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大人顔負けの会議を行う小学生

アクティブラーニングこんなのどうだろうレポート №2

  • 大山 徹

2016/12/15

大人顔負けの会議を行う小学生

サミット冒頭であいさつをする倉成英俊所長

電通総研アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所が開設されて、1年がたちました。その間に「アクティブラーニング」というキーワードをニュースで聞くことも増えてきました。私たちはこの1年間でさまざまな取り組みを通して、研究所の名前の通り「こんなのどうだろう」と知恵を絞って実施してきました。

その成果を発表する場として「電通総研アクティブラーニングこんなのどうだろうサミット2」を11月6日に東京・汐留の電通ホールで開催しました。

コンテンツにして合計10の発表を8時間にわたって行ったボリュームたっぷりの会でした。その中から今回は第1期の共同研究校となった3校の研究成果を踏まえながら、ビジネスの現場でこんな風に活用できるのではないか?! という考察も加えて、紹介します。

第1期の共同研究校となったのは、八王子市立弐分方小学校、中央区立明石小学校、東京都立多摩科学技術高校の3校です。それぞれの学校では、電通が広告ビジネスや独自の社会貢献活動で培ってきたアイディエーション(発想)やプランニングメソッドなどの知見やノウハウをもとに、多様な授業スタイルや研究のためのアプローチ方法を探っていきました。

大人顔負けの会議に! 

CMづくりのノウハウを普段の授業で試したら 〜 中央区立明石小学校

中央区立明石小学校 指導教諭 宮内有加先生

明⽯小学校では「主体的・協働的に学ぶ児童の育成」の研究に取り組みました。授業の中でアクティブラーニングを進めるために活用されたのが、「広告小学校」のノウハウ。「広告⼩学校」は、電通が行っている社会貢献活動で、CMづくりを通して子どもたちのコミュニケーション力の育成を目指す教育プログラムです。

その中に「パー・グー・ギュ〜~発想法」というアイデアメソッドがあります。「パー」でアイデアを拡散(ブレストなど)。「グー」でアイデアたちを収束(コンセプトづくり)。更に「ギュ〜ッ」と絞り出すようにアイデアの質を⾼めていきます。

そのノウハウを普段の授業で試してみることで⼦どもたちに「考え方の考え方」を⾝に付けてもらいたい、というのが宮内先⽣生の狙いでした。実際にどうなったのでしょうか?

3年生の総合的な学習の時間「幼稚園と仲良しわくわく大作戦」の授業で実践されました。明⽯小学校の3年生は毎年、併設の幼稚園と一緒に芋掘り遠足に出掛けます。

その芋掘り遠⾜に向けて、自分たちの力で園児たちと豊かな関わりができるよう、どのような活動をするのがよいのか、どのように工夫すれば楽しい活動ができるのかを⾃分たちの力で考えてプロジェクト化し、実現していく授業です。

授業の最大のポイントは「ブレスト」。付箋を使ってアイデアを出していくようなブレストで起こりがちなのが、先生がただ「もっと考えなさい」「よく考えなさい」「しっかり考えなさい」と⾔ってしまうこと。

これでは、「考え方の考え方」を伝えることにはならず、考えるところで思考が停止してしまいます。ブレストの具体的なルール、発想するための「視点転換」の方法をちゃんと提示することで、⼦どもたちは「考え方の考え方」を学んでいくのです。

ブレストでは、友達の意⾒を否定しない。「いいね!」と言う。思い付いたことは何でも付箋に書いていく。人のアイデアを見て思い付いたことをどんどん載せていく。そんなルールを守りながら、「視点転換」を基に発想することで、子どもたちは園児たちと一緒にどのような活動を行えばよいかというアイデアをどんどん書いていきました。

その数、各チーム10分間で30案以上!

幼稚園の運動会を盛り上げるために、応援の仕方や太鼓のたたき方を園児たちに教えるというアイデア。
3年生と園児たちの交流会をパソコンでつくった名刺を交換するというアイデア。
芋掘り遠⾜を盛り上げるために、みんなでてるてる坊主をつくるというアイデア。
などなど、さまざまな楽しいプロジェクトが⽣まれていきました。

ブレストの基本ルールを守りながら、「考え⽅の考え方」を⾝に付けていくことで、さまざまな課題が起こっても視点を変えれば、いくらでもアイデアを出すことができると学んでいくのです。

つまりがちな会議をやっている⼤⼈よりも、よっぽどアクティブですよね。

変えたかったのは「授業」そのものではなく「先生」だった!

