Viibarと電通が「デジタル動画」で実現したい二つのこと
2017/06/23
電通と電通デジタルは4月20日、Viibar(ビーバー)との資本業務提携を発表しました。
この提携で私たちが実現したいことは、大きく下記の二つです。
今回はこの提携の背景となった日本のデジタル動画制作の課題点と、具体的な提携の内容についてお話しします。
急激に進むデジタル動画時代、多様化する制作需要にどう応える?
デジタル動画の市場は急激な伸びを示し続けています。広告市場だけを見ても、2014年に290億円だったデジタル動画広告費の市場規模が、2017年には1224億円に達すると見込まれています。
しかも、さらに広く「動画の企画・制作」という視点から見ると、動画への企業のニーズ、マーケティングへの活用は「広告」にとどまりません。以下の図に見るように、デジタル動画はあらゆるメディア、あらゆる場面で必要とされており、今後のマーケティングにいっそう欠かせないものになっていくでしょう。
これらは、一口に「デジタル動画」といってもそれぞれ狙いや使われ方が違うため、戦略も企画の仕方も、スケジュールやコストも異なります。制作のプロセスも、「撮影の後に編集する」といった大きな流れは同じですが、例えば「どこまで撮影プランを詰めて撮影に臨むか」など、現場での仕事の進め方や役割分担は少しずつ違っていたりします。
こうした時代になると、企画制作を行う供給サイドにも多様なノウハウが求められます。特にサイクルの速いデジタル広告上では、「短期間かつ低予算で量産するタイプの動画」や、「公開後も次々とPDCAサイクルを回すタイプの動画」など、従来はなかったタイプへの需要が高まっており、マーケットの大きな割合を占めつつあります。
多様化するクライアントニーズ。効率的な制作体制をつくりたい
電通グループは、これまでのキャンペーン企画・制作で培ってきたマーケティングコミュニケーションのノウハウに加えて、こうした「デジタル動画特有の課題設定、企画、制作プロセスの実現」をさらに強化したいと考えています。
今回提携することになったViibar(http://viibar.com/)は今、最も勢いのあるデジタル動画制作会社です。「動画の世界を変える。動画で世界を変える。」をミッションに、全世界で3000人超のプロクリエーターネットワークを活用し、クライアント約600社のデジタル動画マーケティングを支援しています。日本のデジタル動画市場をけん引してきた同社には、まさに今必要とされている「デジタル動画特有の領域」の強みがあります。
Viibarの登録クリエーターは、プロフェッショナルとしてさまざまな現場で活躍していた方ばかり。しかも、企画から撮影、編集に至るまでマルチスキルのクリエーターがほとんどです。彼らの中から課題やコストなどに合わせて最も適切な人、またはミニマムのチームを選定し、企画段階からViibar所属のプロデューサーと共に動きます。演出プランを含む企画の決定、撮影、編集など、完成までの全工程で、機動的かつ細やかにバックアップする体制が確立されています。
そんなViibarと組むことで、企業のマーケティング課題を見据えながら「一度にたくさん動画をつくりたい」「A/Bテストを繰り返していきたい」といった要望にも応えられる制作体制を整備し、テレビCMとは違う、人の気持ちのつかみ方のノウハウを学び、デジタル動画の多様なクライアントニーズを満たせる仕組みをつくり上げたいというのが、今回の提携の大きな狙いです。
と同時に、ただ動画をつくって終わりではなくて、「どんな動画をつくれば企業が目指す成果につながっていくのか」という科学的な知見をきちんとためていきたい、という狙いもあります。
さらに、もう一つ裏の目的として、デジタル動画のニーズが爆発的に増加しつつある中で、もともと手間がかかり、非効率的になりがちだった動画制作作業を、なんとか持続可能な仕組みに変えていきたいという両者の思いもありました。
では、冒頭の二つの目標を実現するための、具体的な提携内容を見ていきましょう。
多くの制作現場に共通する課題を解決するべく、今後電通グループ内への浸透を目指しているのが、Viibarが開発した「Vync」(ヴィンク)です。
Vyncは、クラウド上で動作するツールです。動画、画像、音声といった素材をはじめ、企画書や絵コンテ、美術や撮影プランなど、企画制作に関わるあらゆる情報、素材のデータを保存し、チームで共有できます。
チーム内でのスケジュール管理、情報交換、確認や相談、修正指示なども一括して行えるため、メンバー間のコミュニケーションがスムーズになります。
そうして動画制作の工程の大部分をクラウド上で共有・完結することで、業務効率を大幅に向上させることができます。
Vyncには、動画制作特有の作業を熟知したViibarならではの機能が搭載されています。例えば動画の修正に当たって、動画そのものに「赤字」を入れられます。つまり「必要なコマの必要な位置に必要な指示を直接書き入れる」ことができるのです。
さらに電通の制作現場からの声もフィードバックして、クリックや遷移などのひと手間をできるだけ省くなど機能を磨き上げられており、どんどん使いやすいツールに進化しています。
また、クリエーティブブリーフから企画、制作のプロセスが全てツール内にストックされていくので、成果に対する企画詳細の分析や、企画・制作プロセスの改善に役立てていくこともできます。
ツールの導入と並んで開始したのが、Viibarと電通、電通デジタルの人間が共にデジタル動画制作の課題に取り組むという、人材面での協業です。
「デジタル動画」という手段は先述のように、広告だけでなく、コンテンツやPRなども含む広い領域において、マーケティングファネルの上部から下部まで活用できます。マーケティング活動のさまざまな局面で、多種多様な動画の戦略・企画・制作を、電通、電通デジタル、Viibarの共同チームで実施していくというのが現在の構想です。
具体的には、電通デジタル社内に専用デスクを設けました。Viibar所属のプロデューサー、プランナーが、広告も広告以外も区別なく、デジタル動画に関わる案件に参加していきます。それぞれが違った強みを持つことを生かして「一緒に取り組む」ことで、最適なソリューションにしていこうとしています。
チーム編成においても、制作のプロセスにおいても、さらにはコストとクオリティーの見極めやPDCAの設計においても、案件ごとに、そのときどきの課題を解決していくのにふさわしいプランをフレキシブルに提供していきたいと考えています。
ますます動画が注目される時代に、「電通が培ってきたマーケティングコミュニケーションのプランニング力」から生まれる企画と、「Viibarが持つデジタル動画ならではの経験値」から生まれる企画を掛け合わせ、さらに新しい効率的な制作プロセスを加えることで、マーケティング課題の解決に挑戦していきます。ぜひご期待ください。
次回はViibar上坂優太代表に、デジタル動画への思いと、本提携へのViibarサイドの狙いを伺います。