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地味な野沢菜

ろーかる・ぐるぐる №98

  • 山田 壮夫

2016/12/22

地味な野沢菜

世界で一番クリスマスシーズンが長いのは、どこの国だと思いますか? 「世界一」表記をするほど確固たるデータはありませんが、フィリピンはかなりの長さです。9月になると酷暑の街にクリスマスソングが鳴り響くくらいなので。

ソーセージとマシュマロ串(意外に“アリ”)

ソーセージとマシュマロ串(意外に“アリ”)

これがエスカベッチェ
これがエスカベッチェ

ぼくは新入社員のときから「JFCネットワーク」というフィリピン人女性と日本人男性の間に生まれた子ども(JFC)を支援するNPOに所属しています。この団体でも、何より大切な年中行事がクリスマス・パーティー。JFCとその家族、ボランティアなど総勢100人以上が集まります。そしてこの会で何より魅力的なのが(以前にもご紹介しましたが)本場のフィリピン料理。フィリピンのパーティーに欠かせない「ソーセージのマシュマロ串」などの中で、今年一番目立っていたのは「エスカベッチェ」。白身魚を揚げて野菜たっぷりの甘酢かけで仕上げた一品です。伝統料理には心を温める不思議なチカラがあるようです。

地味な野沢菜ポスター1
地味な野沢菜ポスター3
地味な野沢菜ポスター2
地味な野沢菜ポスター4

さて、今回も引き続き明治42年創業の老舗漬物店・木の花屋さん(長野)との商品開発について。よんななクラブを含めたチームでじっくり議論を重ね、この年末にようやく「地味な漬物」ブランドをスタートすることができました。

自ら「地味」と名乗るなんて、ちょっとおかしなネーミングですよね(笑)。

このブランドを支えるのは、たとえば「地味な野沢菜」。「聖高原の自社農場で社員自ら育てた無農薬の野沢菜を使用した野沢菜漬。昆布を使った昔ながらの素朴な味わいが自慢です。漬けたての新鮮なおいしさから熟成が進んだ深い味まで、味わいの変化を楽しめます」というのが売り文句です。パックの中でまだ菌が生きているので、常温で放置すると袋の中にガスが充満して破裂する恐れがある、いわば本当の漬物です。

あるいは「戸隠大根味噌漬」なら「普段目にする大根より小ぶりでパリッとした質感と緻密な肉質が特徴の戸隠大根。戸隠おろしと呼ばれて育てられているその大根を、塩に預けて保存し、信州産の米と大豆でつくった信州味噌で味噌漬にしました」。

どうですか? 興味を持っていただけるでしょうか?

このほかにも「地味な赤かぶ漬」「地味な沢庵」あるいは「村山早生ごぼう味噌漬け」などなど。「信州の伝統野菜」に認定された品種を中心とする「地」の食材を、保存料や着色料を使用しない、昔ながら「地」に伝わる伝統的な技法で手を加えたメニューの数々です。ずらっと並べてみると全体に茶色っぽくて、文字通り「地味」。でも、みんなが華やかさを競う見栄っ張りな時代に、こういうスタイルって実は価値があるんじゃないか? かえってぜいたくなんじゃないか? という気持ちで名づけました。

「地味な漬物」というのはメンバー全員で進むべき方向を共有するサーチライト(コンセプト)でもありました。こう名乗るからには信州の、特に木の花屋さんがある北信地方の文化を研究しなければなりません。そしてこの地に暮らす従業員の方々ひとりひとりが情報の宝庫でした。どんな商品が「地の味」にふさわしいか、全員参加で議論をしました。

 パッケージやポスターもしかりです。電通からは戦略プランナーの奥村誠浩さん、コピーライターの可児なつみさん、アートディレクターの齊藤智法さんが参加してくれましたが、仕上がったポスターも、リーフレットもまさに「地味」。しかしパッケージにあしらわれた山々の稜線が実際に木の花屋本店から見渡せる信州の景色だったり、「ごはんはひかり、わたしはかげ」というコピーが知的で誠実だったり、西部裕介さんの写真とともに、ひとつの世界が出来あがりつつあります。

野沢菜

いまはやりの「サラダ仕立て」ではありませんし、「ゲランドの塩」を使っているわけでもありません。通年安定して商品をご用意することすら難しい品物です。それでも贈りものに、ご自宅用に。ちょっと魅力があるものに仕上がったと自負しております。

どうぞ、召し上がれ!