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Viibarと探るデジタル動画の時代No.2

Viibar×電通対談:
「多様な課題」に「多様なデジタル動画」で応えていくために

2017/08/03

この春、電通と電通デジタルは、デジタル動画マーケティング会社のViibarと資本業務提携を発表しました。今回の提携にはどのような狙いがあり、どのようなシナジーを目指しているのでしょうか。Viibarの上坂優太代表と、電通デジタルの郡司晶子執行役員が語り合いました。

Viibar×電通対談 Viibar上坂優太代表(右)と電通デジタル郡司晶子執行役員(左)

デジタル動画のノウハウ×課題解決のノウハウ

郡司:前回のコラムでは、本提携についての「電通サイドの思い」を書かせていただきました。今回は私がインタビュアーとなって「Viibarサイドの思い」についても聞きつつ、Viibarと電通がデジタル動画マーケティングというソリューションに何をもたらそうとしているのか、伝えられればと思います。

上坂:よろしくお願いします。まず、改めてViibarという会社の成り立ちを説明しますと、私はもともと映像制作会社でディレクターを経験した後、楽天でマーケターに転身し、制作側と発注側の両面から映像業界に関わってきました。
そのキャリアの中で世の中に「デジタル動画」への需要がどんどん高まっていることを実感する一方、制作現場の効率性や合理性などに改善の余地があると感じていたんですね。それを新しいビジネスモデルで解決したいと思い、2013年にViibarを立ち上げました。

郡司:私はViibarが誕生して間もないころにその存在を知って、それからずっと気になっていたんです。当時はデジタル動画のニーズが高まり始めていた時期でもあったので、「一体どんな人がやってるんだろう?」と(笑)。いつかどこかで仕事をしたいな、会いたいなと思っていました。

上坂:ありがとうございます(笑)。Viibarでは、まず「動画をつくりたいクライアントに最適なクリエーターをマッチングし、クラウド上で制作管理もできるサービス」を開発しました。これにより、高品質な動画をスピーディーに提供できるようになると同時に、制作過程で発生するやりとりをシンプル化できたことで、クライアントとクリエーター双方の負荷軽減につながりました。

郡司:スピード感や現場の負荷軽減は、デジタル動画制作の大きな課題ですからね。ちなみに、私がViibarを知ったのは、「元楽天の方がデジタル動画のクラウドソーシングを始めた」というニュース記事を読んだのがきっかけでした。

上坂:あ、それってけっこう「あおってる」系の記事じゃなかったですか?(笑)とはいえ、動画領域においては単純なクラウドソーシングというだけでは付加価値が限られると考え、さらにサービスを発展させてきました。Viibarのサービスの一番の特徴は、ただ動画をつくって納品するだけでなく、企画段階から当社所属のプランナーやプロデューサーが伴走し、動画配信後の成果などにもしっかりとコミットする点。つまり、「デジタル動画」ではなく「デジタル動画を軸としたマーケティングソリューション」を提供できるところにあると思っています。

Viibar 上坂優太代表

郡司:そう、ただ動画のクオリティーが高いだけでなく、「クライアントのビジネスを良くしていくためのデジタル動画」の提案までできるところがViibarの魅力ですよね。そんなViibarが今回電通グループと組むことになったわけですが、この提携がスタートするまでは毎週定例会を重ねて、お互いを理解するために十分な時間をかけてきましたよね。

上坂:やりましたね!「われわれが組むことで、どういう強みを出していけるのか」という一番大きなテーマはもちろんのこと、お互いの制作体制やコスト感、スケジュール感、あるいは用語の使い方ひとつとっても「同じ意味で使ってますか?」という確認を、地味に積み重ねてきましたね。

郡司:今回はとにかく、「一緒につくっていくんだ」ということが大事だと思っていて、だから「提携」という形にこだわったんですよね。その一緒に組むということのための準備段階が大事だということで、とにかく時間をかけました。

