電通流 デジタルマーケティングNo.2
2限目:デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング
2016/07/19
5月から始まったオンライン動画学習サービスschoo WEB-campusとのコラボ企画「電通流デジタルマーケティング」。
2限目は「デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング」と題して、昨今話題になっているコンテンツマーケティングの、特にデジタルマーケティングで活用できそうな側面についてお話ししました。今回は少しその復習をしたいと思います。
2限目のねらいは、デジタル上での情報発信やデジタルマーケティングへのシフトを模索している方々に向けて、コンテンツを起点とした情報発信、デジタルマーケティングの考え方についてお伝えすることでした。
まずPART1では、コンテンツマーケティングとは何か、について整理をしました。
コンテンツマーケティングとは「相手にとって有益で説得力のある情報を提供し、既存および潜在的な顧客に企業のビジネスにつながる行動を起こしてもらうこと」。
けれど実際は、定義は知っていてもどんな作業を実施していくのかといった捉え方は、人によっていろいろです。
目的によって、捉え方はさまざまでよいのですが、デジタルマーケティングという課題を念頭に置いたときに、コンテンツマーケティングをどう捉え直したら良いのでしょうか。以下のように、大きく4つのポイントがあることをご紹介しました。
1)価値ある情報と思って目に留めてもらうコンテンツを発信する
2)そのコンテンツを見た人に行動を促す
3)デジタル上では人が行動することにより、データが蓄積されていく
4)蓄積されたデータを、コンテンツ戦略、マーケティング戦略に生かしていく
PART2では、この捉え方をデジタルマーケティングの世界、すなわち「データドリブンのマーケティングにおいて、どうやって活用していけるのか」を説明しました。
1)見込み客の獲得:コンテンツを使って、見込みのありそうな人を連れてくる。
2)ロイヤルティ向上、ファン化、CRM:見込みのありそうな人や、いまの顧客と関係を築き、ロイヤルティを向上させる。そのための手段として、コンテンツを活用する。
3)刈り取り:購入の後押しとして、コンテンツを活用する。
4)送客:どんな情報にどんな順番で触れて、購入につながっていくか。顧客のコンテンツにおけるジャーニー、送客のシナリオを知るためにコンテンツを活用する。
5)キャンペーン:マスやデジタルのキャンペーンの一要素として、複数のコンテンツを企画配信していく。
現段階においては、大きく5つの目的に活用できそうなことが想定されます。
ただし、日本でも、統合的なデジタルマーケティングが進化し、データを活用したマーケティング活動が当たり前になるとこのカタチもまた変化していくと思います。例えば、4)で見つけようとしているような、人々のコンテンツ接触のジャーニーはいずれ、業種によってある種のパターンが見えてくるでしょうし、5)のようなキャンペーンの補完的な役割も、キャンペーンのやり方が進化すれば変わっていくことでしょう。あくまでも、現段階に見えていること、として紹介しています。
最後のPART3でお伝えしたかったのは、コンテンツマーケティングを機能させるための視点です。
コンテンツマーケティングは、広告やマスマーケティングと非常によく似ています。
それだけに、最初に注意すべきポイントを意識しておかないと、無意識のうちに広告のときと同じような始め方、進め方をしてしまい、気が付くと「お金をかけてやってみたのに効果がよく分からない」「今後続ける意味が分からない」、という落とし穴に陥るリスクがあります。
ここに挙げたのはあくまでも、私が現場で感じるポイントに過ぎないのですが、今私たちが、現実のマーケティング環境の中でコンテンツマーケティングを実施しようとした場合、大きく三つの視点を意識して進める必要があると思っています。
①「クリエーティブ×データの視点」では、クリエーターとアナリストがタッグを組んでプロジェクトを進めることと同時に、それぞれのパートにおいて、以下のようなポイントや知見が必要になります。
②「違うもの、という視点」においては、マスマーケティングとどこが違うのか、ダイレクトマーケティングとはどこが違うのか、を理解しておくことがポイントとなります。
コンテンツマーケティングを実装しながらも、そのときどきでマスマーケティングと同じ考え方をしていないか。ダイレクトマーケティングと同じやり方をしていないか。一歩離れて問い直してみることが重要です。
三つ目のポイントは、「プロジェクト運営の視点」です。
コンテンツマーケティングというと、どうしてもコンテンツを企画・制作することばかりが注目されがちなのですが、それと同じくらい、「コンテンツの配信戦略を実現すること」、「分析のプランを立ててPDCAを回していくこと」、さらには「体制を作って限られた予算の効率的な配分を考えてコンテンツの企画・制作・配信、分析作業を運用していくこと」、が重要です。コンテンツマーケティングの実施では四つの側面があることをお伝えしました。
コンテンツマーケティングは、戦略プランニング、ブランド理解、マーケティング理解、コンセプト設計、コンテンツ企画、制作実施体制、PDCAのプランニング、プロジェクト管理…多様な知見が必要になります。このあたりについては、過去の連載「コンテンツマーケティングの現場から」をぜひご参照ください。
受講生からの質問
当日は、時間の関係で質疑応答を受けられなかったのですが(大変失礼致しました!)、いくつか質問が寄せられていましたので、できる範囲でお答えしたいと思います。
質問1:面白いかどうかは誰がどの基準で決めるのでしょうか?または決めるべきでしょうか?
