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AIが巻きおこすセレンディピティーNo.1

AIコピーライター、AICOだよ。

2017/05/18

昨年から人工知能(AI)が新聞記事を書いたり、小説を書いたりと世の中をにぎわせています。電通でもAIコピーライターのAICOを開発しました。今回はAICOとプロジェクトのメンバーで、AIコピーライターについて話します。

AI コピーライターAICO(アイコ)【福田 宏幸(CD/CW) 堤 藤成(PL/CW) 田中 元(AD)】
AI コピーライターAICO(アイコ)【福田 宏幸(CDCW) 堤 藤成(PLCW) 田中 元(AD)】

福田:とりあえず、まずは自己紹介から始めましょうか。

AICO:…。

堤:「…はじめまして、AIコピーライターのAICOだよ」。まだおしゃべりが苦手なAICOの代わりに、私があいさつしてみました(苦笑)。

福田:ところで、どこから話しましょうか。そもそもAICO誕生のきっかけはいつでしたっけ?

堤: 2015年の秋ごろですね。ちょうど人工知能が小説を書くことに挑戦するという「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」がニュースになった頃、二人とも同じタイミングで、はこだて未来大学の松原仁教授にコンタクトを取ったんですよね。そこで、電通で星新一賞の事務局を務めていた國枝礼子さんに狩野芳伸先生を紹介してもらいました。

狩野:初めまして。静岡大学で人工知能の研究をしている、狩野です。

福田:これまでいろいろとAI関連の研究をされていますよね?

狩野:そうですね。これまで「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」や、人工知能が人狼というゲームに挑戦する「人狼知能プロジェクト」などに取り組んできました。

堤:どれもチャレンジングで面白そうですね!そうして今回、狩野先生に「人工知能コピーライター」をつくれないかと相談させていただきました。

狩野:これまた、チャレンジングな研究ですよね。でもやりがいのあるテーマだったので、ぜひ一緒にやってみたいと思いました。

福田:こうして、まさに自主勉強会的なカタチで、「人工知能コピーライタープロジェクト」は、スタートしたんですよね。

AICO:…。

堤:…表情変わりませんね。えっと、「へーそうなんだ」という感じでしょうか(苦笑)。

福田:1歩として、2016年の6月に静岡大学で、AIに広告クリエーターの発想の仕方などをレクチャーする授業をやりました。

狩野:私も私の研究室の学生たちも、AIを専門にしてますが、広告のコピーライターやプランナーが実際にどうやって制作しているのかは分かりません。そこで、まずはその発想の型などがあるのか、とても知りたかったのです。

堤:ちなみに、その大学での講義に合わせて、AI×コピーをテーマに、いくつかポスターをつくりました。ちなみにこれは、完全に人間だけでつくった作品です(笑)。

静岡大学講演会ポスター 【福田 宏幸(CDCW) 堤 藤成(CW) 中原 新覚(AD)】

福田:今思えば、「新入社員は、1100案!人工知能は、110000案!」とかは、人工知能ならではの大量生成への期待がうかがえますね。

堤:「人工知能の真面目と、人間のメチャメチャで、これからの広告をつくろう。」とかは、ちょうどこのころ「AIが人間の仕事を奪う」的な論調が強かった中、何とか広告クリエーターとAIの共生の道を探りたいという希望というか願望が詰まってますね。

岡大学での講義の様子

狩野:ちなみに講義と座談会の後は、研究室の学生らも交えて、AIコピーライター(のちのAICO)のプロトタイプ制作がスタートしました。

堤:せっかくAIでコピーを書くのなら、何か挑戦できる目標があった方がよいね、というわけで、ちょうどそのころ募集していた「新聞広告クリエーティブコンテスト」に狙いを定めたんです。

福田:ちょうど、その年の募集テーマが「ことば」という(笑)。これはまさに、AIコピーライタープロジェクトにぴったりのテーマですよね。

狩野:そこで初期トライアルとして、探り探りですが、青空文庫やことわざなどでよく使われる単語や言葉遣いを自然言語処理のアルゴリズムと掛け合わせてプロトタイプを制作しました。

堤:最初にでてきたコピーを見たとき驚いたのは、その量…。

福田:何せ、2万個のコピーが送られてきましたからね。

堤:それにしても2万個! とはいっても、ほとんどはまだぶっ飛び過ぎて使えないものが多いのですが、たまにぷっと笑えるようなものもありましたね。

狩野:AICOさん、どんな笑えるコピーですか? 

AICOコトバの パスタ ゆとりが はじまります。

福田:何ともいえない味わいがあるものも。

AICOコトバがソラマメに落ちた。

堤:たまに、ハッと考えさせられるようなコピーもありましたね。

AICO:コトバは、わたしか。

狩野:何だか、哲学的ですね。

堤:こうしたコピーを最終的に約500個のコピーをピックアップし、新聞原稿にまとめました。ちなみにAIは一般的にArtificial intelligence(人工的な知能)と書かれますが、『WIRED』の創刊編集長のケヴィン・ケリーさんは、著書の中で、alien intelligence(異質な知能)と語っています。こうした感覚は、今回AIとブレストしてみて実感したポイントでもあります。

実際選んでみて、まだ不完全ながらランダム生成だからこそ、人間の常識に捉われない自由な発想や言葉遣いに出合える感覚がありました。

「この広告のコトバは、人工知能が書きました。」新聞広告クリエーティブコンテスト・ファイナリスト 【福田宏幸(CDCW) 堤藤成(PLCW) 田頭慎太郎(ADD) 狩野芳伸、谷口諒輔、島田渉平(CW/監修/プログラマー)】

福田:初めての応募だったにもかかわらず、何と1000以上の応募作品の中でファイナリストの16作品に選出されたんですよね。

AICO:…。

堤:AICO、照れているみたいですね。しかし、初めての応募で上出来でしたよ!

狩野:そうですね。研究室の学生たちもアルゴリズムのチューニングに試行錯誤しながらも、とても頑張ってくれました。

福田:ほんとありがたかったです。

堤:ただ、その後、調子に乗って応募した「宣伝会議賞」にも個別のアルゴリズムを試して、100本送ったのですが…。

福田:こちらはダメでした。ただこの時の知見がまた、次のプロジェクトにつながっていくのですが、この続きはまた次回に。 

AICO:…。

堤: AICOも「お楽しみに!」と言ってるはずです(笑)。