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「モノを売る時代」から「サブスクリプションの時代」へ!No.2

「サブスクリプション型ビジネス」導入に必須な3つの視点

2017/10/23

「サブスクリプション型ビジネス」導入に必須な3つの視点

【目次】
モノからコトへ、所有から利用へ。生活者の価値観変化にどう対応するか
導入に必要な3つの視点
 ▼視点1:ユーザー期待を超えるサービス設計とは?
 ▼視点2:顧客をいかに獲得するか?
 ▼視点3:顧客単価をどう上げるか?
導入の3つのステップ
 -ステップ1:ユーザー視点のサービス設計
 -ステップ2:柔軟なプライシングを支えるシステム導入
 -ステップ3:利用データを起点とした顧客コミュニケーション運用
電通グループが提供するサブスクリプション型ビジネス導入支援


モノからコトへ、所有から利用へ。生活者の価値観変化にどう対応するか

モノやサービスを一回一回の売り切りで顧客に所有させる「プロダクト販売型」のビジネスモデルから、継続課金型の「サブスクリプション型ビジネス」にシフトする企業が増え始めています。

■サブスクリプション型ビジネスとは?
・継続的な課金提供型(利用する権利を売る)のビジネス。

・複数の「プラン」(料金・内容の組み合わせ)を用意し、ユーザーが自由かつフレキシブルにプラン変更できるのが特徴。

■サブスクリプション型ビジネスを導入するメリット
・デジタルプラットフォーム上などでユーザーとのデータ共有や相互コミュニケーションを行い、継続的な関係を築くことで最適なマーケティングを実現する。 

・ユーザーの使用状況やニーズから最適なプラン内容、タイミングで提案を行うことで、休眠や離脱を防ぎやすくなる。

・ユーザーの定着に伴い、顧客ベースでの安定した収益を見込める。

・フリートライアルを含めた複数プランを用意することで、新規ユーザーを獲得しやすくなる。
デジタルマーケティングと密接に結び付いたサブスクリプション型ビジネスは、「常に生活者と企業がデジタルでつながる時代」に最適化された新しいビジネスモデルです。

生活者の価値観もまた、“所有”から“利用”へと意識変革が起こりつつあります。こうした背景についてはこちらの記事をご参照ください。

今回は、電通デジタルで企業のビジネスやマーケティングの変革、デジタライゼーションを支援している筆者が、サブスクリプション型ビジネスを導入するために必要な「3つの視点」と、「3つの導入ステップ」を紹介します。

そしてこのモデルの企業への導入支援のために提携することになったZuora Japan(ズオラ・ジャパン)と電通が、クライアントに何を提供できるかをお伝えします。

導入に必要な3つの視点

サブスクリプション型ビジネス導入のためにはマーケティング的な視点が必要です。ここでは3つの重要な「視点」について説明します。

サブスクリプション導入に必要な3つのマーケティング視点

視点1:ユーザー期待を超えるサービス設計とは?
→顧客との継続的な関係だからこそ実現できる価値提供を!

サブスクリプション型ビジネスを導入するなら、当然「新たに導入するサービスが顧客にとってメリットがあり、魅力的であること」が条件となります。

このモデルではネットを通じて顧客とつながっていることが前提なので、「顧客基盤(=顧客との継続的な関係)モデルならではの顧客メリット」を考えたサービスを設計しましょう。

以下の2例はZuoraのプラットフォーム(後述)を活用した事例で、いずれも「継続的な関係」だからこそ実現できるサービスです。

【実例1】航空機の月額定額(乗り放題)サービスを提供する「SURF AIR」

【実例1】航空機の月額定額(乗り放題)サービスを提供する「SURF AIR」

“所有”から“利用”へのニーズに応えるサービス設計の例です。1回しか使えない航空券を購入するのではなく、固定額を支払うことで旅客機に乗り放題になります。

一定以上の頻度で飛行機を利用する層にとっては、通常の航空会社を利用するより安価で 、面倒なチェックイン手続きも簡略化。専用コンシェルジュが付くことで、プライベートジェットのような贅沢が味わえます。

エグゼクティブ層の好み、ニーズを捉え、狙い撃ちしたサービスです。

【事例2】建設機械のコマツによる「スマートコンストラクション」サービス

【事例2】建設機械のコマツによる「スマートコンストラクション」サービス

【KOMATSU】スマートコンストラクション  紹介サイト
http://smartconstruction.komatsu/

建設・鉱山機械、フォークリフト、産業機械などの事業をグローバルに展開する総合機械メーカー・コマツによる、建設現場に関わる顧客を対象としたICTソリューションです。

