100万回シェアされるコピーNo.5
シェアされるコピーを書くための、
四つのルール。
2017/06/15
こんにちは、コピーライターの橋口幸生です。この連載では拙著『100万回シェアされるコピー』の内容を紹介しています。ウェブでシェアされるコピーは、「本音」「驚き」「共感」「反感」の四つに分類できます。その中から今回は「反感」について書きたいと思います。また、最後には四つのルール全てをまとめて紹介します。
前回の記事では、潜在的感情の顕在化が「共感」だと解説しました。「あるある」と思わず膝を打ってしまう、あの感覚です。しかし「共感」の中にはそう素直に喜べないものもあります。
例えば子どものころ親に「早く宿題しなさい」と叱られて、思わず「今やろうとしてたんだよ!」と言い返したことはないですか。そろそろ宿題やらなくちゃ…とうすうす気付いていたところに上から目線で指摘されると、反感を覚えてムッとしてしまいますよね。そして翌日、学校で友達と「ウチの親がうるさくてさ…」と話し、共感し合う。共感と反感は逆ではなく、同じ感情の表裏なのです。
「けしからん!みんな、これを見てくれ!」と猛烈な勢いで周りに教える。これが今回、解説する第4のルール「反感」です。今最もこの手法に長けているのは、人気ブロガーといわれている人たちだと思います。実際に人気ブロガーを起用した事例をもとに、解説していきます。
「こんな男は絶対モテる! by はあちゅう」(くまクロ/SCRAP/2015年)
ブロガー・作家のはあちゅうさんは、賛否両論を巻き起こすことで数々のバズを起こしてきました。彼女に出演してもらって作ったウェブサイトが「こんな男は絶対モテる!」※です。Facebookのプロフィールを読み込んで、自分がいかにモテるかをはあちゅうさんが絶賛する、架空のインタビュー記事をジェネレートできます。例えば、こんな感じです(ぜひアクセスして体験してみてください)。
※http://mote.kumakuro.jp/
…と言った具合に「住所」「名前」などあらゆるプロフィール情報にこじつけて、はあちゅうさんがベタボメしてくれます(女性がアクセスした場合は、「こんな女は絶対モテる!」になります)。
東京23区47都道府県全ての違うコピーが設定されていることもあり、計算上は13万パターンのインタビューがジェネレートされます。公開後、初日に15万PV、4日間で27万PVを記録しました。
インタビューの最後は「一番モテるのは、クロスワードRPG“くまクロ”で遊んでいる人」という結論になり、アプリの広告だったことが明らかになります。
シェアされることを狙う場合、広告の訴求ポイントを単純に「商品の良い所」ではなく、「商品の良い所のうち、会話が生まれやすい所」という観点で選ぶ必要があると思います。
連載「100万回シェアされるコピー」はこれが最終回です。今まで紹介してきたウェブコピーの「四つのルール」をまとめたいと思います。
ルール1「本音」
ソーシャルメディアは背伸びリア充空間。だから本音が目立つ。
事例:プリッツ「つらい」
ルール2「驚き」
驚き→回収→シェア
事例:貞子3D「世界でいちばん、3Dが似合う女。」
驚き→非回収→つっこみ(シェア)
事例:石田三成CM
ルール3「共感」
ソーシャルメディアは放課後の教室。
パーソナルな共感が、大きなバズにつながる。
事例:慶早戦ポスター
ルール4「反感」
共感と反感は、同じ感情の表裏である。
事例:こんな男は絶対モテる!byはあちゅう
企画会議やプレゼンで、「どうやったらバズを生み出せるのか?」という議論になることがあります。そんなとき、やってしまいがちなのが「アイデアの長所と短所を、それぞれ検証する」という誤りです。こうした議論は結局、各人の好き嫌いに終始しがちです。バズが目的なら、「長所や短所」といった漠然としたものではなく、「バズるかどうか?」という観点でアイデアを評価するべきなのです。この連載で取り上げた四つのルール以外にも、人によってさまざまな評価軸があると思います。どんな場合にせよ、「『好き嫌い』ではなく『ルール』で判断する」という姿勢は、コピーライターはもちろん企画に関わる全ての人に求められるのでないでしょうか。
書籍『100万回シェアされるコピー』では、この連載では取り上げていないさまざまな事例分析に加え、「炎上」を防ぐためのポイントについても触れています。興味のある方は、ぜひご高覧ください。
全5回の連載にお付き合いいただき、ありがとうございました!