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そのコンプレックス買い!

アクティブラーニングこんなのどうだろうレポート №8

  • 野田 千尋

2017/10/24

そのコンプレックス買い!

アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所は、全国のさまざまな学校でユニークな共同授業、実践授業を行っています。一方的に知識をインプットするのではなく、子どもたちが「考えること」にワクワクするような授業の在り方を、教育のプロである先生たちと模索。毎回、オリジナルな方法とドラマが生まれています。今回は、オンライン学習塾アオイゼミと共同授業を開催しました。

■2020年、大学入試改革がやってくる

いきなりですが、そして今さらですが、2020年から大学入試が大きく変わります。

センター試験は「大学入学共通テスト」に変わり、国語・数学は記述式問題を導入。英語はこれまでの「読む」「聞く」の2技能ではなく、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が求められます。

個別の大学試験では、必要に応じて調査書や志望理由書、小論文、面接などが課されるようになります。大学入試は、単なる知識や技能を測るだけではなく、思考力・判断力・表現力を重視した入試へと変わっていきます。

こうした入試改革に伴い、小中高そして学習塾においても、「アクティブラーニング」(生徒たちの主体的・能動的な学び)という教育の在り方が、盛んに議論されるようになってきました。

■オンライン学習塾も、もっともっとアクティブに

そうした中、オンライン学習塾のアオイゼミから「“アクティブラーニング特別授業”をぜひ一緒にやりませんか ?」とお話がきました。

アオイゼミは、中学生・高校生向けにオンラインで授業を配信している学習塾です。

先の大学入試改革の話に伴い、アオイゼミも学習塾として、通常の教科だけではなく、もっともっとできることがあるのではないか?と考えており、その中で、一つの試み・実験として研究所に声が掛かったのでした。

■授業という名の、ライブ

アオイゼミの最大の特徴は、平日夕方から「生放送(ライブストリーミング)」で生徒に届けているライブ授業。

ライブ授業なので、先生がその場で生徒に問題を出したり、生徒も、授業を受けながら先生に質問を投稿したりすることができます。また、生徒同士が投稿しながらやりとりすることもできます。

ライブ授業での先生と生徒は、さながらラジオのDJとリスナーのような関係で、生徒同士はTwitterのフォロー/フォロワーのような関係です。

オンライン授業の様子
ライブ授業中、生徒はこのような形で、ライブ動画を見ながら投稿に参加できます。

■その回答、「いいね!」

4~6月、全3回のアクティブラーニング特別授業を実施しました。

第1回授業は、「発想力UPテスト」です。研究所の倉成英俊氏(クリエーティブディレクター)と舘林恵氏(コピーライター)がブースに登壇します。

発想力UPテストのオンライン授業
左から研究員の舘林氏、倉成所長、アオイゼミの遠藤浩実先生

ひとたび研究所と電通の紹介を始まると、生徒たちのビビッドな反応が出てきます。

「すごい!これ知ってる!」「へー!あのCM!?」「今日のゲストの方、すごいなぁ」

場が暖まってきたところで、お題を発表。

【10文字以内で自己紹介】です。

「本が嫌いな図書委員会」「絵が下手な美術部」「機械音痴のパソコン部」…などなど。

多少、影響し合い過ぎているところも垣間見えますが、1人が投稿し始めると、それが刺激となって次々に生徒の投稿が続きます。

こうして次々と投稿される中、1人の生徒からこんな答えが。

「私はワタシです。」

なかなか哲学的な答え!

すると、われ先に自分の案を投稿していた生徒たちから「面白い!」「それ、好きです!」の声が。

1人の生徒の回答に、先生ではなく、むしろ先生よりも先に、生徒たちが次々と「いいね! 」の声を出していきます。

普段の授業では、なかなか生徒の回答を生徒が評価する、という現象は起きにくいようです。こうした動きは、第2回、第3回にも続いていくのでした。

■そのアイデア、「買い」!

第2回は、「変な宿題」です。

「変な宿題」は、研究所のリーダーの倉成氏が考案したクリエーティビティー開発授業で、普段の授業や試験では出てこないような、変な宿題に挑戦することで、発想力や構想力、統合力、プレゼンテーション能力などを培います。

お題は、「模擬店でみな同じたこ焼き屋を出すことになったら、あなたはどんなたこ焼きを売りますか?」

「猫舌だから、あえて少し冷ましたたこ焼き」「たい焼きの見た目で、中身はたこ焼き」…

などなど、比較的取り組みやすいテーマなのか、皆次々にアイデアを投稿します。

中には自分で描いた絵を画像で投稿してくれる生徒も。絵が上がると、生徒たちの反応はより一層活発になります「○○さんのたこ焼き、おいしそう!」「それ、買う!」

第2回も自走で盛り上がっています。もはや先生がコメントを挟む隙間がないほど、生徒同士がお互いの回答で大盛り上がりです。

■自分の欠点を、他の人は「いいじゃん!」と言ってくれる。

いよいよトライアル最終回。第3回は、「世界初の自己発見!」です。

お題は、ネガティブオークション。

生徒たちに自分のコンプレックスを挙げてもらいます。そして、挙がったコンプレックスに対し、他の生徒が「そのコンプレックス、良くない?むしろ買いたい!」と思ったら、買いたいと思った理由と共に値付けをしてもらいます。

一つ目は、「ハーフなのがコンプレックス。」

怒涛の競りが始まります。「ハーフ?カッコいい!!!300万で買う!」「1000万で買う!」

みんなそんなにお金持っているのかと突っ込みたくなりますが、

「ハーフってうらやましい !」という声が続々上がります。

二つ目は「パリピ(*)に思われるのがいや。」

(*パリピ:パーティーピープルの略語ですね。友達と遊んだり騒いだりすることが好きな人、でしょうか。)

ところが、他の生徒たちは「パリピいいじゃん!誰とでも盛り上がれるし。3000円」

「パリピになりたいな~。楽しそうだし、関わっていると楽しそう。100万」と。

値段はやや下がりましたが、むしろ「うらやましい」という声がたくさん出てきます。

最後は、「感情を押し殺してしまう」

これも、「私はすぐに感情爆発しちゃうから1万円で欲しい!」「せんせーが怒ってるのに笑い出しそうになっちゃうときあるから、1000円でレンタルできますか? (笑)」と次々に肯定する声が上がってきます。

第3回の授業は、生徒たちから「自分がいやだと思ってるところでも、人が褒めてくれることはすごく自信になった」「十人十色なんだってすごく思った」「この授業、この世のみんなに受けてほしい!」などの感想が上がりました。

第1回から芽生えていた、生徒が生徒の回答を「いいね!」と肯定する動きが、第3回では、(おそらく直接会ったことのない)生徒自身に対して「いいね!」と肯定する動きへと大きく昇華されました。

■「正解がない問い」に対する答えとは

最後に、個人的にとてもうれしかった、生徒さんの感想を紹介させてください。

それは、「正解がない場合は、相手の意見の尊重が大切だと思う」という感想です。

「正解がない問いは、正解は一つではない」ともいえると思います。

それは、自分とは異なる答え、異なる意見も正解ということです。

今回のアオイゼミでの授業を通じ、(もしかしたらお互い顔も知らない)生徒同士が、他の人の回答に興味を持ち、その回答いいね!おもしろいね!と自発的にやりとりする様子を見て、また一つ「アクティブラーニング」のカタチが見え、私自身もすごく学びを得ることができました。

自分自身の答え/考えを追求しながら、同時に、他の人の答え/考えを認め、肯定することができたのならば、きっとこれからの正解のない時代も、強く楽しくたくましく、生きていけるのだろうと思います。