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廣田:僕は、これだけ複雑な時代だからこそ「温故知新」が大事だと思っている派なのですが、お二人が表現していく上でチャレンジしてみたいことってどんなことでしょう?

八木:デザインは人の気持ちをハッピーにできる可能性を秘めているものだと思います。だから、マス広告だけでなくて、もっと広い領域のデザインを手がけてみたいです。商品開発だったり、店舗のデザインだったり。ブックデザインもまたやってみたいです。

藤本:広告ってタイムラインのようにすぐに流れていってしまうものだから、たまには残るものをつくりたいなと僕も思ったりします。たとえばプロダクトとかアプリ、それに廣田くんが書いた本もそう。僕はコピーライターですが、言葉以外にも領域を広げていきたいです。この先の世代にもずっと手元に置いてもらえるようなものをひとつでもつくれたら、幸せだろうなと思います。

八木:次世代のために、なんて大きな話ではないのですが、日本にはすてきな古い物がたくさんあります。デザインを通じてそういうものを若い人に紹介するようなこともしていけたらいいなと思います。

たとえば、私の地元は革細工が有名なのですが、若い人にとっては古くさいものにもなりつつあって。もし新しいマークやデザインができれば、一気にイメージが変わると思うので、そういうお仕事があればやってみたいですね。私も温故知新派のようです。(笑)

藤本:逆に僕はテクノロジー大好き人間なので、新しいものの中にある普遍的な部分を知りたい派かも。技術的に新しいことをやっていても、人の気持ちを動かしているメカニズムはあまり変わっていなかったりしますよね。

だから、いいなと思う表現を見たときは「なぜこれでワクワクしたのだろう?」というふうに考えるようにしています。テクノロジーやデザインもコピーを書くための参考になるし、根っこにあるアイデアの本質を見つけられれば、自分でできる表現の領域も広がるのではないかと思っています。

廣田:表現って、英語では「re-presentation」。本来「改めて現前させる」って意味を持っています。だからそれが紙だろうがWEBだろうが、拍手だろうが、ポエムだろうが、ウィンクだろうが、アスキーアートだろうが、誰かに気付きを与えて、そこに共感したり気持ちが動いたりすることなのであれば、それはすでに表現なんです。

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著者

廣田 周作

廣田 周作

Henge Inc.

1980年生まれ。放送局でのディレクター職、電通でのマーケティング、新規事業開発・ブランドコンサルティング業務を経て、2018年8月に独立。企業のブランド開発を専門に行うHenge Inc.を設立。英国ロンドンに拠点をもつイノベーション・リサーチ企業「Stylus Media Group」と、米国ニューヨークに拠点をもつ、大企業とスタートアップの協業を加速させるアクセラレーション企業の「TheCurrent」の日本におけるチーフを担当。独自のブランド開発の手法をもち、様々な企業のブランド戦略の立案サポートやイノベーション・プロジェクトに多数参画。また、WIRED日本版の前編集長の若林恵氏と共同で、イノベーション都市・企業を視察するツアープロジェクトのAnother Real Worldのプロデュースも行なっている。自著に『SHARED VISION』(宣伝会議)、『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)など。

八木 彩

八木 彩

電通では企業や商品のブランディングを、コンセプト構築・商品開発からコミュニケーション設計まで、デザインを軸に、トータルで手掛ける。2023年10月末に電通を退社。

藤本 宗将

藤本 宗将

株式会社電通

1972年生まれ。1997年電通入社。コピーライターとして広告のメッセージ開発を手がける。主な受賞に、TCC最高新人賞・TCC賞・ADCグランプリ・ACCグランプリなど。論文に『拡散するクリエイティブの条件』(JAAA入選)。

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