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電通流 デジタルマーケティングNo.1

1限目:デジタルマーケティングのはじめ方

2016/06/20

5月からオンライン動画学習サービス「schoo WEB-campus」とのコラボ企画が始まりました。これからデジタルマーケティングを本格的に推進していく方を対象に、全6回にわたりデジタルの現場で活躍している電通社員が講師となり、電通オリジナルのデジタルマーケティングの考え方や、課題解決視点を紹介する講座です(schoo WEB-campus「電通流 デジタルマーケティング」)。

今日は1限目「デジタルマーケティングのはじめ方」の講座の復習と、受講生からの質問に答えたいと思います。

ある調査結果(※1)では、「デジタルマーケティングに着手している日本企業」は、「着手予定」を含め約45%、また「デジタルマーケティングを実施しているが、その効果に満足している企業」は約4割しかいません(※2)。まだまだデジタルマーケティングは日本企業内で成功できていないのが実態で、まず「なぜ今デジタルに取り組まなければならないのか?」そして「なぜうまく取り組めていないのか?」から、講義を始めました。

※1:日経BPコンサルティング調査 2015年9月28日~30日
https://consult.nikkeibp.co.jp/sp/contents/atcl/20151117_1/
※2:Adobe APAC Digital Marketing Performance Dashboard 2014( 2014年11月25日)
http://www.adobe.com/jp/news-room/news/201411/20141125_DigiDash2014.html

 

「なぜ今デジタルに取り組まなければならないのか?」は、①スマホによる生活者の情報取得方法の変化、②企業がさまざまな顧客関連データを取得できる、③デジタルそのものが企業変革のイノベーションの源泉であるという三つの環境変化から、デジタルは、生活者とブランドの新たな関係構築をもたらすチャンスであるからです。しかしデジタル化にうまく取り組めていない背景として、データとの付き合い方が苦手な企業が多いことを指摘しました。

具体的には、データ分析による効率化・最適化ばかりに注力し、イノベーションを生むための活用ができていない点が挙げられます。また日本企業特有の課題として「CMO(チーフマーケティングオフィサー:マーケティングの全体統括者)がまだまだ少ない」「組織の縦割り」「KPIがあいまい」などを挙げました。従って、いきなりデジタル化によるマーケティングの統合は難しく、部署ごとに取得できるデータからデジタル化を始め、小さな成功体験から、徐々に周りを巻き込んでいく「Small Data, Small Start.」を提唱しました。またデータをうまく活用してデジタルマーケティングを推進していくにはチームが必要です。

2つのデジタル化

第2章では、デジタルマーケティングをはじめるに当たって、押さえておくべきデータとして、購買データ(耐久財では、見込顧客DB、顧客DB)や、マス×デジタルの実行動データ、売り上げ×マス広告×デジタル広告データを紹介しました。経営者は「売り上げを上げたい、新規顧客を獲得したい、既存顧客を維持したい」という使命があるのですが、デジタル環境の変化で「ターゲットは今のままで正しいのか?」「アプローチ方法は今のままでいいのか?」「マス広告とデジタル広告の投資配分は最適なのか?」という3つの意思決定に対して悩みを抱えていて、それぞれに先ほどのデータで応えるところから始めることを紹介しました。

そして第3章では、デジタルマーケティングのはじめ方の3ステップ(①有望顧客を見つける、②顧客を育てる、③投資を整える)を紹介し、「見つける」フェーズでは、新規顧客~既存顧客の360度の顧客分析、顧客成長シナリオの検討、「育てる」フェーズでは、顧客を育てるきっかけを考える思考フレームを紹介しました。

また「整える」フェーズでは、これからのKPIについて言及しました。詳しくはSchooの講義で確認していただけますと幸いです。マーケティングのデジタルは一気に推し進めるのは難しく、まずは身の回りの利用可能なデータを使って「Small Data, Small Start.」で始めることが大事です(この章に関しては、過去の連載「ブランド・グロースハック―ビジネスの成長を約束する『マーケティング×IT』新手法」もぜひご参照ください)。

受講生からの質問

そして、本講座受講生の方からたくさんの質問があったので、代表的なものにいくつか答えて終わりにしたいと思います。

質問1:企業規模によってデジタルマーケティングを実施する内容や難易度は変わってくると思うのですが、大きな企業におけるマーケティングのデジタル化の課題はどんなものがありますか?

回答:大企業でのデジタル化の課題は、講座でも言及しましたが、①縦割りの組織構造と、②ミドル層(課長、部長クラス)のITリテラシーの壁というものが存在します。

①組織の縦割り問題は、顧客に近く、新たなサービスを開発したいマーケティング部門がデジタルやシステムに詳しくなかったり、逆に情報システム部門が、顧客の都合を知らずにツール導入しか考えなかったりなど、マーケティング部門と情報システム部門がうまく協業した顧客体験をつくれずに困っているケースがあります。またこの問題は、同じ部署内でも生じます。例えば、CRMデータでは最近の顧客の特徴が分かるのですが、運用担当者がそれを新規獲得を狙うマス広告担当やデジタル広告担当と共有できていないこともあります。また、マス広告担当がブランディングや認知獲得を重視する一方で、デジタル広告の部署は刈り取り効率を重視しているなど、連携やコミュニケーション投資の優先順位があやふやになっています。

②ミドル層のITリテラシーの壁は、具体的には例えば現場からデジタルを使った改善案が上がっても、ミドルのマネジメント層に却下されて前に進まないという問題です。経営トップの方は、売り上げを上げねばならないというプレッシャーの中で、その手段としてのデジタル化を推進しなければならないという危機感があり、また現場担当レベルの社員も、生まれたときからデジタルデバイス・サービスに接してきましたが、ミドル層、特に40代~50代の課長、部長、CMOレベルがデジタルに壁があり、なかなか意思決定できない企業も多いという問題があります。

質問2:経営者に対して、刈り取りではなく定性的指標や拡散重視のKPIが大事だということを理解してもらうにはどのようにすればよいですか?