スマートコンストラクションでは、建設現場で発生する3D地形データなどのあらゆる情報を取得し、施工プロセス全体に利活用。データに基づいた施工計画作成、進捗管理、最適工法提案、建設機械のICTによる制御などにより、安全性、生産性を向上し、工期短縮やコスト削減を実現します。

これら一連のサービスは従来のような建設機械販売/レンタル事業にとどまらず、ICTを活用した総合的なサービスパッケージとして、サブスクリプション方式で顧客に提供されます。

日本の建設現場の深刻な問題である「熟練工不足」「労働力不足」を解決する新たな形として、注目・利用されています。 

視点2:顧客をいかに獲得するか?
→豊富なプラン(料金・内容)から「選べる」形をつくる

サブスクリプション型ビジネスでは、顧客を獲得するだけでなく、獲得した顧客との関係(=利用契約)を「継続」することに注力します。そこに必要なのが、豊富なプラン、複数の選択肢の提供です。

例えば安価または無料の「ロープライスプラン」、手ごろな「ベーシックプラン」、ヘビーユーザー用の「ハイプライスプラン」といったプライスモデルを用意するのです。

複数のプライスモデルの例

プロダクト販売型が単一な価格設定なのに対し、サブスクリプション型では各顧客が自分に最適なものを選べるだけのサービス内容と料金バリエーションが用意されることが、初期契約獲得のきっかけとなります。

さらに顧客と常時つながっていることを生かして、顧客の利用状況に応じた「プラン変更」を提案できます。変更時の簡便性やスピード感が契約継続につながります。

視点3:顧客単価をどう上げるか?
→顧客とのエンゲージメント強化でLTVを高める

サブスクリプション型ビジネスモデルにおける顧客単価は、一般的に「LTV」(Life Time Value、顧客生涯価値)で管理します。

顧客ごとにLTVを最大化するために、「離脱の防止/契約の継続」「プランのアップグレード」を目指してマーケティング施策を行います。

施策のベースは、「顧客の状況やニーズを理解した上でのコミュニケーション」です。

【LTV向上のための施策例】
・顧客の利用状況から予測される「追加サービスのニーズ」を捉えてリコメンドする

・利用状況や推計から、アップセル、時にはダウンセルを先んじて提案する

・個々の利用状況に合わせてリアルタイムにインセンティブを付与する

こうした施策による顧客とのエンゲージメント強化が、契約期間の延長と売り上げ向上に直結します。

なお、顧客の状況やニーズを理解するためには、リアルタイムに顧客個人にひも付けられた、以下のようなデータが必要です。

【把握すべき顧客データの例】
「この顧客は、いつ、どのサービスを利用し始めて、どのように利用しているのか?」

「先週に比べて利用状況がどう変化しているのか?」

「各プロモーション施策に対する反応はどうか?」

Zuoraではこれらの顧客データ群を「Subscriber Identity(サブスクライバ―・アイデンティティー)」と呼び、その取得・活用をビジネス成功のポイントとして提唱しています。

サブスクライバ―・アイデンティティー

導入の3つのステップ

「顧客とのエンゲージメント強化で収益向上」という考え方は、モノだけではなく、サービスを売るというアプローチです。新規サービスの構築から既存事業のサービス化や強化まで、全ての業種・業態で適用できるビジネスモデルです。

プロダクト販売型の企業がサブスクリプション型ビジネスを導入するステップを見てみましょう。

先ほどの「3つの視点」を実現するための各ステップと位置付けると、以下のようになります。

  1.  ユーザーの期待に応えるサービス設計とは?
    →ステップ1:ユーザー視点のサービス設計
     
  2. 顧客をいかに獲得するか?
    →ステップ2:柔軟なプライシングを支えるシステム導入
     
  3. 客単価をどう上げるか?
    →ステップ3:利用データ起点の顧客コミュニケーション運用
導入のためのマーケティングスキーム

ステップ1:ユーザー視点のサービス設計

自社製品に付帯するサービスを開発したり、既存サービスを強化する際は、下記の2点を考えます。

【サービス設計の基本】
・ユーザーに使い続けてもらえるか?

・利用データを何らかの形で取得できるか?

