「つながり」をおもしろく
2017/02/02
電通の若手アートディレクターが考える「○○をもっと面白くするアイデア」をご紹介。今回は、齊藤智法さんによる「つながりをおもしろく。」です。
ゆるく関連付けて考えるのが面白い
──なぜ「つながり」をテーマにしたのですか?
齊藤:「○○をもっと面白くするアイデア」と聞いてしばらくテーマに悩みました。いろいろ考えた末に、僕が面白いと思うことを素直にやってみようかなと思いました。僕の「面白い」は実はすごく小さい喜びなんです。それは、どんなことでも関連付けて考えることです。つながりや由縁を見つけるというか。考えていることを頭の中で関連付けたり、調べて知ったことと偶然つながったりすると、脳が喜ぶんです(笑)。それが結構幸せだったりするんです。ちょっと変なんですね。だから、どうだ!すごいアイデアでしょ!っていうのが結構苦手なんです。
そういう自分の頭の中で起こっていることを、目に見える形にしたらどうなるのかなというのをやってみました。「ArounD 30」で僕が考えていることを(笑)。
とっかかりは絵でも言葉でもなんでもいい。そこから始まるゆるいしりとりみたいなものができないかと思いました。厳密につながっていることが大切なのではなくて、あ、そういえばそうだね、みたいなことでいいかと。それが気付いたら言語の壁とかを越えていたら、なんかすてきだなあと。
でも、この作品を見た人はこう思うと思うんです。そもそもなんで「最初がダルマなの?」と。その答えは、一応用意しておかないといけないですよね。「ダルマ」は僕なんです。今回、自分からスタートしてみようかと。まず、ヒゲを生やしているところが一緒です。そして、ダルマは漢字で書くと「達磨」。そのモデルになったのは中国禅宗の開祖のインド人の仏教僧らしいです。また、「ダルマ」という音は、サンスクリット語では「法」の意味を表しているそうです。ちなみに僕の名前は「智法」というので、「智ダルマ」だなあと。ついでに「智」はサンスクリット語でジュニャーナ(梵 - ぼん)といって物事を分別する知恵や知識のことをいうそうです。ああ、僕は名前からしてそういう知恵を探求したい性分のダルマなんだと。妙にそのことに納得したりしていました。本当に皆さんからしたらどうでもいいことですよね(笑)。
結局、DarumaからはじまったゆるいしりとりはYetiまでいくわけですが、Yetiは未確認生物UMAに認定されている存在ですから、Daruma→UMAのゆるい関係性が発見できたとしたら、まずまずかなということです。
ダルマとイエティ、一見似てないけど、どこか似ているように見えてきませんか?
なぜ伝統が絡む世界は簡単にイノベーションを起こすことを良しとしないのか
──今、仕事とは別に気になっているコトやモノを教えてください。
齊藤:今、クライアントから求められるソリューションは、生活者行動の変化に伴ってデジタルメディアを中心にしたコミュニケーションデザインにおのずとシフトしていっています。そこは、広告コミュニケーションに携わる以上、自分ごと化して向き合っていく必要があると思っています。
でも僕は個人的に、その裏側にそれとは逆行するような生活者意識も潜んでいるのではないかという仮説を持って、仕事とは別のところでいろいろ知見や経験を広げてみようと思っています。
例えば、膨大なモノや情報に囲まれる中で、「情報疲れ」という現象が起こり得るのではないかということです。
僕はそのヒントが、伝統的な職人技術や、伝統芸能、宗教思想など、長い時間をかけて生き残ってきたことの中にあると考えています。例えば、日本の伝統芸能の「能」のように、共感や拡散ということをあえて強要せず、演じる能楽師も昔から受け継がれる「型」を守ることに重きを置くような世界があります。能にもさまざまな流派があり、先進的な取り組みをする流派と保守的な流派に差はあれど、守らなくてはいけない部分に関しては、ある程度意識がそろっているのです。なぜこういった伝統を継承していく世界というのは、やみくもにイノベーションを起こすことをすぐに良しとしないのか。その周辺に関わっている人たちは、どういった思いで関わっているのか。そこに関わる人たちの心の動きを丁寧に観察することで、何か大切な視点が見つかったりするのかもしれないと、最近気になっています。