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『SHARED VISION』の出版をきっかけに集まった3人が、本を飛び出して語り合う「おまけ」的なコラムです。

『SHARED VISION』

廣田:この本を書く時に一番考えたのは、マーケティング理論ごりごりの「難しそうな本」にしたくないなということ。僕は常々、ソーシャルメディアって、もっと生活に近いところにあるはずで、もっと日常っぽさが必要だと思っていたんです。良い意味で地味に、飾らない僕らしい表現をしてくれるデザインを求めていて、同期である八木さんにお願いしました。

八木:ビジネス書のコーナーを見に行ったら「文字をベースにしたデザインが多いな!」という第一印象。なので、ビジュアルメインの表紙にしたら目立つかな、と。廣田さんからは、「劇薬ではなくて、漢方薬。カモミールティーみたいなやさしい印象の本にしたい」とオーダーされたので、イラストは塩川いづみさんがいいのでは?と思って、そこからアイデアを考えました。

『SHARED VISION』というタイトルが聞き慣れない言葉なので、これ自体をビジュアルにしようと、男女がメガネで繋がっているデザインにしました。それとアイキャッチとしてメガネをトレーシングペーパーに印刷して、メガネを外せる仕掛けになっています。

廣田:そして帯のコピーは藤本さんにお願いしました。藤本さんご自身のツイートが面白くて、元々ファンだったということが大きいのですが(笑)、真面目に言うと、藤本さんのコピーって特にデジタルの仕掛けも何もしていない、とてもシンプルな作品なのに、ものすごい勢いでクチコミを生んでいるんですよね。

藤本:最初は「書籍の帯を」と言われて推薦文を書くのかと勘違いしてて。無名の僕ではせっかくの本が売れないからやめたほうが…と思ったんですけど、よく聞いたら求められてたのはコピーでした(笑)。今回の商品は書籍という「言葉」で、それをコピーという「言葉」で伝えるという作業。そこがけっこう難しくて悩みました。

本の内容を1行で言い切るのは難しいので、コピーは「そもそもソーシャルメディアで何がしたかったんだっけ?」という疑問形にしました。事前に原稿を読ませてもらったら、「テクノロジー」や「仕組み」の話ではなくて本質的な問いを投げかけているような気がしたので、コピーも問いかけになってるといいのかなと。

廣田:ソーシャルメディアの話になると、ついデジタルテクノロジーや仕組みについて考えがちです。でもソーシャルメディアの先には必ず人がいるし、そこで受け入れられるのは発信する人の人柄だったりする。だから「ソーシャルメディアの企画をしよう」と考えるより、まずは相手が喜んでくれるかな?という視点で考えることが重要なんです。

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著者

廣田 周作

廣田 周作

Henge Inc.

1980年生まれ。放送局でのディレクター職、電通でのマーケティング、新規事業開発・ブランドコンサルティング業務を経て、2018年8月に独立。企業のブランド開発を専門に行うHenge Inc.を設立。英国ロンドンに拠点をもつイノベーション・リサーチ企業「Stylus Media Group」と、米国ニューヨークに拠点をもつ、大企業とスタートアップの協業を加速させるアクセラレーション企業の「TheCurrent」の日本におけるチーフを担当。独自のブランド開発の手法をもち、様々な企業のブランド戦略の立案サポートやイノベーション・プロジェクトに多数参画。また、WIRED日本版の前編集長の若林恵氏と共同で、イノベーション都市・企業を視察するツアープロジェクトのAnother Real Worldのプロデュースも行なっている。自著に『SHARED VISION』(宣伝会議)、『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)など。

八木 彩

八木 彩

電通では企業や商品のブランディングを、コンセプト構築・商品開発からコミュニケーション設計まで、デザインを軸に、トータルで手掛ける。2023年10月末に電通を退社。

藤本 宗将

藤本 宗将

株式会社電通

1972年生まれ。1997年電通入社。コピーライターとして広告のメッセージ開発を手がける。主な受賞に、TCC最高新人賞・TCC賞・ADCグランプリ・ACCグランプリなど。論文に『拡散するクリエイティブの条件』(JAAA入選)。

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