PR目線を養う「気持ちコスプレ」のススメ!

新明解「戦略PR」 №32

  • 井口 理

2016/02/29

PR目線を養う「気持ちコスプレ」のススメ!

「鬼は〜外! 福は〜内!」。みなさん、今年も豆まきしましたか? そろそろ桃の節句の準備も佳境ってところですかね。日本ってさまざまな歳時のイベントがありますよね。みなさんも、節分に鬼の格好をして子どもに泣かれたり、はたまた本気で豆投げてきた子どもにマジギレしたりといった経験があったんじゃないでしょうか? ひな祭りだともっと穏やかでしょうかね、お内裏さまとおひなさまごっこ、とか。

今回はちょっと「コスプレ」について書いてみようかなと。「おいおい、おっさんがいまさらコスプレにハマっとんのかい!」というツッコミを感じましたが、そういうわけではありません。今回の「コスプレ」は「気持ちのコスプレ」です。それではイッテミヨ!

「相手の気持ちになりきれるか?」がコミュニケーションの成否を分ける

コスプレとは、漫画やアニメなどのキャラクターの容姿をまねることだと思いますが、気持ちそのものもなりきって楽しむ、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。あたかも自分がそのキャラクターであるかのように立ち振る舞って「自分ではない別の誰か」に変身している瞬間を楽しんでいるのだと思います。実はこの「他人になりきる」技術というのは、PRを含むコミュニケーション全般に、非常に役立つものではないかなと感じるわけです。

言わずもがなですが、昨今、一方的な情報伝達手法に対して生活者は「無視」「スルー」あるいは「反感」といった反応を示すことがあります。もちろんネガティブな反応のみを起こすわけではありませんが、「生活者の視点に立った、有益な情報」として、うまく受け手のベネフィットを抽出して伝えることが必要だし、その伝え方も受け手にとってベストのタイミングを踏まえて、ひもといてあげる、という配慮も必要でしょう。そう、常に「伝える対象の立場、視点に立って」ということが求められるわけです。

気持ちコスプレ

 

PRのターゲットは多種多様、メッセージも複数必要となる

「相手の視点に立って」というのは、一部の「コアターゲット」のみを対象にコミュニケーションする場合はまだいいのですが、PRのターゲットというのはいつも言うように多種多様です。社会を構成するそれぞれの属性に対して、「緩やかな共感」を作っていくことが必要なわけで、複数の属性グループを俯瞰しつつ、同時並行で見ていく必要があります。すなわちそれぞれの属性の生活者になりきり、「多重人格」的に一つの物事を見ていく能力が求められるわけなんです。そこで、そのような能力を高めるためにお勧めしたいのがこちら! 

井口式「気持ちコスプレ・トレーニング」

毎日ちょっとした空き時間を利用することで、あなたのPRコミュニケーション力がめきめき向上しますよ。ええ、安心してください! もちろんクーリングオフ(返品無料)適用商品です。それでは簡単に使用方法を紹介してまいりましょう。

①ざわざわしている話題をひとつ探す
その時々でテレビ報道やネットで話題になっているニュースを一つ選びましょう。特定のマニアだけにウケている話題ではなく、なるべく老若男女が一言でも会話にできそうなものがいいっすね。

②自身を「多重人格者」として設定
自分と異なるいくつかの人格を設定し、その人になりきる準備をします。例えば、「自分の配偶者や恋人」「実家の両親(ここ父と母で2人分つくれますね)」「自分の子ども」「会社の同僚」「学生時代の仲間」など。日常の言動を見聞きしたことのある人を対象にした方が、その人の考え方、感じ方を想像しやすいので良いでしょう。

③それぞれの人格になりきって、①で選んだ話題について考えてみる
それでは早速、これらの人たちになりきっていきましょう。①で選んだ、世間で話題になっている現象を自分の配偶者や恋人だったらどう考え、どう感じるのか。そしてそれらは自分自身の考え方や感じ方とどう違うのか、それはなぜなのか、を掘り下げて考えていきます。

※このとき、「コスプレ」という言葉に影響されて、わざわざ身なりまでそのものになりきる必要はありません。それを見られるとあらぬ誤解を招く可能性もあり、せっかくの思考が分断される可能性があります。

④複数人の「なりきり人格」を比較・検証する
「なりきり人格」が多ければ多いほど、その考え方や感じ方のバリエーションを再認識し、そしてあなたは途方に暮れることでしょう。「そんなとこまでフォローしてたら、キリがないよね(ため息)」と思うでしょうが、そのような多種多様な属性で、社会は構成されていることをここでは真摯に理解することが大切です。そしてそれぞれの属性の生活者に対して、こちらが伝えたいことを加工し、伝えていく努力と工夫が必要です。

もちろん、PRが扱う情報そのものには「ファクト」が存在するわけで、そこを逸脱する情報というのはつくれませんが、ファクトを構成する各要素のどこに比重をおいてそれぞれの属性に伝えていけば「パーセプション・チェンジ」に有効なのかが、こういったターゲット分析によって導きだされることになるのです。

想像から分析へ、そしてPDCAで経験値を積もう

そうは言っても「それって結局、想像じゃん?」と言われてしまえばそうなんですよね。でも「だから結局、言いたいことを俺は言うんじゃ!」ってのはいけませんよね。相手の立場をおもんぱかって、相対していこうという姿勢は、受け手にもきちんと伝わっていくのだと思います。まずは想像して、そしてそれを裏付ける情報とあわせて分析し、精緻化、最後はトライしてみて次回の反省に生かすというPDCAの繰り返ししかここはないのだと思います。でもこの修練において、徐々にその的中率が高まってくる感触を得られるはずです(クーリングオフはここまできてから考えましょう)。

もう一つ、想像だけでなく各属性が触れているメディアでの取り上げ方を比較するのも感覚を磨くのには役に立ちます。各メディアの先には象徴的な読者、視聴者がいますから、その人たちに例えば「○○○○」という現象を伝えるため各メディアがそれをどうひもとき、どこに比重を置いて報道・記事化しているのかなどを比較してみると、それぞれの生活者の視点が象徴的に可視化される場合もあります。常日頃、そういったニュースの見方を心がけておくとよいかもしれないですね。

またこのやり方は、特に外国人の視点を学ぶなどに有用かもしれません。さすがに私も各エリアの外国人の方々の考え方を想像だけで割り出すのは難しいですが、グローバルニュースを各国メディアがどう扱っているかを比較することで、その関心領域や視点をいくぶんか知ることはできるというわけです。

「気持ちコスプレ」のススメ、いかがだったでしょう? あまり真剣になりすぎて、自分の人格を忘れてしまいませんようご注意くださいませ。私は飼っているチワワの気持ちがいまだ読みきれずに奮闘中です。キャンキャン。