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アクティブラーニングこんなのどうだろうレポートNo.1

「数学の人気がないんわ、問題文が上から目線やからや。」〜大阪府立金岡高校 【前編】

2016/12/01

電通総研アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所は、2015年10月15日の設立以来、さまざまな学校で先生たちとユニークな共同授業、実践授業を行ってきました。

授業コンテンツを一方的に提供するのではなく、その学校、そのクラスが一番「アクティブ」になるベストな形を、そのつど教育のプロである先生たちと模索。毎回とてもオリジナルな方法と、ドラマが生まれました。担当した研究員がその模様をレポートします。

答えが一つでない問題「クリエーティブテスト」

いきなりですが抜き打ちテストです。
高校生に出題したのと同じ問題を、ウェブ電通報読者の方々にも考えていただきましょう。制限時間は、30分です。では、ENJOY!

抜き打ちクリエーティブテスト

はい終了ですー。
答えが1つではない問題、クリエーティブテスト。
いかがでしたでしょうか?

これは、大阪府立金岡高校で出した実際の問題です。4月から探Q「変な授業」と銘打ってコラボレーション授業を始めたのですが、そもそもこの学校、その前から変でした。

金岡高校・和栗校長の変?なアイデア

変な入社式
2016年5月12日に執り行われた変な入社式の様子と和栗校長
和栗校長
 

まず校長が変。民間校長である和栗隆史校長は、僕らが知っている番組も多数手掛けた元放送作家。
電通汐留本社ビル近くの、日本テレビには大阪で校長先生になる前いつも通われていたそう。

その才能と経験を生かしてさまざまな変なアイデアを日々妄想、構想、実現されています。
例えば、
・世界初「帰宅部」開設。
・校長室は、生徒たちが校長に教えた今はやってる漫画がいっぱい。(今はやりのリバースメンターですね)
・昨年は松竹芸能の「笑育」とコラボ。漫才でコミュニケーション力、プレゼン力、発想力を鍛える授業を実践。
・しかも自ら「校長教頭」というコンビでM-1グランプリにも出場(背中で教育!)。
・学校の上履きのスリッパでは災害時避難しにくい!ということに気付かれ、クロックスのような走れる上履きを共同開発(これは変というより、素晴らしいソリューション)。
・校外からのゲストの講演がなぜか多数。ホリエモンこと堀江貴文氏、LINE森川亮氏etc.
・変なこと、困難、生徒との泣けるドラマ含めて、最近「変な校長」という本を出版。
などなど

変な、変な、と変ずくめですが、この名前、完全にわれわれが長年やってきた「変な宿題」プロジェクトのマネ(笑)。和栗さんと金岡高校が目立って日本の教育が少しでも面白くなるんだったら、と黙認中。和栗さんのことは大好きなので、われわれへのオマージュ、ってことにしておこう。しょうがないですよね、こういう愛嬌満載イケイケどんどんの方は。

ただ、「変は悪い意味に使われることが多いが、そうではない。変化、変革、変わっていく。変は良いことである」というのは和栗校長のオリジナルな主張です。もちろんさまざまな施策も完全に和栗校長と金岡高校オリジナルアイデアです。念のため。

「株式会社電通 金岡高校支社?」へ入社

初めオファーいただいたときは、変な宿題プロジェクトの金岡高校バージョン「変な授業」をしてほしいと企画書までいきなり送られてきたのですが、いろいろと現場の先生たちと協議する中で、コミュニケーション能力について何かやってほしいというニーズを伺いました。

それだと順目だなあ、と渋っていると「高校2年生362人を、電通に入社させてもらえませんか?!」との決めぜりふを言われ「じゃあ、やってみるか」と決断。「株式会社電通 金岡高校支社?」という架空の支社に入社という形で、始めてみることになりました。

入社ってことは、いろいろお決まりの段取りがあるな、ということで、5月12日5、6時間目、変な入社式を執り行いました。生徒たちも、松竹の次は、電通かよー、っていうか、電通ってなんの会社? となりますからね。

そして、そのまま最初の研修へ。入社したら必要なものをまずつくろう、と。名刺です。

雑誌ソトコトの表紙などを手がける電通のアートディレクター本田晶大のファシリテートのもと、本当の企業の名刺のようなものではなく、もっと個性あふれる、世界に一つだけの自分だけの名刺を1時間で制作。

実際に周りの友達と生まれて初めての名刺交換をしました。本田のメッセージは「偏差値とか点数とか数字じゃ表せない、362の個性をビジュアル化したい」でした。みんなに届いたかな〜。

名刺
名刺
名刺
名刺交換

恥ずかしがり屋の辻本くんの名刺は、恥ずかしがり屋らしく字も端っこに。数学好きの十夢(とむ)くんは、数字で名前を表現。笑顔がすてきな大西さんは、名前を笑顔で表現。そしてみんなでつくった名刺で、人生初名刺交換。

新入社員研修、電通名物「クリエーティブテスト」

新入社員研修1日目。6月2日は、電通名物クリエーティブテスト。冒頭の、答えが一つではない問題を解きました。皆さんはいかがでしたか?

このテストは、われわれ研究所員で100案くらい考え、今回の金岡高校に向いているものをピックアップ。実際の新入社員にも解いてもらって、その中から選んだ4案です。

「答えが一つではない問いを解いてみる。それを楽しんでやってみる」
これがわれわれからのメッセージでした。

本当は、学校の中でも正解が一つのものって、そんなにないはずです。数学の証明だって、作文だって、部活で県大会に行くぞ!だって、正解は一つではない。けれでも、どうしても、何となく、一つの正解を追い求めてしまう状況。それを初めに壊す、というのが目的でした。

想像すること。発想することを楽しむこと。そんな人生でとっても大事なことを伝えるために、こんな変な問題をみんなでいっぱい考えて出題したんですね。

ロボットのやつは「金属だからマグネットあげたい。それでおしゃれになってほしい」とか、ボタンのやつは「押すと、もっと押して〜、と色っぽい声がする」「コロンビア人が4人こける」とか、いろいろ面白いものがたくさんありました。中でも印象的だったのを一つだけ紹介すると、これ。

数学の答案用紙

確かに。なんで学校の問題って上から目線なんでしょう。(僕らのクリエーティブテストも、「書きなさい」と書いてましたね。つい)。金岡高校では、今学期、上から目線でない数学の問題が実際に出題される予定です(ですよね?先生方)。

後半は、1学期にやった他の問題を出題しつつ、先生たちとのコラボレーションの苦労と喜び、発見したことを書こうと思います。変に、面白おかしくやる、ってのも、実はいろいろあるんですよ〜。そのへんをシェアできたら、教育現場のいろいろな方のお役に立つんじゃないかと思います。後半もよろしくお願いします。