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山本高史×阿部光史 「フルネームで生きる」(前編)

Dentsu Design Talk №5

  • 山本 高史
  • 阿部 光史

2013/11/22

山本高史×阿部光史

「フルネームで生きる」(前編)

Dentsu Design Talk vol.80

(記事編集:菅付事務所  構成協力:小林英治 企画プロデュース:電通人事局・金原亜紀)

 

Dentsu Design Talk第80回(2012年4月10日実施)は、「フルネームで生きる」と題して、クリエイティブディレクター、コピーライターとして活躍する山本高史氏(株式会社コトバ)を迎え、電通・第4CRプランニング局のクリエーティブディレクター阿部光史氏とのトークセッションが行われた。

山本高史氏
山本 高史氏
阿部光史氏
阿部 光史氏

トークセッションは、山本氏が普段どのように考えて仕事をしているのかを解き明かすために、独立前の電通時代を含めた20年以上のキャリアの中でコピーを手がけたCMを、実際に見ながら本人に解説してもらうという流れで進められた。CMは阿部氏によって事前に6つのグループに分類されており、それぞれのグループの特徴を指摘しながら、山本氏がそれに応えていった。

阿部氏が最初に挙げたグループは、〈読ませるコトバ〉。山本氏の手がけるCMには字幕スーパーが多いことに着目し、その特徴として「全然読むことが苦にならず、タイミングも含めて無駄なものがひとつもなく、読ませる言葉として生きている」と指摘。そしてその多くがコピーだけでなく、演出の役割も果たしているということが判明したという。山本氏は自身の広告のクリエーティブ手法について、「自分がやりたいことが先にあるのではなく、クライアントに言われたことの意味を伝えることにプライオリティを置くオーダーメイド」が基本とまず説明。クライアントの意図を汲んで丁寧に進めていくが、その場合にクライアントとの間に齟齬(そご)が生じる原因はコトバにあることが多く、それを極力回避するために、「なんとなく面白い」「なんとなくかっこいい」ではなく、最初の段階で明確な言葉やコピーでしっかりと何を言いたいのかを最初に共有しておくのだという。このことを山本氏は「言葉で握る」と表現している。また、「とにかく面倒くさいことが大嫌い」なので、演出を自身で手がけることが多い理由もそこにあるという。スーパーの絶妙な入れ方なども自分で編集するからできることで、その技術は長年の仕事で培った「もはや伝統工芸」と語った。

次のグループ〈語りかけるコトバ〉は、CMの登場人物やナレーターが、「こうなろう」「変わろう」などと語りかけている言葉が特徴で、トヨタの『変われるって、ドキドキ。』が代表作。これが成り立つには、「見ている人が思わずうなずいてしまう説得力を持つ言葉が必要で、コピーライターが持つべき技術」と阿部氏。山本氏は、「言葉で握るという作業をやる以上は、クライアントが表現できない言葉を持っていないといけない。それは代筆ではなく“代表現”の仕事であり、相手の考えていることを咀嚼(そしゃく)して定着させるところまで含めた技量」だという。「言葉なんか誰でも使えると思っている人たちを説き伏せる作業を必ずやらなければいけない。そのためには自分の技量だけではなく信念も必要。それをスムーズにクライアントに伝え、世の中に伝えるという作業が、言葉を使うという選択をした以上必要になってくる」と語った。

3つ目のグループ〈モノローグのコトバ〉は、語りかけるのではなく、独り言のような自分自身に言っている言葉。阿部氏は、「登場人物たちが自分のことを勝手に言っているのにコミュニケーションが成立するのは、かなり高度なテクニック」と指摘する。山本氏は、「通常、演出家はカットを計算してそれを積み上げて例えば15秒を作るけれど、僕はしゃべるスピード、つまりコピーで尺を作っていく」と解説し、それが明確に表れているのがこのタイプだという。このように、阿部氏の的確な分析と質問に応えるかたちで、山本氏のクリエーティブの秘密が次々と解き明かされていった。

後編に続く)

※Dentsu Design Talkは毎週金曜日に更新予定です。