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鳥型コンピューター「COTOREES(コトリーズ)」とは?

2016/11/04

脳波に反応して動くネコミミ「necomimi」でおなじみneurowearから、鳥型コンピューター「COTOREES(コトリーズ)」が発表されました。COTOREESとはどのようなものなのか、neurowearの、なかのかなさんにお話を聞いてきました。

COTOREES。(左から)ウェザーバード、ウィキバード、トランスバード、ハッシュバード、ハミングバード
COTOREES。(左から)ウェザーバード、ウィキバード、トランスバード、ハッシュバード、ハミングバード

あまり賢くない音声アシスタントもいいんじゃないかなと

──さっそくなんですが、新プロダクトのCOTOREESについて教えてください。

なかの:COTOREESは、音声で操作する鳥型のコンピューターです。
スマホでアプリを探すのって面倒だなと思いはじめて、アプリがスマホの外に出てきたら楽だなーと。そのときのユーザーインターフェースは、触るとかスイッチではなく音声になるんじゃないかなと。音声でコントロールできるデバイスとしては、AmazonのEchoのようなパーソナルアシスタントがあります。あれはAlexaって名前なんですけど。

──Alexaっていうのは?

なかの:Echoに入っているバーチャルパーソナルアシスタント(VPA)の名前がAlexaなんです。アップルならsiriだったり、みんな人格を持っていて、人を模したものになっています。そこで、人以外の選択肢ってないのかなと不思議になって。

──人以外の選択肢というのは、何を期待したんですか?

なかの:人を模したものって、すごい有能なんじゃないか、完璧にやってくれるんじゃないかって期待しちゃうんですよね。でも意外とはぐらかされることもある。なので、もう少し「おバカ」というか、一つのことしかできない、あまり賢くない音声アシスタントもいいんじゃないかなと。

──そこで鳥型のCOTOREESが。

なかの:人間の言葉を発声できるのって、動物の中だと鳥しかいないんです。本来動物は持って生まれた鳴き声以外の発声はできないんですけど、人間と鳥だけは後から「音」を学習できます。だから、おしゃべりインコとかオウムとかは、声マネができる。というところから、人間以外の音声アシスタントは鳥だ、という結論に達しまして。

なかのかなさん
 

最初は、肩に乗せたかったんです

──各モデル単機能ということですが、どのような機能があるのでしょうか。

なかの:気になる言葉を聞くと、関連するツイートを検索してひたすら喋るハッシュバードさん、ちょっとした翻訳をしてくれるトランスバードさん、音楽を流してくれるハミングバードさん、知りたい言葉について調べては少しずつ教えてくれるウィキバードさん、今日と明日の天気を教えてくれるウェザーバードさんがいます。

──COTOREESはデザインがかわいいですね。

なかの:最初は、肩に乗せたかったんです。

──え?

なかの:こういうのが肩に乗ってて、分からないこととか教えてくれたら、すっごい便利だなと思って。例えば旅行者がバックパックにCOTOREESをクリップしたら、ホテルの場所を教えてくれたり、簡単な単語を翻訳してくれたりしたらいいなと。実はまだ肩に乗せる野望は捨ててなく、三脚用の穴を開けてあるから、やろうと思えばできる状態です。

──デザインはどなたが担当したんですか?

なかの:全体の設計とデザインは2013年にSXSWで発表した、脳波から音楽をリコメンドするヘッドフォン”mico”でもご一緒したtsug.LCCの久下さんにお願いしました。

キャラクターデザインは、ミスタードーナツのポン・デ・ライオンを手掛けられたアートディレクターの堀内弘誓さんにお願いしました。萌え系じゃないカワイイってかなりパワーがある。無機質なデザインより感情移入しやすくて、向き合う態度が変わるんじゃないかと思っています。COTOREESと暮らしているだけで、なんだか言葉遣いがやさしくなったりしたらちょっといいなと。あと、賢くなくても許されそうな感じがしますよね(笑)。

