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歌の伝播力。ママのおこった顔はシーサーに似ている?

「いい歌」で課題解決しませんか? №1

  • 赤松 隆一郎

2017/10/20

歌の伝播力。ママのおこった顔はシーサーに似ている?

やさしい麦茶 CM

GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶「ママのかお」編 30秒 なぎさちゃん/サントリー
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※サントリー公式チャンネル (SUNTORY)より
自ら作詞・作曲・演奏・歌唱までをこなすクリエーティブ・ディレクター(以下CD)・赤松隆一郎さんが、「歌を軸とした統合キャンペーンによるコミュニケーション課題解決」をワンストップでクライアントに提供する社内ユニット、「HUMMING BRAIN」(ハミング・ブレイン)を結成しました。

情報とテクノロジーがあふれる現代になぜシンプルな「歌」が響くのか、赤松さんに聞きます。

【目次】
歌の伝播力+イメージ喚起力。誰かが口ずさむだけでコマーシャルになる
みんなが口ずさんで拡散する歌のつくり方、教えます!
「ボツになった歌」も有効利用!?

歌の伝播力+イメージ喚起力。誰かが口ずさむだけでコマーシャルになる

ハミング・ブレインの赤松です。僕は最近、取材などでよくこんな質問を投げ掛けられます。

「リッチな課題解決が求められるこの時代に、どうしてシンプルな歌なのですか?」

ハイスペックでスケールの大きな映像表現が当たり前な昨今、「歌」というとどこか丸腰というか、いろんなものが足りていない、代わり映えしないコンテンツだと捉えられがちなのかもしれません。

でも、歌は確かにシンプルだけど、見方によってはとてもリッチでエコなコンテンツなんです。その大きな理由の一つが「伝播力」です。

映像でも本でも、何かコンテンツを広めるためには、再生メディアが必要です。だけど歌は誰かが口ずさむだけで、それを聞いた人がまたどこかで歌い、どんどん伝播・拡散していく。デバイスや場所の制限なく人間の身体だけで再生できるコンテンツは、歌だけです。

僕が今年手掛けたテレビCMに、サントリー「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」(2017年)があります。このCMが始まってから、街を歩いていて「ママのおこったかおは〜」と口ずさんでいる親子連れや子供たちのグループとすれ違うことが何度もありました。これも歌の持つ伝播力です。

重要なのは、この歌を口ずさんでる人たちは、「自分の歌」として歌ってるんですね。つまり、ある子どもがこの歌を歌っているときの「怒り顔がシーサーに似ているママ」は、歌っている子ども自身のママなんです。

実のところ、このCMは最初からこうした“親子のコミュニケーション”として広まることを意図してつくったものです。たくさんのママと子ども、あるいはパパも含めた親子のコミュニケーションの中で「歌われる」ことが、そのまま「やさしい麦茶」のブランディングになるというのが狙いでした。

やさしい麦茶 CM

また、歌の持つ力には「イメージ喚起力」もあります。ある歌を聴くたびに、いつも同じ映像が頭に浮かぶ…といった経験は誰でもあるでしょう。

実際に「やさしい麦茶」のCMを見てから、「ママのおこったかおは~」と口ずさんでみると、CMで歌っていた女の子(ムギちゃんこと、なぎさちゃん)が麦茶をゴクゴク飲む姿がくっきりと思い浮かびませんか? そうした映像イメージも、歌と共に伝播していくのです。

余談ですが、僕は急に浮かんだフレーズを共有するために、スタッフに電話口でアカペラで歌って聴いてもらうこともあります。そんなことができるのも、歌ならではですね。

やさしい麦茶イメージボード
本CMのアートワーク。映像制作では、最初にイメージボードをつくってスタッフ間で共有することがよくあるが、ハミング・ブレインではまず「歌ありき」でイメージを共有し、CMの世界観をつくっていく

みんなが口ずさんで拡散する歌のつくり方、教えます!

