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JOC竹田会長インタビュー「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて」第1回

2013/11/18

2020年大会のグランドデザインを語る 

「2度目ならではのムーブメントを」 

日本中が歓喜に沸いた9月8日から2カ月。日本オリンピック委員会(JOC)竹田恆和会長は、「7年後」を見据えながら精力的に走り始めている。JOC会長として、国際オリンピック委員会(IOC)委員として、かつて馬術競技で出場したオリンピアンとして、どんなグランドデザインを描いているのか。その胸中をインタビューした。

再挑戦を促したのは、被災地の子どもたちの笑顔

―2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致活動を振り返って、何が一番大変でしたか?

竹田 ひとつは、3・11のときの葛藤ですね。ご承知のように、2016年大会の招致が成功せず、その後、東京があらためて立候補するか、あるいは他の都市が立候補すべきかという議論がありました。私としては、競った相手がアジアの国々ではなかったため、もう一度立候補すれば、東京へ再び招致できる道は必ずあると信じていましたし、チャレンジすべきだと思っていました。

しかし、2011年の3月にあの東日本大震災がありました。その状況下で、オリンピック招致活動などやれるのか、やっていいものなのかと、ずいぶん悩みました。その逡巡がある一方で、こんなときにこそスポーツ界にできることがあるはずだという思いもあったのです。震災後、私はすぐに東北3県の知事にもお会いして、意見交換をし、招致活動に賛同していただきました。

そして、11年の10月から、復興支援のために東北各地で始めたのが「オリンピックデー・フェスタ」*でした。トップアスリートが、被災地の人々と触れ合い、少しでも励ましになればと始めたイベントですが、日本だけでなく、海外からも多くのオリンピアンやアスリートが参加してくれました。

私も何度か行きましたが、胸を打たれたのは、大変つらい思いをしている子どもたちが、そのときは目を輝かせて、アスリートと一緒に汗を流していた姿です。それを見て、「スポーツにはやはりすごい力があるんだ」と心底思いました。そして、「オリンピックは絶対にやるべきだ」と確信しました。復興のシンボルとなり、被災地の皆さんに勇気を与えるようなオリンピックを開催したい。その思いが、心にわだかまっていた葛藤を乗り越えさせてくれました。

*オリンピックデー・フェスタ……東日本大震災復興支援のために立ち上げた「JOC『がんばれ!ニッポン!』プロジェクト」の一環として、「スポーツから生まれる、笑顔がある。」をスローガンに開催。現在も継続的に開かれている。

IOCの評価報告書を見たときに「これはいける」と

竹田 もうひとつ乗り越えなくてはならなかったのは、国民の支持率をどう高めるかというハードルでした。これは、前回の招致活動でも一番苦労した点ですが、今回はオールジャパン体制で臨むために、なんとしてでも国民の皆さんに開催の意義を理解していただかなくてはならない。

そのために、招致委員会の中に、招致活動をバックアップしアドバイザーとしても機能する評議会をつくりました。政界や経済界をはじめ、全国に組織を持つようなさまざまな業界のトップの方々に評議員になっていただき、国民の理解を得るためのさまざまな活動を推し進めました。この評議会が、オールジャパン体制をつくるための「場」ともなり、非常に功を奏したと思います。

―手応えを感じたのはいつ頃ですか?

竹田 今年3月のIOCの調査で東京都民の70%が支持していることが報告され、さらに6月にはIOCによる開催立候補都市に対する評価報告書が公表され、東京は非常に高い評価を受けました。その評価報告書を見たときに「これでいける」という思いを強くしました。IOC委員とも接触を重ねていましたが、好感触が伝わってくる。私の中では、「いける」という思いは確信に変わっていきました。

 ところが、9月のブエノスアイレスでの最終プレゼンの前に、汚染水問題が起き、海外のメディアでも連日のように取り上げられました。これは想定外のことで、最初は不安もないではありませんでしたが、安倍首相をはじめとする「オールジャパンの力」で乗り切ることができました。

これからのオリンピックモデルになる大会に

―晴れて開催が決定して、次は「これからの7年間」をどう進めていくかですが、JOC会長として何が大きな課題だと思っていらっしゃいますか。

竹田 今回の開催を勝ち取るに当たり、私たちはIOCにさまざまな約束をしました。まずこの約束を全て果たすことが大前提となります。招致活動では、「安心・安全・確実」を強くアピールしてきました。「安心・安全」についていえば汚染水問題があり、これは、国の全面的なバックアップが必要になります。また、「確実」という点では、メーンスタジアムの建設など、施設やインフラの整備に全力を注がなくてはなりません。

来年早々には、組織委員会が設置される予定です。各界の有識者が集まり、さまざまな課題について詰めていくことになりますが、JOCとしては、IOCや各国際競技連盟と協議しながら施設の整備を図るとともに、7年後を見据えた日本代表選手団の強化も大きな使命になります。単体の競技団体だけでは十分にできないことを、国の協力も得ながら、JOCが十二分に支援していく体制を整えていきます。

第2回へ続く)