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圧倒的な強さを築くオンリーワン差別化戦略

DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ №67

  • 大木 天馬

2017/05/26

圧倒的な強さを築くオンリーワン差別化戦略

今回取り上げる『圧倒的な強さを築くオンリーワン差別化戦略』(ダイヤモンド社)は、2017年4月の新刊。

著者のウイリアム C. テイラー氏はアメリカのビジネス誌『ファストカンパニー』の共同創刊者です。同誌は毎年「世界で最も革新的な企業ランキング50社」を発表しており、そこにランクインすることは国際的な栄誉となっています。また、著者は元『ハーバード・ビジネス・レビュー』のエディターであり、今も同誌のサイトや『ニューヨーク・タイムズ』に連載を持っています。

そのテイラー氏が、世界中を取材して回り、新しい時代を象徴する成功を収めた15の企業の成功の理由や、それらに共通する特徴について記したのがこの本です。

圧倒的な強さを築くオンリーワン差別化戦略

世界最高の銀行を作る?

一つ目の企業紹介は、イギリスのメトロバンク。2010年に100年ぶりに新規参入したリテールバンクです。「ついに愛される銀行が登場!子どもたちは大はしゃぎ。愛犬も歓迎。ばかげた規則は一切なし」というスローガンはロビーやスクリーンに表示されているとか。

年に休業日はたったの3日、営業時間も平日は12時間、土曜10時間、休日6時間。

新規口座開設にかかる時間は15分以内、スローガン通りペットを連れての来店も歓迎。

ウェブで検索すれば、2010開店当時の報道は日本語でもいくつも見つけることができます。

現在は48店舗、2017年5月には、100万口座に達したとのリリースも発表になり、順調に成長しています。

上に挙げたメトロバンクのコンセプトは、実は新しいものではありません。創業したバーノン・ヒル氏がアメリカで開いたコマースバンクのビジネスモデルをイギリスに横展開したものです。しかし、そのコンセプトを競合はまねしようともしません。

「世界最高の銀行になろう」という目的、並外れた顧客重視の姿勢、そのための細部へのこだわり、熱意あるスタッフの雇用。こういったものがなければ、そこへたどり着くことはできない。

チャレンジャーブランドに共通する四つの戦略の柱「視点」「徹底性」「突出性」「強固な基盤」(P.30)、メトロバンクはそれらを体現しています。

駐車場の設計を世界的建築家に頼んだわけ

もう一つ取り上げたいのは「リンカーン通り1111」という駐車場の事例です。

ご存じない方はアメリカの駐車場と聞いて、どんなものを想像しますか? 汚い? 薄暗い? 想像した後、サイトを見てみて下さい。

http://www.1111lincolnroad.com/

どうでしょう? 恐らく、皆さんが想像したよりはるかにスタイリッシュで美しい建造物ではありませんでしたか?

本書には「建物がオープンすると、ここで結婚式を挙げたいというカップルが殺到した」と書かれており、文字で読むだけではどんな駐車場なんだろうと不思議に思いましたが、これを目にすれば納得です。

ウェブサイトからはバーチャルツアーもできるので、さらなる興味を持った方はそちらもご覧になってください。

設計・デザインは北京オリンピックの「鳥の巣」競技場にも携わった建築家ヘルツォーク&ド・ムーロン。中にはレストランやブティックなど小売店、ドライブスルー(!)の銀行。最上階ではヨガ教室が開かれています。

リンカーン通り1111は不動産開発業者のロバート・ウェネット氏が買収した時にはコンクリート打ちっ放しの地味な駐車場に過ぎなかったのに、最高級の建築が結び付き、結果的には人々の想像を超えたものが生み出されたわけです。そんな大胆な発想のためには「挑発的能力」が必要。優れたジャズミュージシャンが過去の演奏にとらわれず、新たな対応を求められる場面に身を置き、即興を披露するような能力に似たものともいえるかもしれません。

「このプロジェクトが金銭的に大成功を収めているのは、金銭よりもアイデアや魂のこもったストーリーから出発しているからです」(P.86

成功への「8つの質問」

本書中の二つの企業の事例について簡単に紹介しましたが、他の13社についてもその卓越したビジネスへのアプローチ、問題解決法はとても参考になるのはもちろん、紹介した2社についても書中ではもっと多くの示唆に富むエピソードが紹介されています

最終章には「成功への『8つの質問』」が記されています。

  • ①あなたの成功の定義は、競合とは一線を画し、同僚や部下に意欲を持たせられるものか。
  • ②自分たちがやっていることがなぜ重要なのか、どうやって勝とうとしているのかを、説得力のある言葉で明確に説明できるか。
  • ③業界で成功と見なされてきたものを見直し、自社の成功について考える準備はできているか。
  • ④興味を持たれる存在でいるのと同じように、興味を持ち続けることができるか。
  • ⑤技術や効率性と同じように、心や感情にも関心を払っているか。
  • ⑥組織の機能を定義する価値は、価値提案を反映しているか。
  • ⑦貪欲であると同時に、謙虚であるか。
  • ⑧成功を収めるために尽力した人たちと、見返りを分け合う用意があるか。

これらは本書のまとめ。つまりこれら全てについて実例を知ることができる書ということです。いずれも興味深いものばかりで、退屈することなく最後まで読み切ることができる良書です。

なにより、型破りな企業の素晴らしい成功事例は読んでいてワクワクしますよね。是非是非。

電通モダンコミュニケーションラボ

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