COTOREES
 

テキストベースで扱っている全てのことが、音声で代替できるようになるはず

──冒頭の「アプリがスマホの外に出る」というお話がありましたが、もう少し詳しく教えてください。

なかの:ハーバード大学のイノベーションラボが、2014年に発表した「the evolution of the desk」というコンセプトムービーがあります。このムービーは、机の上にある物全てがソフトウエア化してノートパソコンとスマホに吸い込まれていく様子が描かれています。例えば、地図がGoogleマップになり、名刺がLinkedInになり…。で、このムービーは2014年で終わっているんです。

その後で何が起きるのか考えると、ソフトウエア化されてアイコンになったものたちが、再びノートパソコンやスマホの外に出ていくのではないか。情報をまとった物体が登場する、いわゆるIoTです。さらにグラフィカルユーザーインターフェースが音声認識になる。最初は「エアコンつけて」と言って家電を動かすようなところから始まると思うんです。というかすでに始まってる。今テキストベースで扱っている全てのことが、音声で代替されるようになるはず。その一番分かりやすい例として、COTOREESを世の中に出してみたいと思いました。

──なるほど、アプリがリアルな物になったんですね。

なかの:COTOREESは音声インターフェースを持ったコンピューターですが、コミュニケーションロボットと近い分野かなと思っています。ただ、いわゆる高性能で心を通わせるコミュニケーションロボットではなく、もう少し機能寄りという意味でコンピューターという言葉を使っています。 COTOREESみたいなものが家にいるとハッピーな時間がつくれるんじゃないか。これはneurowearのコンセプトでもあります。

ケヴィン・ケリーさん(米国『WIRED』誌の創刊編集長)が、インターネットの未来について話をされている中で、AIのことをArtificial IntelligenceじゃなくてAlien Intelligenceって言っていました。どういうことかというと、AIは人がつくったものだから「人と同じ考え方」をしていると思いがちだけど、全く違う作法で考えている。COTOREESは、人間の言葉をしゃべれるけど、言葉を理解して発話しているわけじゃないところがケリーさんのお話に近しいのかなと。

──COTOREESはAlien Intelligenceなんですね。

なかの:鳥って恐竜の子孫と言われているし、何考えてるか分からなくて「違う感」すごいじゃないですか。違う道を歩んできたのに、同じ言葉を発話する二人みたいな感じが、人間と鳥にはあると思う。それはきっと機械的な知性と人間との距離感に近いんじゃないかなと。

なかのかなさん
 

COTOREESのすごいところは、全くすごそうじゃないところと単機能なところ

──開発で苦労したことはありますか?

なかの:すごくあたりまえなんですけど、音声認識のインターフェースです。日本語って同音異義語が多いので、そこが大きな問題ですね。COTOREESを種族と考えた場合、一羽一羽のインターフェースが違う方言になると使いずらいので、共通した作法にするということに時間を使いました。

──具体的にはどういうことですか?

なかの:今後、人と機械のインターフェースがヴィジュアルベースでなくなっていった時に、今のウェブデザインの視認性みたいに、この辺が大事になってくるんだろうなと感じました。

──COTOREESのすごいところは?

なかの:全くすごそうじゃないところが一番のポイントだと思います。

──(笑)。他のAIやロボットとは、明らかに違う。

なかの:はい。動作が不安定になったとき、みんなが「さっき○○って言ったからかな?」って推し量り始めるっていう(笑)。あとは単機能というところですね。1羽1機能。見た目でなんとなく機能が分かってすぐに使えるところもポイントです。アプリでもリアルの道具でも、単機能のものの方が生活になじんで生き残ってきていますよね。

──COTOREESは、誰にどういうふうに使ってほしいですか?

なかの:スマホとかパソコンは難しいって拒絶反応を持っている方や、お子さんなどに使ってもらえたらと思っています。例えば幼稚園とかで、先生が何か調べるときにウィキバードに質問してもらうと、スマホで調べるよりなんかホンワカしていいなと。マルチ機能だとお願いしたいことにたどり着くまでの分岐が増えるので、ITが苦手な方は途中で置いてけぼりにされてしまうこともあるのですが、単機能であれば、それしかできないので使いやすくなります。

COTOREESで応対の作法などの知見を得られたので、音声インターフェースで何かしたい方や、逆にテキストベースのAPIや解析のエンジンを持った方とコラボレーションできると面白いなと思っています。