性って、命のことなんだ。 「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」が、 自分と誰かを守る。

ガールミーツガールプロジェクト リレーコラム №3

  • 外崎 郁美

2016/06/28

性って、命のことなんだ。
「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」が、
自分と誰かを守る。

連載第5回は、2011年からガールミーツガールプロジェクトを共に運営する国際協力NGOジョイセフと電通ギャルラボが、2016年3月に新たにスタートさせた「I LADY.」キャンペーンについての続きです。

I LADY.が向き合うテーマ、それは「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)。その言葉の意味をひもとくと、「生殖におけるすべての過程」、つまり「恋愛」「セックス」「避妊」「妊娠」「中絶」「出産」「性感染症」「不妊」「育児」の全てを含むものだと前編でお伝えしました。女性が、自分の健康と権利を守って最大限に自由に生きていくために。何ができるでしょうか?

自分の人生を守るために、今からできることを

「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」、この個々人に与えられた健康と権利を守って、心身ともに自由に生きていくために、ぜひ知っておきたいことがあります。そこで自分を守るために予防したいリスクについて、いくつかご紹介したいと思います。

●性感染症(性病)は他人事じゃない…?

性感染症。その言葉を聞くと「自分とは関係ない」と思う方が多いのではないかと思います。けれど性感染症は、セックスをする全ての人に起こるリスクです。そして残念なことに、実は日本は性感染症大国。HIVの感染者数は毎年約1000人の規模で増え続け(※平成27年エイズ発生動向 概要/厚生労働省エイズ動向委員会)、さらには女性の梅毒感染者が急増しているというニュースも記憶に新しいかと思います(※NIID国立 感染症研究所から)。

特に感染者が多いといわれているのがクラミジア。性交経験のある日本の女子高校生の7人に1人が感染していたという衝撃データもありますが、自覚症状がないのが特徴です。つまり感染に気付かず放置した結果、それが将来的に不妊の原因となる場合があるのです。例えば初めてのパートナーとコンドームなしのセックスをした場合、そしてその相手が遊び人だった場合…などは特に、検査の必要があるでしょう。その昔、HIV感染予防のCMで「元カレの元カノの元カレの…」というものがありましたが、クラミジアも同じ。人から人へとうつり渡り、思わぬところで感染してしまいます。

●偏った「恥」意識が裏目に !?性が起こす悲劇

この感染者増加の背景にあるのが、日本人の性に対する偏った「恥」意識。セックスについての会話が少なく、特に女性がセックスについて主体的に考え、行動することが「恥」「はしたない」とされる風潮があるようです。

例えばアダルトビデオの演出として、男性が女性を支配して征服欲を満たす内容に影響され、「そういうものだ」と刷り込まれているケースも多いとか。それは男性にとっても「男らしさ」の決めつけになりかねず、そのジェンダー意識に男性自身も苦しめられていると聞きます。

コンドームを男性がしない、男性にお願いできない、さらに使用法が間違っている…。対策をとれば防げるはずの性感染症が増え続けている事態。しかし、私たちの知識と行動でそのリスクは回避できるのです。

性感染症は、実は婦人科疾患にもつながります。例えば20代女性で最も罹患者が増えているといわれる子宮頸がんですが、日本では毎日約8人の女性が子宮頸がんで亡くなっています(※がん情報サービス2014データから)。

この子宮頸がんは、セックスによって感染するヒトパピローマウイルスが原因で起こるものです。先ほどの性感染症の話ともつながりますが、ヒトパピローマウイルス感染の予防法としてコンドームの使用は大切です。でも残念ながら100%予防できるわけではないそうです。予防法としてワクチンの接種もありますが、ワクチンについては日本でもさまざまな議論を生んでおり、明確な見解がいまだ存在しない状況です。

絶対数は少ないですが、男性の陰茎がんや尖圭コンジローマもヒトパピローマウイルスが原因であり、そもそもウイルスに感染した男性が女性に感染させることが子宮頸がんの原因となり得るので、海外ではオーストラリアなど、男性にも子宮頸がんワクチン接種を推奨している国があるそうです。

つまり、これは女性だけの問題ではありません。少なくとも今言えることは、男女ともに最低限でもコンドームをつけることは必須でしょう。

●妊娠の有無にかかわらずケアしたい、婦人科疾患について

さらに妊娠年齢の上昇に伴い、見逃せないのが婦人科疾患です。月経が絶えることなくくり返され、エストロゲンという女性ホルモンにさらされる期間が長くなることで子宮内膜症や子宮筋腫などの病気のリスクは高まる傾向にあります。

これらは将来、妊娠する・しないにかかわらず健康を脅かすリスクとなりますが、日本女性の婦人科検診率は先進国の中でも最低レベル。つまり、私たちは病気を予防したり、早期治療できるチャンスを見逃している可能性があるのです。一人一人がかかりつけの婦人科医を見つけ、ある年齢以上になったら年に一度は検診に行くことがスタンダードになる必要性を感じます。

 

 

妊娠についての事情は人それぞれで、子どもを持つ・持たないどちらの人生も尊重されるべきです。誰かに責められたり、肩身の狭い思いをしたりする必要はありません。

でも、どちらの道に進むとしても、「備え」は必要になってきます。例えば、将来妊娠したい場合。まず妊娠する前の準備段階として、性感染症を防ぎ、治療する必要があります。先ほども記載したように、クラミジア感染を放置すると不妊の原因となる場合があります。健康的な妊娠、出産にとっても性感染症の予防はとても大事です。

卵子の数が分かる!? 精子を観察できる!?

