角田陽一郎×中村洋基×朴正義×澤本嘉光 「明日のテレビをつくる」会議!(後編)

Dentsu Design Talk №4

  • 角田 陽一郎
  • 中村 洋基
  • 朴 正義
  • 澤本 嘉光

2013/11/15

角田陽一郎×中村洋基×朴正義×澤本嘉光
「明日のテレビをつくる」会議!(後編)

Dentsu Design Talk vol.96 (2013年3月5日実施)


 

前回に引き続き、TBSテレビの角田陽一郎氏、デジタル技術を活用したクリエーティブを得意とするPARTYの中村洋基氏、インタラクティブ番組を実現する表現開発を牽引 するバスキュール社長の朴正義氏、CMプランナー・クリエーティブディレクターの澤本嘉光氏(電通コミュニケーション・デザイン・センター)の4人が「明日のテレビ」についてトークを繰り広げた。

(企画プロデュース:電通人事局・金原亜紀  記事編集:菅付事務所  構成協力:小林英治)

 

「テレビとスマホ」を活用したインタラクティブの試みについて、バスキュール社長の朴氏は、「現状はテレビのネットへの接続率が低いので、普及しているスマホを利用する流れになっているのにすぎないのではないか」と考える。「テレビがニコニコ動画やYouTube、ソーシャルゲームなどすべて画面に流れるハブのデバイスになれば面白いし便利なはず。、そのように目標を立て、未来のテレビをどうつくるのか?とデバイス側の創造から考えてみることも必要」と指摘した。

また、テレビCMのプランナーという立場からは澤本氏が、スマホが番組の画面に頻繁に出てくることに抵抗感を持つ人もいるのではないかという疑問が提起され、「スマホと一体化しないと成立しない番組とは別に、既存の番組を楽しんでいる視聴者も大事にしていくことが重要」と語った。角田氏は、「かつては例えば『月9ドラマを見なきゃ』と思わせるような『魔法の力』がテレビにはあった。最近のテレビが面白くなくなったのは(魔法のタネ明かしが事前にネット等で見られて)この魔法がかからなくなったせい」で、「魔法をかけるためには毎週リアルタイムで見たくなるような本当に面白いコンテンツをつくればいいとも言えるわけで、逆にこれから本当のプロの制作者の時代がやってくるのではないか」と予測。テレビの魅力の低下について中村氏は、「テレビを見ることは日常の中に非日常をつくることだと思うが、今は逆に非日常がコモディティ(日用品)化しているのではないか。視聴率が取れる方法論に添ってクレームのない番組が生まれたとしても、ドキドキや冒険がない番組は結局失敗なのではないか」と現在の番組制作の在り方に疑問を呈した。そして、「生放送のリアルタイム性にはドキドキがある。インタラクティブなツールを用いて、その感激を生み出すことができないかと、もがいているのがここ半年くらいの状況」と自らの試みを位置づけた。

テレビでこのような実験的な試みが実現しにくい大きな理由には、マネタイズの問題がある。澤本氏は「インタラクティブな番組の楽しみ方は視聴者を生視聴者だけに限定することになる。それは放送局側にはリスクではないか」と問いかけ、角田氏は個人的な意見としながらも、「視聴率というのは、良くも悪くも広告代理店がつくった20世紀型システムであり、それをどう21世紀型に変えていくかが課題だ」と述べ、「テレビ局がデジタルやインタラクティブの方向を推し進めるためには、広告代理店やクライアントと共に未来を拓く共通認識が必要」と主張。また、視聴率にとらわれない番組制作として現在手がける、スポンサーを番組独自で募るトークバラエティ『オトナの!』を紹介。同番組では、番組のフェスを赤坂BLITZで開催し、観客のチケット収入を制作費にあてる形で行った。

また、中村氏はPARTYが手がける「リアル脱出ゲーム」のオンライン版を紹介しながら、「コンテンツそのものでマネタイズできる仕組みを考え、それをテレビという巨大な箱でブロードキャストすることによって参加者が1万人から100万人に増えるような番組ができれば、クライアントからお金を得なくてもできる」と提案。朴氏は、「実際にチケットを買って行く人と、テレビを見ている人の中間に、300円くらいで参加して見ているだけよりは少し面白いというような、既存の広告にはない新しいモデルを生み出していく必要もある」と述べた。

さまざまな議論が交わされたが、重要なのはテレビの中に「参加する」という体験をどうつくっていくかにあるようだ。角田氏は「ライブでも赤坂BLITZなら1,200人、国立競技場なら7万人ですが、リアルタイムで視聴者がテレビのエンタテインメントに参加できれば1,000万人、1億人参加の可能性もある。そのような参加感をテレビがどうつくれるかが鍵」と語った。最新の制作実験事例を通じてテレビの今後の可能性を予感させながら、熱のこもったセッションは締めくくられた。