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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.99

「アイディアが、世界に誇る日本の輸出産業となる日がくる」

2017/01/12

設計図

妻が言いました。

「土地は高松の郊外、王越の辺り。瀬戸内の島々と段々畑が見える良いところよ。そこに800坪、買うわね。そして100坪の家を建てるの。平屋よ。海側にリビングとバルコニーをつくって。あなたの書斎もつくってあげるわ」

「…ありがとう」

「門から建物は見えない方が良いから、森をつくりましょう。ちょっとした畑も。小さな離れもステキね。ベルサイユ宮殿のプチ・トリアノンだわ(笑)。そしてね…」

これすべて「もし年末ジャンボで10億円当たったら」という妻の妄想。なんでこんな世迷言に相づちを打ち、しかもお礼まで言わなくてはならないのか。家庭の平和のため? それとも万々々が一、ホントになっちゃったときの保険?

ともあれ、12月31日当せん番号の発表をもって彼女が静かになったことは、言うまでもありません。

そんな子どもっぽい「夢」とは全然違いますが、ちょっぴり新年らしく。
「皆さんはビジョンを持っていますか?」

十字フレーム
十字フレーム

急にそんなことを言い出すと、なんかアヤシイ響きですよね(笑)。でも経営学者のジム・コリンズが「単なるカネもうけを超えた基本的価値観と目的意識」とか「現実的な理想主義」と定義したビジョン。これによって同じ産業でも企業によって行動に個性が表れるように、個人の進むべき道を明らかにするときにも目指すべき「理想」を言葉で表現することに意味がありそうです。

ぼくの場合、それは「アイディアが、世界に誇る日本の輸出産業となる日がくる」という思い。先輩の杉山恒太郎さんがお話しくださって以来、とても大切な行動指針です。

たとえば、「アイデア」を貿易で取引するからには、その商品を正確に定義しなければなりません。しかし広告会社内にもかかわらず、(少なくともぼくの周りで)それが明確にはなっていません。

たとえば、農作物が等級評価を受けるように、アイデアも品質管理をしなければなりません。なんとなく「カンヌで評価されるのが良いアイデア」という雰囲気はありますが、そういう場に登場しない圧倒的多数についてどう評価したら良いのか。いまだ「業界基準」はないようです。

たとえば、産業というからには、製造プロセスだって明らかにする必要があるでしょう。しかしアイデアづくりは「個人芸」だと信じている人が多く、思い浮かぶ一般的な方法論と言えば、70年以上前に『アイデアのつくり方』で紹介されたワラスの四段階説程度です。

たとえば、広告会社の方法論が、本当に他の産業分野で通用するのか、実証する必要もあります。しかし一介の広告屋さんに、経営の根幹に関わるような悩みを相談する奇特な方はなかなかいません。

そういったひとつひとつのテーマから逃げず、何があっても前に進みなさい、と言われている気がするのです。

以前紹介しましたが、世界を席巻する和牛「尾崎牛」の尾崎宗春さんは、師匠・黒木法晴さんから「世界の和牛」というビジョンを受け継いだそうです。後輩にこういった指針を示してくださる方は本当にありがたいもの。杉山恒太郎さんには心から感謝しています。 

おせち
お雑煮

ちなみに。なぜか毎年ご紹介している拙宅のおせち、今年はこんな感じでした。もちろん妻のお雑煮は高松式のあんもち。ぼくはすまし汁。無事に過ごせますように。

どうぞ、召し上がれ!