、Facebookのインスタント・アーティクルズ、TwitterのMoments、YouTube Kidsなどが挙げられる。
「閉ざされた庭」の影響も見られ始めている。
例えばSnapchatのDiscoveryでは、コンテンツと相性の良い縦長の動画フォーマットを広告主に要求するなど、各メディアが独自フォーマットを設定する動きが加速している。
Google SearchやPinterestなどのアプリ上には、第三者のサイトに飛ぶことなくワンクリックで商品が購入できる「Buyボタン」が見られるようになってきた。アプリ上で決済が完結することで、より開かれたウェブでのネットショッピングより安全だ。
また、広告表示を阻害するアドブロックは、パブリッシャーが制御権を握るアプリ上では問題になりにくい。
「閉ざされた庭」化は今後一層進むだろう。広告主は組む相手をしっかり選び、KPI(重要業績評価指標)を設定した上で、アプリに合わせたコンテンツを制作することが必要になってくる。
短所として挙げられるのは、アプリごとにさまざまなフォーマットで素材を用意しなくてはならないこと。それから、フォーマットが異なるため自動広告取引は難しくなり、広告パフォーマンスの評価指標もまたサイロ化する恐れがあることだ。