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所有から利用へ。 「サブスクリプション」型モデルでビジネスを変革!

「モノを売る時代」から「サブスクリプションの時代」へ! №1

  • 横山 勝

2017/07/28

所有から利用へ。
「サブスクリプション」型モデルでビジネスを変革!

サブスクリプション型ビジネスモデル

自動車、洋服など「リアル」プロダクトにサブスクリプション化の波

電通と電通デジタルは、「サブスクリプション型プラットフォーム」を企業に提供するZuora Japan(ズオラ・ジャパン)と業務提携し、サブスクリプション型ビジネスを通じて企業の事業やマーケティング変革を支援するサービスを開始しました。

電通と電通デジタル、サブスクリプション型ビジネス支援でZuora Japanと業務提携
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0518-009293.html

「サブスクリプション型ビジネス」とは、いわば継続課金型のビジネスモデルのことです。ソフトウエアや音楽、動画などデジタル系のサービスではもう当たり前となっているので、誰でも言葉としては聞いたことがあるでしょう。

現在、このサブスクリプション型モデルが人々の購買行動に転換をもたらそうとしています。自動車、洋服、コスメ、シェーバーなど「非デジタル」なプロダクトにもこのモデルが取り入れられるようになってきたのです。

典型的なサブスクリプション型サービスの料金プラン選択画面
典型的なサブスクリプション型サービスの料金プラン選択画面

従来から慣れ親しんだ大量生産型モデルが、デジタルトランスフォーメーションの波を受けて、大きく変わろうとしています。

これは消費者視点で見れば、モノを“所有”するのではなく、必要に応じて“利用”する消費スタイルへの転換です。ZuoraのCEOティエン・ツォ氏は、こうした世界的な変化を「サブスクリプション・エコノミーの幕開け」と表現しています。

サブスクリプション・エコノミーの幕開け

筆者は、電通ビジネス・クリエーション・センターで新規サービスや新規ビジネスの開発を担当しています。その一環として電通デジタルと共に、サブスクリプション型ビジネスのコンサルティングを行ったり、Zuoraの提供するサービスについても全般の導入支援を担当しています。

このコラムでは、その特徴を紹介しつつ、サブスクリプション・エコノミー時代のマーケティングを探っていきます。

サブスクリプション型に移行したことでアドビが得たものは?

代表的なサブスクリプション型ビジネスモデルとして、例えば2015年に始まったAppleによる音楽配信サービス「Apple Music」が挙げられます。定額制の音楽聴き放題サービスで、数百万曲の楽曲を自由に聴いたり、気に入ったらダウンロードして自分のライブラリーに追加して持ち歩くこともできます。

また、動画配信サービスにおいてもHulu、Netflix、Amazon プライム・ビデオをはじめ、定額制で映画やドラマなどの映像コンテンツが見放題というサービスが次々と国内参入してきたことで、日本でも身近なものに感じられる機会が多くなってきていると思います。

音楽や動画を楽しむに当たっては、従来はCDやDVDといった“モノ”を購入する消費スタイルが常識的でした。それが近年になって、定額課金の契約をすることで好きなだけ聴いたり見たりできる、いわば“体験”を手に入れられる消費スタイルが普及しました。そうした中で、生活者側の価値観にもシフトが起きていると考えられます。

では、サブスクリプション型モデルに移行すると、ビジネスはどう変わるのでしょうか。

ソフトウエア大手のアドビシステムズは、2012年夏からソフトウエアの販売方式をプロダクト販売型からサブスクリプション型へと変更しました。月々一定の金額を支払えば利用できる方式へと変更したのです。

ウェブ制作や映像制作のプロに利用されることが多い同社の決断は、業界の誰もが驚く改革でしたが、結果として、従来獲得することが難しかった新規顧客の増加、そして全体的な収益化にも貢献し、業績向上に寄与することとなりました。

 

図1:2008~16年度のデジタルメディア分野の年間経常収益(アドビシステムズ)

図1:2008~16年度のデジタルメディア分野の年間経常収益
アドビシステムズにおけるサブスクリプション型モデルとプロダクト販売型モデルの収益の変動。同社IRサイトの決算資料の数値を基に筆者が作成

具体的には、高価なソフトウエアを購入するのではなく月額料金で利用できることにより、トライアル機会を増やすなどの形で間口を広げることができました。また、同時にクラウドでのサービス提供によって顧客の正確な利用状況を把握できるようになったため、適切なタイミングでアップグレードを促すことも可能になりました。

プロダクトを売り切って終わるビジネスモデルではできなかったような、顧客満足度向上を実現できたのです。図1は、同社のデジタルメディア分野における年間経常収益の変遷です。プロダクト販売型のビジネスだった頃から比べて、大きく改善しているのが見て取れます。