指導案B面で先生と子どもたちは変わるのか 〜 八王子市立弐分方小学校

八王子市立弐分方小学校 校長 清水弘美先生

教育界で⾏われていること。そして、広告ビジネス界で⾏われていること。それぞれの業界の当たり前が、実は当たり前ではないということに気が付いて、学校と電通が一緒になって互いのノウハウを結実させたのが「指導案B⾯」です。

指導案とは、教師がつくる1コマの授業の計画表、進⾏表のこと。先⽣の多くはこの指導案を毎年決まった形で当たり前のようにつくっている。

でも、ここに先生の甘さが出ているのではないかと思った清⽔校長は、教師が思っている当たり前をくつがえそうと考えました。そして、そのためにつくったのが「指導案B面」。授業の流れが書かれている指導案をA面とすると、子どもたちを主体的にさせるために授業内容を見直すきっかけとなる7項目を、B面として指導案に追加しました。

たとえば、3年生の理科の授業のこんな問題。「⽇なたと日陰の地面に違いはあるか?」。でもこの問題、最後の「か?」をとったらそのまま答えになっている。こんな問題面白くない。だから先生の話を聞かない。そして先生は注意をする。

そもそも、児童が興味を持つように問題や授業がつくられているのか? そこで指導案B面です。

たとえば、指導案B面には次のような項目があります。
「授業に全く関心がない子がいるという前提で始めてみませんか」
「授業に楽しい遊びやゲームの要素を取り入れてみましょう」
「子どもたちへの質問を工夫してみましょう」

日なた、日陰に全く関心のない子どもたちを振り向かせるにはどうすればいいだろうか? 日なた、日陰といった教えたいことを言わない質問の仕方はないだろうか? 理科の授業にもゲームの要素を取り入れられないだろうか? B面を見て、こんなふうに考えた理科の先生は、問題を次のように変えることにしました。

「学校で⼀番暑い場所と、一番涼しい場所を友達より多く見付けてみよう!」。この問題を出した時点で、もう子どもたちは、きっとあそこに違いないなどと話し始めていました。⼦どもがわくわくしてしまっている状態をつくり出せたのです。

指導案B面の最大の特徴は、「授業」自体を変えるのではなく「先生」の当たり前を変えていったところにあります。

自分にとってのB面を探し、普段の仕事での当たり前を変えていく。先生に限らず、誰にとっても大事なことかもしれません。

評価方法も生徒と一緒に考えた

「評価できる授業」と「評価しない授業」 〜 東京都立多摩科学技術高校

東京都立多摩科学技術高校 科学技術科 教諭 森田直之先生

多摩科学技術⾼校は、スーパーサイエンスハイスクールに選ばれている学校。科学技術における倫理観をどのように生徒たちに伝えていくか。その初等倫理教育にアクティブラーニングを活⽤しようと考えたのです。

しかし、専⾨書などを利用した授業では、⽣徒の理解が難しい…。悩んだ森⽥先⽣は、⽇本の科学技術の発展を批判的に読み取ることができる「ウルトラセブン」のドラマを教材にしてみるのがよいのではないかと考えました。

倫理観について話し合える回を選んで⽣徒に見せ、課題解決に向けた思考法を⾝に付けるためのワークショップ形式の協働学習を多く実践。電通がビジネスで培ったアイディエーションのノウハウも授業に取り込んでいきました。

それなりに手応えがあった一⽅で、先生としては何か違和感があったそうです。それは評価が難しいということ。協働学習の場合、発言している人が必ず評価が良いのか。発⾔していない人は評価が悪いのか…。

そこで、新しい評価⽅式の試行を始めました。評価項⽬の軸は先⽣が決めた上で、「⾃分はここの成⻑を重点的に⾒てほしい」という⽬標を⽣徒が⾃ら設定。企業でも実践されているような評価方法の要素を取り入れてみることに。

コミュニケーションが少し苦⼿な生徒は自ら「プレゼンスキルを上げたい」という⽬標を掲げたり、実験のパートナーときちんと話し合って「実験の安全を確保する」という目標を掲げる生徒もいました。

そして、先⽣と⽣徒がその立てた⽬標についての面談を行った上で、一人一人に合った評価⽅式にしていったのです。

それでもアクティブラーニングの評価は難しいという森⽥先⽣。正直なところ、評価しない授業というものがあってもよいのではないか?と考えているそうです。

先⽣と生徒は、上司と部下の関係にもどこか似ています。ただ数字で測ることのできない成果をどのように評価していくのか。アクティブラーニングには、そのあたりのヒントも私たちに⽰してくれているのかもしれません。

「こんなのどうだろう」の波紋を広げていくために

共同研究を通して、私たちが広告ビジネスで当たり前のようにやっているメソッドの数々が、実は、教育界から見てみると新しい発見がたくさんあるということが分かりました。

しかし、メソッドは決してアクティブラーニングという言葉が流行し始めてから生まれたものではありません。広告業界に限らず、さまざまな現場において、ずっと昔からそのような取り組みはありました。それがたまたま今この時代に、アクティブラーニングと呼ばれているだけなのかもしれません。

私たちの周りにヒントは必ずあります。これからも先生、生徒のみなさんと一緒にそのヒントを見つけ出して、アクティブラーニングの「こんなのどうだろう」を考えて、世の中に対して発信していきます。

今回の共同研究に限らず、実践校で行っている授業も少しずつですが、地元のテレビ、新聞で取り上げられていて、小さな波を起こすことができているのではないかと考えています。

サミットにご登壇いただいた先生、学生の皆さん

最新情報などは、Facebookページでお伝えしていきます。また、ぜひ皆さまからも私たちに対して一石を投じてみてください。

ご意見、お問い合わせなど、メール(d-ii@dentsu.co.jp)でご連絡いただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。