デジタル活用で成果を出すにはNo.10
技術が理想にようやく追いついた! CROはトータルエクスペリエンスの最適化に。
2016/02/09
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
ブランド関与の向上をコンバージョンにするとは?
──コンテンツマーケティングでは商品関与の向上をコンバージョンにするというお話がありましたが、どのように計測するのでしょうか?
山本:どのようなキーワードを含むコンテンツに接触しているか? ということを評価しています。例えばダイエット食品の場合、最初は漠然と結婚式の前にきれいになりたいというニーズから、「結婚式」というキーワードで流入していたユーザーが、コンテンツを見たことで「ダイエット」という手法など、より具体的なキーワードで流入するというように、モチベーションが変わることがあります。
こうしたキーワードの変化は、ブランドに対する関与度の変化を表しています。ユーザーが接触するキーワードをカテゴリー分けし、より購買に近いキーワードを含むコンテンツに遷移したらコンバージョンにする、というようにブランド関与の向上を計測します。
和田:実運用の話になりますが、GAを細かく設定をすることでユーザーベースの行動を追い、ブランド関与の向上を直接計測することができるんです。
ユーザーベースで分析を行わない場合、「売り上げに直接つながらないコンテンツは価値がない」という早まった判断をしてしまうことがありますが、ユーザーベースに接触するキーワードの変化を評価していくと、各コンテンツがユーザーのブランド関与を徐々に高め、結果的に売り上げも向上していることが分かります。コンバージョンの直前には「ダイエット」の記事、さらにその前には「結婚式」の記事というようにゴールまでの道のりを追うことで、「結婚式」の記事に接触したユーザーが増えればいずれ「ダイエット」の記事に接触するユーザーも増え、結果的に最終コンバージョンである売り上げが増えるということが数値として分かるようになります。私たちは、今このあたりの指標とデータの精緻化に力を入れています。
山本:ここまでくると、もはや縦長ランディングページ単体の最適化の枠を超え、カスタマージャーニーの最適化に近づいてきます。点の最適化が、線の最適化になるイメージですね。
和田:ランディングページの最適化だけでもやることはたくさんあるので、カスタマージャーニー全体の最適化となると、やることも複雑化しますし、関わる人も増えていきます。しかし、大きな一つの目標に向かって、ウェブだけでなく、テレビCMなども含めてどう最適化していくかという大きい施策の方が、その中の個別の施策のシナジーを生かし、より高い効果を得られると思います。
性別や年代、行動を加味してシナリオを設計する
──カスタマージャーニーの最適化とはどういうことですか?
山本:前半で説明したABテストの例では、ユーザー全体に対して最も効果の高いクリエーティブを導き出していましたが、カスタマージャーニーの最適化という視点では、異なるユーザーたちが、異なる情報接触を経てブランド関与を高めていく過程を最適化していくことになります。異なるユーザーたちを定義する上で、最も良く用いられるセグメントが性別と年代です。
和田:とあるクライアントを例に説明します。キービジュアルの人物を若い男女、中年の男女などいろいろなパターンを用意してテストしたところ、全ユーザーに対して反応がいいのは若い女性の写真ですが、年配の女性ユーザーに対しては同年代の女性の写真の方がコンバージョンするという結果が出ました。このように、ユーザー層ごとに嗜好が明確に異なることが多いです。
続いて大切なのは、ユーザーの情報接触についてです。同一のユーザーであっても、接触した情報によって興味に変化が起きます。例えば、あるユーザーが初来訪から時間を置いて2回目に来訪した場合、その間に何があったかを考えてみましょう。おそらく競合のサイトを見たり、比較サイトを見たりしているはずですよね。だから2回目の来訪時には、それを踏まえたコンテンツを出すべきです。このように、性別や年代、行動を加味してシナリオ設計することが重要です。
テレビが潜在的に作っている需要に乗る
──ウェブ上の行動から、ユーザーの興味というのは正確に特定できそうですね。
