インフォグラフィックが広げる
視覚表現の可能性
2016/06/01
何を、どう分かりやすく、誰に伝えるか─。
これまで取得が難しかった領域のデータが収集可能となっている今、それらを伝える表現手法が全てを左右するといっても過言ではない。
その中で注目を集めているのが、インフォグラフィックだ。
第一人者であるNewsPicksの櫻田潤氏と、データ分析に基づいたアプローチで課題解決をサポートする電通の秋元健氏が、視覚表現の重要性と可能性を、具体的事例を交えて語り合った。
相手が低モチベーションのときにこそ
インフォグラフィックが有効
櫻田:インフォグラフィック(IG)とは、情報をビジュアルで表現し、分かりやすく伝える手法です。今は情報過多になっている一方で、デバイスはスマートフォン(スマホ)が主流。少ない量で情報を分かりやすく伝える方向にニーズが移行していると思います。
秋元:少ない量だと、見た目はすっきりしますが断片的になりがちですよね。全体像と要点を伝えつつも、敬遠されない表現手法がスマホ時代に求められていると思います。
櫻田:IGをIGで説明しますね。
櫻田:ワンメッセージとストーリーのどちらを伝えることに適しているか、という軸がまずあります。もう一つは見る人のモチベーションの軸。モチベーションが高くないとだめなのか、それとも低くても自然に受け入れられるのか。私が今やりたいIGは、ストーリー仕立てで、見る人のモチベーションが低くても見てくれるもの。モチベーションが低い人に対してもストーリーを伝えたいというニーズが今ありますから。
秋元:メディア特性とも大きく関係しますよね。パソコンでは一画面上で多くのことを表現できますが、スマホはスクロールや動画の活用が前提になります。
櫻田:パソコンや新聞などで使われているIGは、ワンメッセージ寄りで見開き的な表現です。しかし、スマホなどのIGは、巻物や鳥獣戯画のようなストーリー性のある世界に近い。縦長マンガもそうですね。
データが好きではない人たちに、情報を分かりやすく共有させる
秋元:最近はセンサーなどデータを取得する方法が進化して、情報の流通量も大きく増えています。数字やデータは、みんなが共有して初めて有用なものになる。しかし、たいていの人はデータを見るのが好きではありません。だからこそIGが有効な表現手法になってきます。
櫻田:また、情報を伝達する場としての画面がさらに小さくなり、あるいはバーチャルリアリティー(仮想現実)など、表現先も増えていくでしょう。表現先の変化とデータの増大を考え合わせると、IGは絶対に必要という認識を持っています。用途は増えていくと思いますね。
秋元:役に立つ情報は増えているのに認知さえされない、という状況は往々にしてあると思うので、IGの持つ「引き付ける力」をもっと活用したい。IGをきっかけに、より多くの人に興味を持ってもらい、そこから深掘りしていってもらえるような展開がつくれると理想的です。
実践
スマホにおけるインフォグラフィック
2015年2月に東京・清澄白河に日本1号店をオープンしたブルーボトルコーヒー。秋元氏は、その人の流れを位置情報データから分析した(ウェブ電通報「ブルーボトルコーヒーを位置情報データから見てみた」参照)。この分析作業には櫻田氏も参加し、IGで人の流れを表現(NewsPicks「【スライドで見るデータ】ブルーボトルはどこから人を集めたのか?」参照)。その表現方法からは、スマホにおけるIGの特徴が明確に見えてくる。
パソコン上での分析結果の表現
2015年2月に東京・清澄白河に日本1号店をオープンしたブルーボトルコーヒー。秋元氏は、その人の流れを位置情報データから分析した(ウェブ電通報「ブルーボトルコーヒーを位置情報データから見てみた」参照)。この分析作業には櫻田氏も参加し、IGで人の流れを表現(NewsPicks「【スライドで見るデータ】ブルーボトルはどこから人を集めたのか?」参照)。その表現方法からは、スマホにおけるIGの特徴が明確に見えてくる。
一覧性に優れ、情報量も豊富な半面、このままスマホに表示すると情報過多で見づらい印象になってしまう。
これを櫻田氏がスマホ向けにIGで表現すると…
1. オープン時の外部来訪者で最も高い数値を示した地区をクイズ的に「?」で表現し、閲覧者の興味をかき立てる。
2. 閲覧者にスクロールさせることにより、関心を引き、答えへの期待感を醸成する。
3. なぜ世田谷の居住者が来訪したのかを順を追って見せていくパート。
4. 秋元氏によるマップの表現をより端的にグラフィック化。ストレートに結論が入ってくる。
企画の全フェーズに関わる
「インフォグラフィック・エディター」とは
櫻田氏の肩書はインフォグラフィック・エディター。あえて「エディター」と称しているのには理由がある。企画設定の段階から情報収集、分析まで関わり、そして編集作業を通じたストーリーづくり、メディアに合わせたグラフィック化まで一貫して作業をするのが基本だ。情報を並べ替えて、最も効果的に伝えられるデザインに落とし込む。そういう意味での「エディター」なのだ。