作曲面について少しお話します。子どもにもまねして歌ってもらうためには、リズムやメロディーが複雑ではいけませんよね。

僕は作曲時にギターや鍵盤などの楽器を使いません。楽器を持つと、ついコードをたくさん使ったり、転調したり、曲調も複雑になってしまいがちだからです。特に鍵盤楽器はハーモニーが付けやすいので、メロディーをそんなに練らなくても良い歌に聞こえてしまったりするんですね。

その点、手ぶらで歌を考えると、必然的に「アカペラで歌っても伝わる」ような素朴で力強いメロディー、それこそ子どもでも口ずさめるメロディーになります。メロディーが強ければ、あとで多少複雑なコードを乗せて遊んでも“伝わる力”は維持されます。

「ママのかお」譜面

こうした理由から、僕はいつも浮かんだ歌をスマートフォンのボイスレコーダーに吹き込み、秒数と共に検証する方法を取っています。結果、「ママのかお」の歌は、コードがGとDの二つしか出てこない、とてもシンプルな歌になりました。

ママのかお コード進行

また、作詞面では“濁点”を使わないように気を付けました。この歌には「ジャミラ」の「ジ」以外は濁音が出てきません。濁点が多いと言葉が“こわもて”になりやすく、「やさしい麦茶」のイメージに合わなくなってしまうのです。

それと、母音では特に大きく口を開く「あ」と「お」が多くなるようにしました。子どもたちに気持ちよく、大きく口を開けて歌ってもらいたかったんですね。

「ボツになった歌」も有効利用!?

GREEN DA・KA・RAのCMは僕が2012年から担当しているシリーズで、一貫して「歌軸」のクリエーティブで展開してきました。毎回、軸となる歌をつくり、しずくちゃん、なぎさちゃん姉妹(実の姉妹です)の登場する映像に合わせてミュージシャンに歌ってもらうというフォーマットです。

今回もプレゼンに臨むに当たり、当初は従来通りミュージシャンが歌う2パターンの企画案をデモ音源と共に提案したのですが、サントリーとのディスカッションを進めていく中で、「歌は軸にしつつ、アプローチを変えてみよう」ということになりました。

そしてスタッフと改めて相談しているとき、「思い切ってなぎさちゃん本人が歌うのはどうだろう?」という話の流れから「ママのおこったかおは~」というフレーズが生まれたのです。

通常ならこの時、改めてミュージシャンや作家に別の楽曲を発注したりするわけですが、僕の場合は自分がCD、プランナーとして受け取った情報を、直接楽曲に反映できるので、そこは強みだと思います。

ともかく、結果として三つ目の企画(歌)が採用されたわけですが、不採用となった一案目の歌もサントリーから「すごく良い歌ですね」と言ってもらえていました。それは子どもの成長を見守る親(大人)の気持ちをテーマにした、こんな歌でした。

「君のそばにいるよ 君が大きくなるまで」
「君のこと見てるよ 君が離れてゆくまで」
 

その後、企画は順調に進み、「ママのかお」編の撮影のため海外ロケに行きました。その撮影現場でしずくちゃん、なぎさちゃんの様子を見ている時に、上記の歌をBGMにした“メーキング映像”をつくることを思いついたのです。

さっそく撮影の合間にホテルでフルサイズの楽曲を書き、帰国後にその楽曲と合わせたメーキング映像を制作して自主プレ(広告会社が自主的にクライアントに提案するプレゼン)したところ、ぜひやりましょう、と採用になったのです。

GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶「ママのかお」編 メーキング しずくちゃん なぎさちゃん サントリー
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さらに、サントリーから「この歌を軸として、GREEN DA・KA・RAブランドにより深く寄与するコンテンツができないか」との相談を受けました。そこで、彼女たちが初めてCMに登場してから現在までの5年間を「成長記録」として振り返る動画を制作しました。ボツになった曲を軸に、どんどん話が広がっていったんですね。

GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶「夏の成長アルバム」 しずくちゃん なぎさちゃん サントリー
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こういう話って、オフィシャルな場に関係者が集まって会議をし、企画書を書いて許可をもらい…とやっていると、どんどん“固く”なっちゃうんです。でも、撮影現場で「こんな歌ができました!」「いいじゃないですか!」「じゃあフルでつくってみますか!」と話が弾めば、その場にいるみんなの思いがライブで一緒になっていくし、朗らかな仕事になるんですね。これもまた歌の持つ力なんじゃないかと思います。

次回は、コミュニケーション課題解決のために「何を歌うのか」についてお話しします。「ママのかお」の歌詞に“おいしさ”や“成分”といった麦茶要素が全く出てこない理由や、「歌軸」課題解決の本質的な価値についても触れられればと思います。


歌を軸にあらゆる課題を解決するユニット「HUMMING BRAIN」(ハミング・ブレイン)

http://www.hummingbrain.jp/

「歌軸」での課題解決をワンストップで提供する、多分野のスペシャリスト集団。CMプランニングから楽曲制作・演奏までを行うクリエーティブ・ディレクター赤松隆一郎を中心に、アートディレクター、コピーライター、PRプランナーなど、それぞれ強みを持ったメンバーが集う。メンバーの共通項はもちろん「歌や音楽が好きなこと」。

ハミング・ブレイン