回答:ファンの数の増加や、口コミの数の増加を、直接売上増要因として可視化したり統計的に証明することは難しいのですが、私たちがよくやる手段は、経営者にSNSの生の書き込みを直接見せたり、日々の口コミ数や、ポジネガ分析をウオッチしてもらうために簡易なダッシュボードを用意することです。経営者にも、直接お客さまの声に接してもらうことで、定性的指標や拡散の重要性を感情的・感覚的にも理解してもらう工夫が必要です。お客さまの声に耳を傾けない経営者はいませんので、かなり有効な手段かと思います。

質問3:ウェブマーケティングは成果検証がしやすいと思いますが、マス広告やキャンペーンを同時に実施する場合、その成果検証はどのように行っているのですか? ビッグデータから分かるものなのでしょうか?

回答:これは講義にもありましたが、今は実行動データというものがさまざまな場面で利用可能で、それを使って効果検証をしています。宣伝予算が大きなブランドですと「テレビCM視聴、デジタル広告接触、サイト来訪、購買」を実際に接触した、購入したという実行動データを使って効果検証ができます。それほど予算が割けないブランドでも、デジタル広告やサイト来訪については実行動で把握し、テレビCM接触や購入については、その対象者にアンケート調査を別途実施できるので、その結果を用いて、マス広告、デジタル広告の統合的な効果検証が可能になります。

質問4:デジタルがもっとマスマーケティングに近づく・協業する可能性はありますか?その場合はどういった場合ですか?

回答:マス広告やデジタル広告の接触とサイト来訪や購買の関係を分析しますと、日本ではやはりまだマス広告とデジタル広告両方に接触している人の方がボリュームが大きく、購入意向やブランド好意が高かったりしますので、連動のメリットはあるかと思います。例えば、テレビ番組である商品を紹介するコーナーがあったとします。最近では番組のデータも細分化されてメタ化され、いつどんなワードが話されたか瞬時にわかるので、そのキーワードが番組で取り上げられた際、興味関心を持った人はネットで検索するので、そのタイミングを見計らってデジタル広告を出稿するなどの連携プレーも可能となっています。

質問5:未経験からデジタルマーケターなりたいのですが、どんなことをしたらいいですか?(今は取り敢えずウェブ解析士(初級)の勉強をしています)

回答:いろいろなデータに触れることがまず大事です。ウェブ解析士もその大きな第一歩かと思います。自社サイトにグーグルアナリティクスを導入すれば、無料で実際のウェブ回遊データを知ることができますし、会社のFacebookページの管理人になれば、日々SNSのデータに触れることもできます。統計やデータ分析ツールの勉強も大事ですが、まずはさまざまなデータに触れ、そこからどのような課題が発見できるのか?解決アイデアが見つかるのか? など試行錯誤してみることをお勧めします。

質問6:BtoCのウェブマーケティングの事例はよく見ますが、BtoB企業のデジタルマーケティングの事例は何かありますか?

回答:実はデジタルマーケティングという観点では、BtoB企業の方が先行しています。BtoB企業は、早くから「見込み顧客の囲い込み」という概念があり、セミナー開催や資料請求などの営業活動で見込み顧客をデータベース化し、受注の見込み具合などを勘案した優先順位をつけて、効率的にアプローチしてきました。このBtoBの手法を参考に、今BtoCの企業でも、生活者の中で見込み顧客をベータベース化したり、デジタル系の手法でアプローチしたりしています。従ってBtoB企業の方がデジタルマーケティングの事例は豊富で、最近では、マーケティングオートメーションという手法を使って、見込み顧客に対して、成約可能性の高さに応じて自動的にメールを配信したりコンテンツを出し分けたりするアプローチが出てきています。


『電通流デジタルマーケティング』は下記の日程で6回の講義を予定しています。下記の収録当日は生放送で無料ですのでお見逃しなく。

1限目:デジタルマーケティングのはじめ方:谷澤正文
5月27日(金)実施済み、録画講義公開中

2限目:デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング:郡司晶子
6月24日(金)19:15〜

3限目:テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座:近藤康一朗
7月22日(金)19:15〜

4限目:マス広告×デジタル広告の統合:三谷壮平
8月26日(金)19:15〜

5限目:顧客体験を事業成長につなぐマーケティングシステム:八木克全
9月23日(金)19:15〜

6限目:デジタルで、イノベーション発想を豊かにする:谷澤正文
10月28日(金)19:15〜


次回は6月24日(金)、デジタルマーケティングセンター コンテンツマーケティング部長郡司晶子の「デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング」です。多くの方に受講いただけますと幸いです。