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ソーシャルメディアは、放課後の教室である。

100万回シェアされるコピー №4

  • 橋口 幸生

2017/06/08

ソーシャルメディアは、放課後の教室である。

ソーシャルメディアは、放課後の教室である。

こんにちは、コピーライターの橋口幸生です。この連載では拙著『100万回シェアされるコピー』の内容を紹介しています。ウェブでシェアされるコピーは、「本音」「驚き」「共感」「反感」の四つに分類できます。その中から今回は「共感」について書きたいと思います。

ソーシャルメディアとは何か? さまざまな解釈がありますが、私は「放課後の教室」に例えられると思っています。掲示板やブログなどに対してソーシャルメディアが新しかった点は、文章を書かなくても、いいね!やシェアで気軽に発信できることです。その中では、放課後の教室のように、気軽な雑談が交わされていることが多いと思います。

では、放課後の教室での雑談を盛り上げるのは何か? それは「共感」です。相手に対して「あるある!」と共感したとき、会話は最も弾みます。

この連載で紹介している「四つのルール」のうち、コピーライターが最も得意なのが「共感」だと思います。コピーライターとは文章を書く以前に「共感」を発見する仕事です。少し詳しく書くと「みんなが潜在的に思っていることを、顕在化する」ということです。

「言われてみれば、そういうことってあるよね!」と共感できるコピーは、多くの人にシェアされます。具体例として、爆発的なバズをつくり出した1枚のポスターをご紹介します。

「ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん。」
「ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん。」
(慶早戦/2015年)

東京六大学野球の中でも、慶應義塾大学と早稲田大学の対決は注目度が高いカードです。しかし「ハンカチ王子」ブームをピークに、観客動員数は減少していました。会場の盛り上がりを取り戻すべく、電通のコピーライターであり、慶應義塾大学応援指導部OBでもある近藤雄介氏が制作したのが、このポスターです。

近藤氏は現役の学生たちにヒアリングを重ねる中で、「現在の慶應と早稲田の学生はライバル意識が低い」という課題を発見しました。学生やOB/OGに向けて、慶早戦は野球だけの戦いではなく、お互いのプライドをかけた応援合戦であることを伝えたい。心のどこかに眠っている愛校心をくすぐりたい。そう考えた近藤氏は、ライバルをリスペクトしつつ挑発するコピーを書きました。

「ビリギャル」「ハンカチ」という、それぞれの校風をうまく捉えたワーディングが共感を誘います。ポスターで利用されているのは「愛校心への共感」であり、「所属する共同体への共感」です。ここに「ライバル関係への共感」がプラスされることで、コピーとしてより強いものになっています。大学野球に興味があるのは、コアな野球ファンに限られます。一方、所属やライバル関係にまつわる感情は、誰もが共感できるのです。

ポスターのロゴをよく見ると、慶應用は「慶早戦」、早稲田用は「早慶戦」となっています。慶應大学では慶應vs早稲田は「慶早戦」と呼ばれていて、決して「早慶戦」ではないのです。ちなみに私も慶應出身なので、この記事での表記は「慶早戦」で統一しています(笑)。

ポスターを紹介したつぶやきは2万7000リツイートを超える反響があり、テレビや新聞にも取り上げられました。反響を知った大学の同窓生から寄付が集まり、試合当日の球場でのポスター掲出も実現。記念撮影をする人たちが続出しました。結果、この年の慶早戦は2日間で6万人以上の観客を集めることに成功しています。

この事例では、パーソナルな「共感」から大人数のリアルな盛り上がりをつくることに成功しています。しかし「共感コピー」にできることは、それだけではありません。シェア=刹那的なバズと誤解されがちですが、長い時間をかけてブランドのストーリーを紡ぐこともできるのです。こちらの方法論については拙著『100万回シェアされるコピー』で詳しく解説しています。興味のある方はご一読ください。

次回はルールその4「反感」を取り上げます。