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テレビCM×オンライン動画広告のプランニングを最適化するには?
2016/03/15
今回は、テレビCMとオンライン動画・ディスプレイ広告を統合した電通オリジナルの広告出稿最適化ツール「Cross Media Planner」の開発を担当した眞鍋尚行さん、メディアプランナーとしてツール開発に関わった中山あづみさん、運用型広告領域や配信戦略策定に携わるネクステッジ電通の松野泰大さんに、「テレビCM×オンライン動画広告」の現状と今後の課題について話を聞きました。
Cross Media Plannerとは、テレビCMとオンラインの動画・ディスプレイ広告の出稿を統合的に最適化するツールです。詳細はニュースリリースをご覧ください。
「Cross Media Planner」がプランニングを変える
――まずは「Cross Media Planner」を開発した背景を教えてください。
中山:昨今は若年層のメディア接触の構造変化が進み、一人が接触するメディアの種類が増えたことから、クロスデバイス対応を考える必要が出てきました。そのためクライアントからは、テレビではリーチしにくい層に対してウェブでリーチしたいというニーズが増えています。
さらに「テレビCMを1500GRPにするとき、オンライン動画広告の出稿量はどれくらいが最適なのか?」といったアロケーション(配分)に関する質問も頂くようになり、これまで以上に効率的で効果的なプランニングの必要性を感じていました。
眞鍋:デジタルメディアに関していえば、これまでYahoo!のブランドパネルといった予約型広告のリーチをシミュレートしていましたが、運用型広告となると従来の方法ではシミュレーションができていませんでした。それを解決したのが「Cross Media Planner」です。これによって、テレビCMとオンラインの動画やディスプレイ広告を含む運用型広告も含めたシミュレーションができるようになりました。
――「Cross Media Planner」とは、具体的にどのようなツールなのでしょうか?
眞鍋:シングルソースデータでメディア接触や購買行動を分析できる電通の「d-holistics」というデータベースを活用し、即座にリーチやキャンペーン認知、ブランド認知などの指標がシミュレートできます。例えば、日別の広告費用やリーチ、さらに各広告メニューが統合された数値や、テレビとデジタルがどれくらい重複しているのかといったことまで算出できます。
――精密なシミュレートの結果を元にしてプランニングができるようになったわけですね。クライアントからの反応はいかがでしょうか?
中山:これまでテレビ重視型だったクライアントの中には、「Cross Media Planner」をきっかけにデジタルメディアに興味を示すようになったところもあります。キャンペーンを打つごとに調査を重ね、そのクライアント独自のノーム値を作っていこうという動きも実際に出始めています。
また、他のクライアント事例では、「キャンペーン認知の最大化」をKPIにしたオンライン動画広告のみに特化した競合プレゼンにおいて、「Cross Media Planner」のシミュレートを元にしてテレビCMとオンライン動画広告を掛け合わせたマスとデジタルの統合プランニングも含めて提案したところ、高い評価を得て勝利できたという案件もあります。
眞鍋:デジタルメディアはどうしてもクリックベースで判断されがちですが、オンライン動画広告の場合、動画であることがブランド醸成につながります。「Cross Media Planner」によって、リーチだけでなく、キャンペーン認知から購入意向までシミュレートしてプランニングできるようになったことは非常に大きいですね。
中山:プランナーが「Cross Media Planner」を活用して予算及びメディアのアロケーションを行い、KPIの達成具合を見ながら次回キャンペーンのアロケートに生かしていくといった、年間を通じた広告施策のPDCAも回しやすくなりました。
オンライン動画広告の効果を高めるために、考えるべきこと
――「テレビCM×オンライン動画広告」のプランニングや運用を行うに当たって、実際にどういったことが重要になってくるのでしょうか?