回答:「面白い」をどう定義するか、がポイントになります。笑えることが「面白い」ことなのか。腹落ちすること、納得することが「面白い」ことなのか。役に立つことが「面白い」ことなのか。マーケティングにおけるコンテンツは、テレビ番組や映画のようにコンテンツそのものを消費することを目的としたコンテンツとは違うので、単にココロを揺さぶるという(部分も必要ではあるのですが)だけではなかなか機能しません。マーケティングの目的に応じて「面白い」の定義も、判断の基準も変わっていくものだと思います。
質問2:「送客」が目的のコンテンツを用意したとして、その目的通りに読者・ユーザーが動いてくれたかどうかは、どういう手段(指標)で確認できるんでしょうか?
回答:単純に「送客」がコンテンツからのページ遷移という点であれば、アクセス解析ツールで送客数と送客率を確認できます。ただ実際にコンテンツを読むだけで気持ちが動いたり、その後気になって時間が経ってから行動することもあります。送客を短期な行動で見るのか、意識の変化や中長期的な行動で見るのか、で見るべき指標は変わってきます。
意識の変化や中長期的な変化を見ようとしたときには、PVやリファラーといった送客先のサイトのアクセスログを指標としているだけでは見えてきません。行動ログデータとしては他に読了データ、媒体データ(広告など出稿した場合)、購買データ(既存顧客やEコマースサイトの場合)などをかけ合わせ、さらには態度変容を見るための定性データも組み合わせて分析、検証していくことが必要となります。
まとめ
コンテンツマーケティングは、企業が自社メディアを持ちコンテンツ発信を自ら続けていくパブリッシャーの側面を持っています。と同時に、顧客に行動を促すことのできるコンテンツは、マーケティングをデジタル化しようとしたときのエンジンになり得ると考えています。
コンテンツの制作量が多いからついついローコストオペレーションばかり気にかかってしまう、予算が無いからついつい自分たちでつくってしまう、アクセス数の最適化だけを考えてついついABテストばかり繰り返してしまう。そういったケースもあると思いますが、もう一度「コンテンツのクオリティー」ということを見直してみると、自社のマーケティングをさらに一歩進化させることができると思います。
『電通流デジタルマーケティング』は下記の日程で6回の講義を予定しています。下記の収録当日は生放送で無料ですのでお見逃しなく。
1限目:デジタルマーケティングのはじめ方:谷澤正文
5月27日(金)実施済み、録画講義公開中
2限目:デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング:郡司晶子
6月24日(金)実施済み、録画講義公開中
3限目:テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座:近藤康一朗
7月22日(金)19:15〜
4限目:マス広告×デジタル広告の統合:三谷壮平
8月26日(金)19:15〜
5限目:顧客体験を事業成長につなぐマーケティングシステム:八木克全
9月23日(金)19:15〜
6限目:デジタルで、イノベーション発想を豊かにする:谷澤正文
10月28日(金)19:15〜
次回は7月22日(金)、電通デジタルのデータアナリスト・近藤康一郎による「テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座」です。デジタルマーケティングに取り組むマーケターのみなさん、ぜひご覧ください!