新たな価値を生み出せるサービスや使い続けたくなるサービスをつくるには、「製品購入前の顧客ニーズ」だけでなく「購入後に使用を通して生まれる新たなニーズや不満」を捉えることが必須です。

そして自社製品にとどまらず、周辺にまで視野を広げて提供価値を検討しサービスとして構築するなど、広範な視点でのマーケティングを行うことになります。

【ユーザー基点のマーケティングの仕組み例】
・顧客一人一人の製品・サービス利用状況をリアルタイムに把握するためのデータ取得

・取得した顧客データに応じて即時にアプローチする組織・業務プロセス

・即時のアプローチを可能にする1to1マーケティングやマーケティングオートメーション

・リアルタイムダッシュボード

ステップ2:柔軟なプライシングを支えるシステム導入

請求や会計の処理を従来の「売り切り型」から「継続的な課金型」に移行したり、あるいは並列に存在させるためには、大規模なシステム投資や業務プロセス変更が必要になりがちです。

さらに、「利用データから顧客の動向に合わせてスピーディーに新たなプランを用意する」ことまで実現するとなれば、相当な人的コストがかかります。

そうした課題を解決するのが、Zuoraが提供するプラットフォーム「サブスクリプション・リレーションシップ・マネージメント」(以下、SRM)です。

ZuoraのSRM
Zuoraの提供するSRMのプラン設定画面

SRMでは、複数の設定項目に対して条件を選択するだけで、特別なIT知識のないマーケティング担当者でもわずか数分で新たなプライシングパッケージを作成可能です。

自社の会計システムやMAツールと連携させたり、1 to1やセグメント別の顧客管理と組み合わせてスピーディーにプライシングパッケージを変更したり、各顧客別の新規プラン提案や割引クーポンの送付を行ったり、顧客に合った決済方法の選択肢を提供したりもできます。

ステップ3:利用データを起点とした顧客コミュニケーション運用

初回契約の獲得から継続して顧客とコミュニケーションし続け、各反応を蓄積・分析して、シナリオにフィードバックする。PDCAを含めた「運用体制の構築」が、最後のステップです。

サブスクリプション型ビジネスでは、「既存顧客の継続や育成」のためのコミュニケーションが重要です。Eコマースの領域では既に実施例も多くありますが、プロダクト販売型の企業の場合、既存顧客にひも付くSubscriber Identityを活用した「セグメント別のリアルタイムコミュニケーション」に対応できている例は少数ではないでしょうか。

顧客満足度やNPS(=ネットプロモータースコア、顧客ロイヤルティーの高さを示す指標)を用いて、エンゲージメントを推し量りましょう。

そして、良好な関係を維持・向上させるため、顧客にメリットのある情報提供や提案を行います。

そのためには、過去まで含めた顧客の利用状況や、他の類似顧客の利用データを用いた予測などで顧客ニーズに先回りし、かゆいところに手が届く「おもてなし」のコミュニケーションシナリオを複数用意する必要があります。

電通グループが提供するサブスクリプション型ビジネス導入支援

電通および電通デジタルは、Zuora Japanとの業務提携を通じて、サブスクリプション型ビジネス導入ステップをトータルで支援するサービスを開始しました。クライアント事業の各領域で課題に対して並走し、統合的なサポートを提供します。

具体的には、ZuoraのSRM導入支援、電通グループの強みである顧客インサイト発見を生かしたプランニング、業務プロセス設計、ローンチ後のコミュニケーション運用まで幅広くサポートします。

電通・電通デジタルとZuoraの支援イメージ電通・電通デジタルとZuoraの支援イメージ電通・電通デジタルとZuoraの支援イメージ

【電通、電通デジタルが提供するサービス】

■事業/サービスの業務プロセスの設計・開発支援
クライアントの新たなサブスクリプション型事業・サービスの開発プランニング、戦略策定、業務プロセス設計開発のサポート。

■接点・チャネル構築支援
ECサイトや顧客管理、コミュニケーションのためのマイページの作成。
既存システムと連携した顧客管理やコミュニケーションのためのツール導入、システム連携のサポート。SRM導入、設定、初期トレーニング。

■コミュニケーション運営支援
初期の顧客獲得のためのローンチコミュニケーションのプランニング、設計、運営。
顧客に対する継続的なコミュニケーションのためのシナリオ作成、PDCAのサポート、継続的な運用。

サブスクリプション型ビジネスにシフトすることを検討している企業だけでなく、「自社が保有する顧客データを生かしたい」「新たなビジネスを検討している」という方も、ぜひ一度、自社の製品やサービスでどんな事業を展開可能か、検討してみてください。

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