松野:オンライン動画広告のプランニングや運用では、ターゲットリーチ、フリークエンシー、リーセンシー、クリエーティブの4つの観点でPDCAを回すことが、広告効果を最大化するうえで非常に重要になってきます。
これら4つの観点のプランニング~運用に関しては、オンライン動画広告だけの場合より、テレビCMとオンライン動画広告を掛け合わせた場合の方が、より本質的で重層的な深堀りができます。
電通グループでは「Dentsu Data Driver」(D3)というグループ横断型組織で課題解決に取り組んでいます。
例えば、オンライン動画広告だけの場合、前例となる広告のリーチからKPIを決めますが、テレビCMと組み合わせた場合は、テレビとオンラインを合わせたトータルリーチやフリークエンシーはどうだったのか、さらにはシングルソースパネルと掛け合わせたときにターゲットごとの広告接触度合いはどうだったのかといったように、追い求めるべきKPIは変わってきます。
また、「テレビを見る層ならオンライン動画広告ではこのくらいのKPIを追い求めればいいけれど、あまりテレビを見ない層に対してはKPIを変えた方がいいのではないか」といった問題にも行き当たるわけですね。実際の事例でも、ターゲットごとにKPIを決めるケースが出てきています。
――KPIの設定で、他に工夫されたケースはありますか?
松野:そうですね。特に興味深いのは、テレビとオンラインを組み合わせて複数の種類のクリエーティブに接触させると、結果的にターゲットの想起率や認知率が伸びるという現象が起こっています。この場合、異なるクリエーティブにいかに接触させるかというKPIと、それを最大化するための配信設計を組んで対応します。
クリエーティブに関しては、クライアントから「オンライン動画広告はテレビCMと同じものを流した方がいいのか、違うものの方がいいのか」という質問にも、ケースバイケースですが、さまざまな事例や数値的根拠を持って応えられるようになってきました。
時代の動きやクライアントのニーズによりフィットしたソリューションの提供を
――現状の課題やこれからの展望を教えてください。
中山:デジタル業界やデジタルメディアは次から次へと新しいものが登場しては淘汰され、入れ替わりが非常に激しい世界です。われわれの課題としては、市場全体やメディア、オンライン動画メニューなどの最新動向を把握すること、最新知識を持つこと、そしてそれに対応するプランニングツールを常にアップデートすることが課題として挙げられます。
さらに近年はモバイルシフトが進み、スマホの接触時間が増えていることから、アプリも含めたスマホ広告におけるリーチ計測が喫緊の課題だと感じています。今後は例えばスマホアプリ面でも計測できる仕組みの構築を進め、事例を蓄積していきたいですね。
松野:運用面では、デジタルメディアはこれまでCPCや単価が安価であるというところに注目が集まりがちでしたが、今後はブランディングとしての活用を考えていく必要があります。ある媒体社は、一定以上の出稿があればブランドリフト調査を行うといった新たな付加価値を打ち出しています。
われわれとしては単純に“リーチが大きそうな広告を売る”のではなく、ブランディングに関わるKPIを最大化するために、どの媒体にいくらを割り振るのか、冷静に見極めてクラアントに提案していかなければなりません。各媒体社との連携はオンライン動画広告のブランディング活用でも必要になるので、こちらも取り組んでいきたいと思います。
眞鍋:「Cross Media Planner」は、メニューを横断してシミュレートできるというメリットがあります。今後メニューを増やしていくには媒体社の協力が必要になってきますので、その連携を進めていく必要があります。
さらには、メディアの計測手法、活用データに対応したツールの開発を考えていかなければならないので、課題は多いと感じています。
ただし、D3という横断型組織を立ち上げ、データを一つの軸として、ワンストップでソリューションを提供していくという体制が整ったので、よりスピードを持って次のステージに向けて突き進んでいけると思います。
Dentsu Data Driver(D3)
D3とは、電通、ネクステッジ電通、電通イーマーケティングワンの3社による、電通グループ横断型の次世代デジタルマーケティングの専門チームです。http://www.dentsu-data-driver.jp
お問い合わせ先:D3事務局 d3-info@dentsu.co.jp