上坂:ひたすら、お互いの常識を丁寧にすり合わせて…あの定例会だけでも得るものは大きかったですよ。今回Viibarが電通と組みたいと思った最大の理由は、先ほどお話しした「マーケティングソリューション」としての機能を強化したいと思ったからです。
まだまだ「デジタルはマーケティングファネルの下流で使うもの」「ファネルの上流に当たる認知・関心といったフェーズはマス広告で」という役割分担で考えているクライアントも多いです。しかしViibarが成長していく中で「デジタル動画でクライアントの課題を解決する」というミッションを突き詰めていくと、「動画制作だけではソリューションとして完結しないよね」「どのようにマスと連動しようか」という話が当然出てきました。
つまり、Viibarではファネルの下流をピンポイントで請け負うのではなく、上流から下流までをフォローすることを強化していきたいんです。

郡司:「動画制作だけ」を単体で考えるというのはかえって難しいですよね。マスとの連動もそうですが、デジタルマーケティング自体もファネルの全てがシームレスにつながっていて、たまたまその中で「ここは動画を使いたい」ということが起きるから、特にデジタルの領域では「動画だけをつくる」とか、「企画だけをする」というように切り出したつくり方が難しいと思います。

上坂:その点、電通はまさにファネルの上流から下流まで全てのフェーズをカバーしている会社です。あらゆる局面における「課題解決」の手段とノウハウを圧倒的に持っているので、自分たちだけで解決するよりも、一緒に組んだときのインパクトが大きいのではないかと考えました。

郡司:ありがとうございます。デジタル動画へのニーズは広告にとどまらず、あらゆるシーンに拡大していますが、それに伴い戦略や企画の方向性、スケジュール感やコスト感に至るまで、「動画制作に必要とされること」も多様化していますよね。私たちとしても、日本のデジタル動画市場をけん引してきたViibarと一緒に、多様化していくデジタル動画のニーズにマッチした新しい制作ノウハウ、マーケティングノウハウを構築していきたいと考えています。

制作管理ツールの導入は、業務効率化だけでなくクリエーティブの洗練にも寄与する

郡司:本提携における具体的な取り組みの一つとして、Viibarのプロデューサーが電通デジタルに常駐し、人材面での協働がスタートしています。これからどんどんいろんな仕事を一緒にやっていくことで、お互いにノウハウをフィードバックし合えればと思っていますが、上坂さんから見て、今のところの手応えはいかがでしょうか。

上坂:そうですね、電通と組み始めて思うのは、おこがましい表現ですが、電通グループはとにかく人材の厚みがハンパないんです。ノウハウもそうなんですが、ものすごく優秀な方がこんなにたくさんいるのかと。だからこそ、まだまだ大きな可能性があると感じていますね。

郡司:そしてもう一つ、電通グループへの浸透を目指しているのが、Viibarが開発したクラウドベースの動画制作管理ツール「Vync(ヴィンク)」です。これはもともと、社内用のツールとして開発されたんですよね?

上坂:そうです。Viibarに登録しているクリエーターは地方や海外にいらっしゃる方も多いので、そういう遠方の方とも効率良く、ストレスなく仕事ができる環境を提供するためにつくりました。

Vync上で動画素材をプレビュー
Vync上で静止画素材をプレビュー
Viibarが開発したクラウド型制作管理ツール「Vync」。動画、静止画などの素材に直接“赤字”を入れることができる


郡司:トライアル的に、Vyncを電通グループ向けに提供してもらったところ、実務で使った社内のクリエーターから「これはすごいね」といった反響が相次ぎました。動画制作の工程で発生する情報のやりとりやメンバー間のコミュニケーションをクラウド上で共有・完結できるので、業務効率化につながるのはもちろん、制作のあらゆるプロセスがツール内にストックされていくのが大きいですね。成果に対する振り返りに活用したり、制作プロセスの改善に役立てたりなどもできると思うんです。

