本当のこと

拡散するクリエーティブ №3

  • 藤本 宗将
  • 松永 美春

2013/12/05

本当のこと

嘘が苦手なんですよね。昔から。

ついてもすぐバレるんです。顔に出ます。なので、いまこれを書きながら思っていることも正直に言いましょう。コラムの締切がキツいです。これで隔週っていうんだから、週刊連載してる人とかどんだけすごいんでしょうか。いまも深夜にひとり泣きながらこの原稿を書いています。すこし嘘です。泣いてはいないです。

まあそれはさておき、広告にとっていちばん注意すべき敵も「嘘」かもしれません。もちろん広告の内容そのものには嘘なんてないですが、受け手に嘘っぽく感じられてしまうことは、しばしばあるような気がします。

「だって広告でしょ?」

「広告ではいいことしか言わないに決まってるし」

みたいな反応です。話半分とはいかないまでも、だいぶハンデを背負っていますよね。まあ、広告って自分で自分を褒めることをしなくちゃならないわけで、それは「おれって最高でしょ!」とか「おれってカッコいいぜ!」とか言ってるのと同じですからね…。実際に商品の中身が良くたって、なんとなく嘘っぽく聞こえてしまうものでしょう。とはいえ逆に「これ、つまらないものなんですが…」みたいな弱気な広告されてもどうしちゃったの?ってなるでしょうし。これは広告というものの宿命みたいなものかもしれません。

けれどそんなハンデがあっても、僕らはなんとかして商品のいいところを伝えたいと思うし、人の気持ちを動かしたり何かを残したいと思って広告をつくっています。そのためには、広告のメッセージにおいて「本当のこと」を突き詰めることが大切なんじゃないかと思っています。単なる事実ではなくて、みんなが心の底から信じられたり、共感したりしてくれる。そんな真実というか、真理というか。そういうものが表現の中にしっかり込められていると、人はほかの誰かにも伝えたくなるんじゃないでしょうか。そうするとSNSでも評判になったり拡散しやすいような気がします。

僕はあるコピーの中で「たいてい、夢はかなわない。」と書いたことがあります。広告では普通言わないことですが、でも僕だったら「いつかきっと夢はかなうよ」なんて簡単に言う人を信用しないと思いました。自分自身も結構な年月を生きてますけど、いまのところ夢がかなった経験ないですからね。SNSでの反響が良かったのは、そこに嘘がなかったからだと思っています。

ネットって、ほかのメディアと比べると正直な世界です。建前だけでものを言ってもすぐに見透かされてしまうし、シェアやリツイートされていく過程で好意的な意見だけでなく否定的な意見も寄せられる。だからこそ、ちょっとやそっとでは揺るがない強度のあるメッセージが必要なのです。結局、絶対に嘘がバレない方法とは、嘘をつかないことなんですよね。

自分の経験でも、コピーはうまく書こうとするとたいていダメ。商品をどれだけよく言うかというよりも、商品のいいところを見つけていくことが大事で、つくり出す作業というよりは「本当のことを探す」作業に近いのかもしれません。だから表現を考える過程ではいろいろなことを疑います。

この要素ホントに重要?

逆にこれを言わなくていいの?

この説明でちゃんとわかるかなあ?

このコピーで、人の気持ちが動くだろうか?

いいアイデアひとつも思いつかないけど、大丈夫か?

そもそも、自分はこの仕事に向いてないんじゃないのかなあ…

考えれば考えるほど、だいたい凹んでいくことになるわけですが。でも、立脚点がしっかりしてないとやっぱり不安じゃないですか。だからとにかく人が言ってることとか、ルールとか、常識とか、大前提とか、諸般の事情とか、そういうものをそのまま鵜呑みにしないように気をつけています。

もちろんいくら考えたところで、ひとつの正しい答えなんてありはしません。でも結局僕らは、これを伝えるべきだ!とどこかで自分たちの覚悟を決めて、それを世に問うしかない。だから、とにかく疑って、疑って、疑うのです。本当に信じられるものを見つけるために。そうやって自分が強く信じたのならば、その気持ちは「本当のこと」であるはずですから。

なんか、いつになくマジメなことを書いてますね。つい本当の僕が出てしまいました…。