Zuoraの資料によれば、この当時アドビのデジタルメディア担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーだったデイビッド・ワドワーニ氏は「われわれは箱に入ったソフトにこだわり、箱の外のことがまったく見えていなかった」という趣旨の発言をされているそうです。

プロダクト販売型とサブスクリプション型の違い
(Zuoraの資料より)

アドビの事業転換に代表されるように、従来からある“モノ”を売ることから、自社ができることを再定義し、自ら顧客との関係性を深め、顧客体験を高める方向へとシフトすることにより、つまり“モノ”を売らないことにより成功を収める会社が増え始めています。

“所有”するのではなく、自分のニーズに合った“利用”を求める生活者の変化に対し、プロダクト販売型の企業はどのように対応したらよいでしょうか?

“Always on”で変化するマーケティングの4P

スマートフォンの普及で、生活者はいつでも自分が欲しい情報を取りにいき、消費できるようになりました。

また企業は、IoTに代表されるように、さまざまなモノにセンサーが付いたことで、常に生活者の各種データを取得できるようになってきました。

テクノロジーが生活者と企業の関係性を変化させたのです。

こうして、ネットワークを通じて生活者がいわば“Always on”な状態になることにより、マーケティングの軸足も大きく変化していきます。

従来の「製品の購買」をゴールに設計されていたマーケティングの考え方では、「より多くの認知を得て、どれだけ売り上げを上げられるか」といった考え方が最重要でした。

一方、これからますます普及するであろうサブスクリプション型のビジネスでは、生活者と企業は常に「つながった状態」にあることが前提となります。「生活者にサービスを継続利用してもらい、関係性を持ち、深める」ことで収益化を目指すモデルへのシフトです。

マーケティングの重心も変わる

マーケティングの基本フレームワークであった4Pも、デジタル化に伴う顧客との新たな関係性に注目すると、それぞれ「従来重視してきた要素」とは異なる概念をカバーする必要が出てくると思います。

製品からサービスへ。
セールスからサブスクリプションへ。
マルチチャネルからオムニチャネルへ。
リードジェネレーションからCRMへ。
マーケティング4Pの変化に向けたメガトレンド
このように、「顧客との関係性」を重視するサブスクリプション型のビジネスの考え方は、業種業態を問わず、“全ての企業”で適用可能なビジネスモデルです。

以下は、実際に国内外で展開されているサブスクリプション型ビジネスの例です。

■自動車業界:
「毎月一定金額を支払うことにより、契約期間中に好きなだけ自由に自動車を利用できる」サービスが台頭しています。自分で購入・所有した際に必要な税金や保険の心配も不要です。在庫があれば、新車を含む好きな車に乗れる権利を得るスタイルです。

■ファッション・アパレル業界:
プロのスタイリストやインフルエンサーが選んだ服が定期的に届くレンタルサービスや、好きな服や靴やアクセサリーなどのアイテムを特定点数まで何度も借りられるサービスなど、「ファッションアイテムとの関わり方」自体を再定義するようなサービスが話題になり始めています。

■コスメ業界:
自分の嗜好性を登録しておけば毎月興味にあったサンプルが届く、有料のサンプリングサービスが人気に。トライアル機会を増やし、商品購入のきっかけづくりにも役立っています。

■タイヤ業界:
タイヤ自体を販売するのではなく、センサーを取り付けることで、走行量に応じて使用した分だけ課金するスタイルのサービスが実現。購入へのハードルを下げる他、得られたデータから利用実態を把握した新たなサービス開発の可能性も期待されています。

サブスクリプション型ビジネスに乗り換えるには?

アドビの例のように、「プロダクト販売型モデル」から「サブスクリプション型モデル」にシフトすることは企業にとっても顧客にとってもメリットは多く、検討の価値はあると思います。変化の兆しを感じ、自社のビジネスも、いかにしてサブスクリプション型ビジネスを展開可能か。考えるきっかけにしていただけたら幸いです。

しかし、サブスクリプション型モデルの導入やマーケティングのためには、そのためのツールやノウハウが必要となります。

Zuoraは、「サブスクリプションを前提とした顧客管理&契約管理システム」をクライアントに提供しています。同システムではプライシング、見積もり、Eコマース、契約管理、請求・回収、売り上げ計上、レポート・分析などを一元管理できます。

そして電通・電通デジタルは、「顧客にどのようなサービスを提供するのか」「顧客とどのような関係を築いていくのか」といったサービス設計と共に、その導入・運用をサポートする、というのが今回の提携の大枠です。

次回は、従来型(プロダクト販売型)の企業がサブスクリプション型ビジネスを導入していくために必要なものと、導入の仕方を、実際の事例を交えつつ紹介します!