上坂:これまでは、一つのプロジェクト資産が個々人のローカルに分散していることも多かったですからね。Vyncには動画や音声といった素材だけではなく、企画書や絵コンテ、制作過程のやりとりや修正の経緯まで、あらゆるものが案件ごとに一箇所に蓄積されていきます。これにより、「過去のプロジェクト」にいつでもすぐにアクセスできるようになります。振り返りも可能になりますし、ゆくゆくは、ストックされた情報を活用したアイデア出しにつなげられたりと、“ストックとアウトプットの好循環”を生み出していけたら素晴らしいと思っています。 
ツール自体も電通の制作現場からのフィードバックを受けてどんどん改善していますから、動画に限らずさまざまなクリエーティブの現場でVyncを使ってもらい、制作管理ツールのスタンダードを目指したいと思っています。

Vync上でのやりとり
「Vync」では制作上のやりとりを記録できるので、業務効率が飛躍的に向上する

お互いの強みを生かしてデジタル動画時代の新たな指標や解決策を構築していく

電通デジタル 郡司晶子氏

郡司:先ほど上坂さんもおっしゃっていましたが、「デジタル動画」という手段は今や広告だけでなく、コンテンツやPRなども含めた幅広い領域において活用できるものになりつつありますよね。動画を載せるメディアも、動画を使う目的も多様化しています。
つまり、「多様化するデジタル動画のニーズに対して多様なソリューションを提供する」ということが、今回の提携で目指す最重要ミッションだと思っています。そのために、電通とViibarそれぞれの強みを生かして、新しいソリューションもどんどんつくっていきたいです。

上坂:それはやっていきたいですね。Viibarの目指すところである「ファネルの上流と下流をデジタル動画でつなぐ」「マスとデジタルの協働」という観点でいえば、デジタル動画を他のキャンペーンと組み合わせたり、テレビCMと組み合わせたりしたときに、どのような成果を生み出せるのかということも、ぜひ一緒に考えていきたいと思っています。

郡司:デジタルの特性を生かして、素材を入れ替えたら世の中はどのように反応するのかをA/Bテストで検証したり、商品カットを10パターンつくって出し分けたときの反応を調べたり。Vyncを使ったデジタル動画制作ではあらゆるデータが蓄積されるからこそ、より「クリエーティブを科学する」動きも考えられるのではないでしょうか。

上坂:やはり、細かく「効果検証」ができるのはデジタルの強みですから。そこは電通とも力を合わせて、これからより強化していきたい部分ですね。

郡司:あとはデータの蓄積と分析によって「個人のアイデア」に頼るだけでない、シンプルなロジックを構築していきたいということも考えています。もちろん人の心を動かすのはロジックではなく、個人のアイデアや感覚なのですが、ただそこに至るまでのロジックをちゃんと整備することも必要です。まずロジックがあり、その上にアイデアや感覚が乗っかる形を、デジタルならつくれると思うので。

上坂:デジタル動画は、配信先、視聴するデバイス等の組み合わせで最適なフォーマットも変わります。視聴者のニーズも非常に多様化してきていますし、やることは山積みですね。

郡司:マーケティングコミュニケーション課題を解決するノウハウが電通グループ、さまざまなタイプのデジタル動画の企画制作のノウハウがViibar。それぞれ違った強みを持ち寄って一緒に取り組むことで、最適なソリューションをクライアントに提供していきたいですね。

上坂:そうですね。クライアントの「デジタル動画でマーケティング課題を解決したい」というニーズが増えて、確実にマーケットが拡大している中で、今回の提携をきっかけに電通グループの中からも「デジタル動画をやってみたい」「Vyncを使ってみたい」といった声がどんどん増えるといいと思っています。そして、皆さんの知見やノウハウを持ち寄って、デジタル動画マーケティングのソリューションによる価値創出を更に強化していければと思います。

Viibar上坂代表、電通デジタル郡司執行役員