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人は内容を見ずにリツイートする。

100万回シェアされるコピー №3

  • 橋口 幸生

2017/06/01

人は内容を見ずにリツイートする。

こんにちは、橋口幸生です。この連載では拙著『100万回シェアされるコピー』の内容を紹介しています。前回は、ウェブでシェアされるコピーは「本音」「驚き」「共感」「反感」の四つに分けられることを解説しました。その中から今回は「驚き」について書きたいと思います。

CMプランナーの高崎卓馬氏は著書の中で、バラエティー番組の出演者は笑う前に必ず驚いていることを指摘しています。人の感情の中で「驚き」は、最もスピードが速いものです。Twitterユーザーの約6割はリンクつきツイートのリンク先を見ないままリツイートしているといわれていますが、このような脊髄反射的な反応が求められるソーシャルメディアに、「驚き」は向いているのだと思います。

※米コロンビア大学と仏国立情報学自動制御研究所の2016年の研究結果より

「驚き」を利用した企画を詳しく見ていくと、2種類に分けられます。

一つは「驚き」の後にネタばらしがあり「そうだったのか!」とカタルシスを味わうことができるものです。どんでん返し系の映画などがこれに当たります。

もう一つはネタばらしやフォローがなく、見た人は「なんだ、これwww」と投げ出されたような気分になる「驚き」です。シュールと形容されるたぐいのコンテンツがこれに当たります。

ここからは前者を「回収型の驚き」、後者を「非回収型の驚き」として分析していきたいと思います。最初は私が担当した事例からです。

驚き(回収型)事例
「世界でいちばん、3Dが似合う女。」(貞子3D/角川書店/2012年)

メガ貞子登場

2012年、日本最恐のホラークイーン貞子が、初の「3D」になって復活しました。誰もが「驚き」を期待して映画館に足を運びます。広告でもストーリーや出演者について説明をするより、お客さんが映画に期待している「驚き」を実際に提供した方が話題になると考えました。ムービーやポスターなど最終アウトプットを決めないまま企画を進めたのですが、一つハッキリと意識していたのは、「写真を撮ってシェアしたくなるもの」ということです。

写真の「メガ貞子」はアートディレクターの田中元氏が描いたラフがアイデアの元になっています。巨大な貞子をクルマで徘徊させれば、見た人が「驚く」ことは間違いありません。写真もシェアしてもらえるでしょう。そこで満足しないで、さらにシェアへのモチベーションを高められないか?という観点で書いたのが

世界でいちばん、3Dが似合う女。

というコピーです。ターゲットの想定リアクションを順序立てて書くと

1)メガ貞子を見る
2)「なんだこれ?」と驚く
3)「世界でいちばん、3Dが似合う女。」というコピーを見る
4)「そうか、貞子3Dの広告だったのか!」と納得する
5)写真を撮って、シェアする

ということになります。シンプルにすると

「驚き」→「回収」→「シェア」

というフローです。

リアクションのフロー01

狙い通りソーシャルメディアではメガ貞子の写真と「世界でいちばん、3Dが似合う女。」というコピーをセットでシェアしてくれる人が大勢現れました。コピーにより訴求ポイントが明確になり、広告としてもより強いものになっていることが分かっていただけると思います。

驚き(非回収型)事例「石田三成CM」

石田三成CM

画像をクリックするとYouTubeで動画が閲覧できます

 

 

一昔前の地方CMのようなチープなノリで、なぜか戦国時代の武将・石田三成が紹介される「滋賀県」のPRムービーです。どこを見ても、なぜ武将を広告しているのか説明が全くありません。「驚き」が回収されていないため、目にした誰もが「なんで石田三成をCMしているんだよwww」とツッコミを入れずにはいられないのです。ツッコミを入れる=シェアなので話題が拡散していきます。

リアクションのフロー02

明確な回収はないもの、石田三成を広告することで必然的に出身地の滋賀県もクローズアップされるため、広告としてもしっかり機能しています(三成ゆかりの観光名所を紹介するサイトも用意されています)。これが「滋賀県が石田三成を広告する」ではなく、「石田三成が滋賀県を広告する」だった場合を想像してみてください。途端に普通の観光キャンペーンになり、インパクトがなくなってしまうと思いませんか。「滋賀県の広告だった」という「回収」に意外性がないので納得もツッコミも生まれず、シェアも期待できません。

「石田三成」という一見不思議な訴求点には、会話が生まれやすいという利点があります。私も歴史ファンなのですが、歴史は誰かに語りたくなる内容です。三成CMのYouTubeのコメント欄は「低評価を押しているのは東軍だろう」のようなコメントがたくさん寄せられていて、これ自体が一つのエンターテインメントとして成立しています。

「会話を生む訴求点」を「非回収型の驚き」で表現する。石田三成CMのシェアされる構造は、このように分析できると思います。

次回はルールその3「共感」についてです。