山本:そうですね。ただ、ウェブのデータだけではなかなか取得が難しい情報があります。それは行動として顕在化していないが、潜在的に頭に刷り込まれている世の中の雰囲気です。たとえば11月の後半には、ボジョレーヌーボー解禁がありますので、なんとなくワインを意識するような空気感があります。
和田:そもそも、テレビで作られた空気感がウェブサイトに反映されていないことが多いですよね。たとえば、Eコマースサイトで扱っている商品がテレビ番組で紹介された場合、その内容をウェブに反映すればコンバージョンレートが上がるという仮説があります。
電通の場合、テレビ番組のデータを全部ストックしているので、テレビが作った話題性や空気感に乗ったウェブサイト作りが可能になります。
山本:テレビ番組の紹介は影響力が大きいです。CMは売り手からのメッセージだから聞き流す人が多いですが、テレビ番組という限られた時間の中で紹介されるものは、良いものだろうと考える人が多いからです。テレビの影響力が下がっているという話もありますが、今でも最大規模のメディアですよね。
和田:例えばDMPで健康志向の人を特定することはできますが、その人が今興味のあることは、テレビの影響を受けていることがあります。夏は熱中症、冬はインフルエンザとかですね。
山本:ある清涼飲料水メーカーの場合、夏は熱中症という鉄板のキーワードがあって喉も渇くから売れますが、冬場の売り方に悩んでいました。着目したのが乾燥注意報で、冬は喉ではなく体が乾くという情報です。そこで冬の乾いた体に、という趣旨のメッセージを出したところ競合に比べて売り上げが伸びたそうです。
リスティング広告は、「そのキーワードで調べている=ニーズがある」ということで効果が高いですが、テレビに取り上げられるタイミングは、イコール需要が上がるタイミングなので、そこに乗っかることは非常に効果的です。
トータルエクスペリエンスの最適化ができるのが強み
──ネクステッジ電通の強み、競争優位性について教えてください。
和田:CROは、入力フォームを直す、ランディングページを直すというだけでなく、総合的にクライアントのマーケティング活動を理解した上で、コミュニケーション設計をするのが大事です。電通はテレビのデータを持っているだけでなく、全てのマーケティングの接点でクライアントを支援できるのが強みですね。テレビなどを含めてどういった予算配分ができるのかということも分析できるので、トータルに施策を最適化できます。
山本:Wikipediaでランディングページ最適化の項目を見ると、概念の中に「トータルエクスペリエンスの最適化」ということが書かれています。実はこれ、われわれが2007年に海外サイトを翻訳したものです。そのときから言われていたことが、今ようやくできるようになってきました。
和田:トータルなマーケティングの最適化は今チャレンジしている領域です。CROはデザイナーがなんとかするものではなくて、マーケティング全体の骨子を分かった上でやらないといけないですよね。
先ほど訪問回数でコンテンツを出し分ける話をしましたが、やはり複数回来訪した人の方がコンバージョンレートは上がることが多いです。コンセプトダイアグラムでカスタマージャーニーを作って、どのメッセージが伝わるかを考えることがシナリオ設計の基本です。
属性という大きな粒度で分解して、さらに細かい粒度で見ていく。例えば、2回目に来訪した時の40代の女性のコンバージョン、というような形ですね。
さらにいえば、潜在顧客を顕在顧客化させるという大きなファネルがあります。潜在顧客の中から、指名検索をする人を増やすためには何ができるのか、CM以外でウェブサイトを訪問する人を増やすにはどうしたらいいかということです。潜在顧客を増やすという施策、コンバージョンを最大化するという施策の両方ができれば、大きなインパクトになります。
山本:CROはユーザーのトータルエクスペリエンスの最適化であり、それを目指してきましたが、技術の進化により、ようやく実現し始めています。
ランディングページのボタンやクリエーティブだけでなく、シナリオ、体験の最適化が、これからの勝負になりますし、なかなかここまでできるところはネクステッジ電通以外には少ないと思います。これから、いろいろな施策を通して成功事例を作っていきたいです。