さらに病気ではなくても、最近では自分の体質をあらかじめ知ることができるようになりました。例えば、AMH検査。AMHとはアンチミューラリアンホルモンの略で、発育過程にある卵胞、つまり「卵子のもと」となるものから分泌されるホルモンのこと。AMH検査では、このホルモン量を測ることで、自分の卵巣に残された卵子の数の目安(卵巣予備機能)を推測することができます。

実は病気がなく健康な人でも、この卵胞(卵子のもと)の数にはかなりの個人差があり、つまり何歳まで卵子を排出できるかは個人差が大きいことが分かっています。例えば20代の女性と40代の女性で、残っている卵胞の数が同じ可能性だってあるのです。病気の有無にかかわらず、妊娠のしやすさに個人差があるのはこのような要因もあります(※AMH値=妊娠率ではないので、「AMH値が低い=妊娠の可能性が低くなる」ではない。AMH値が低い場合は、「妊娠の可能性がある期間が限られている」ことを示している)。

また、同じことは男性にもいえます。精液の中に含まれる精子の数や運動量には個人差があり、例えば運動量は年齢とともに落ちていく傾向がありますが、数も運動量も年齢にかかわらず個人差はあるようです。

こういった日常生活では知ることができない精子の状態についても、最近では自宅で簡単に知る方法ができました。それが泌尿器科医の小堀善友先生が中心となり開発した、自宅で出来る精子観察「TENGAメンズルーペ」です。自分の精子を自宅で、しかもスマホで簡単に撮影でき、その観察結果をWHOの基準と比較できるとても手軽で優れた観察キット。ぜひ一度、自分を知るという意味で試してみるといいでしょう。

 
 

ありのままの自分を知るのは、ちょっと勇気のいることです。でも、あらかじめ知っておくことで、病気を治せたり予防できるので、自分の可能性を最大限に広げることができるはずです。自分の人生をどうしたいのか、どうするべきなのか。まずは自分を知ることで、ある程度の備えや覚悟はきっとできます。

性を大事にすることで、守れる命がある。
虐待の原因に「望まない妊娠」

このリプロダクティブ・ヘルス/ライツを守ることで、守れる命があります。例えば悲しいニュースが後を絶たない児童虐待。生後1カ月以内に亡くなる虐待の場合、「望まない妊娠」で実母の虐待を受けたケースが多いそうです。この実母には10代の女の子も多く、一度も妊婦健診を受けずに、中には、医療機関ではなくお風呂場やトイレで出産しているケースもあるようです。このような深刻な状態では、産まれた子どもだけでなく実母である女の子も被害者といえます。

また日本では、10代だけでなく40代の中絶もまだ多くあります。避妊法がほぼコンドームのみで選択肢が少ないことも一因かもしれませんが、性との向き合い方を自分らしく選択することについて、日本はまだまだオープンな風潮ではないことも要因ともいえるでしょう。

例えば他の先進国と比べてみると、日本は避妊法がコンドームに偏っており、性に閉鎖的な影響からか、逆に避妊率がとても低いようです。

実はこれらもすべて、リプロダクティブ・ヘルス/ライツにまつわる話。私たち大人こそもっと性について学び語り、そして若い世代に伝えていく必要があると感じます。もっと事前に知ることで、そして知識や手段をシェアして広めることで、守れる命、守れる人生がまだままだたくさんあるはずです。

自分の人生は、もっと自分で決められる。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツについて、もっとみんなが知り、実践できるように。そしてこの活動をもっと広めてムーブメントを起こせるように。国際協力NGOジョイセフと電通ギャルラボで進めるこの「I LADY.」キャンペーンは、同じ思いで共感してくださった、たくさんのアクティビストの方のおかげで推し進めることができています。

先日も伊勢志摩サミットが開催された後の週末 (6/5)に、「I LADY.in みえ」を開催し、ヨガインストラクターの仁平美香さん、モデルの堂珍敦子さん、産婦人科医の宋美玄さん、現役大学生でTorch for girls代表の櫻井彩乃さんなどアクティビストの方にご登壇いただき、それぞれのI LADY.なアクションについて語り合いました。

女性支援につながるチャリティーアイテムも販売
自分のリプロダクティブ・ヘルス/ライツに気付きを与える
「新・女子力テスト」にチャンレジする女の子たち
ヨガインストラクター仁平美香さんによるレッスン
モデルの堂珍敦子さんによるトーク。2015年のタンザニア訪問について
産婦人科医の宋美玄さんによる性に関するトークセッション
I LADY.アクティビストの皆さま。左から仁平美香さん、宋美玄さん、堂珍敦子さん、現役大学生でTorch for girls代表の櫻井彩乃さん

私たち一人一人が幸せに生きるための「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」とは、何なのか。知れば知るほど奥が深いこのテーマについて、女性だけでなく男性も、さらにさまざまなセクシュアルの方も一緒に、社会全体が一丸となってそれぞれの課題と向き合い、行動していく必要性を強く感じています。

I LADY.キャンペーンはまだ始まったばかり。ここからが本番だと思っていますので、専門家の方、セレブリティーの方、そして企業の皆さま、少しでも興味のある方はご連絡いただけるとうれしいです。

電通ギャルラボ代表として、広告会社のクリエーティブ職として、自分にできることは何か。私自身も一層、この新しいフィールドを開きながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。