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鍛えよ!コーポレートコミュニケーション力No.4

日々の広報活動の成果を測るには? ―魅力を高める指標を見つけよう!

2017/11/16

「企業広報戦略研究所」(電通パブリックリレーションズ内)の連載第4弾のキーワードは“過渡的な目標”。過渡的な目標とは、広報における最終的な目標の中間点に設定する目標のことで、私が提唱している考え方です。今回は、広報活動がもたらす企業魅力度やビジネスインパクトの測定につながる過渡的な目標について解説します。

Point
広報活動がもたらすビジネスインパクトを測るには、“過渡的な目標”の設定が鍵に!

・広報活動を通じて企業の魅力を高めることが、ビジネスインパクトにもつながる
・日々の広報活動とビジネスインパクトの計測は、2段階で考えよう
・それには、“過渡的な目標”を見つけ出すことが重要!

広報活動をビジネスインパクトにつなげる

「広報ってビジネスインパクトにつながるの?」

これまでさまざまなところで何度も何度も言われてきた言葉でしょう。プレスリリースやSNS投稿などの企業の広報活動が、商品・サービスの販売の増加、企業の収益の向上につながるのか、またそれをどうやって測るのかは、広報の永遠のテーマといってよいでしょう。
が、ここで断言します。
広報はビジネスインパクトにつながりますし、それを測る方法もあります。

ポイントは“過渡的な目標の設定”です。

例えば、ある食品企業では、商品に関連する/しないにかかわらず、自社に関するTwitter上の書き込みの増え方と小売店での商品の売れ方には、正の相関関係が認められるそうです。この場合、“Twitter上の書き込みを増やす”が過渡的目標となります。

また、ある会員制ウェブサービスの会社では、特定のマスメディアでの露出と会員数の増加に、正の相関関係があることが分かっています。“特定のマスメディアでの露出を増やす”ことが過渡的目標となります。

プレスリリースをどのくらい打てば商品やサービスが売れ、ソーシャルメディアでどのような投稿をすれば企業の収益が向上するのか、これを測るのは困難です。しかし、過渡的目標を設定することで、例えばプレスリリースを打てば、Aという指標が2ポイント上がり、その指標が2ポイント上がれば、Bという指標が1ポイント上がり・・・という具合に、ある広報施策の成否の影響を別の指標に変換していくことは可能です。

このような過渡的な目標を設定し、クリアしていくことで日々の広報活動をビジネスインパクトにつなげることが可能になるのです。

 

ビジネスインパクトにもつながる「企業の魅力」

そもそもの問い、広報活動「全体」の目標が何か、に対する一番もっともらしい答えの一つに「企業の魅力を高める」があります。これは、納得いきますよね。広報活動全体の目標を「企業の魅力を高める」ことであると定めた場合、一つの指標として企業広報戦略研究所が行っている「企業魅力度調査」が参考になります。

この調査は、企業の魅力を高めているFact(企業行動そのもの、およびそれに伴う事実ベースの企業構成要素)について、「人的魅力」「商品的魅力」「会社的魅力」の三つに分類し、分析したものです。自社のどの魅力が生活者に支持されているかを知ることができ、また、今後の自社の魅力を高めるために広報活動をどのような視座で行えばよいのかも知ることができます。

また、この「企業魅力度調査」では、企業の魅力を高めること(広報活動全体の目標)が、どのようなビジネスインパクトをもたらすのか(企業活動全体への貢献)ということも調査しています。

第2回「企業魅力度調査2017」(企業広報戦略研究所)から、「魅力を感じる企業に対して生活者が取った行動」のデータです。

これを見ると、企業の魅力が高まった結果、商品の購買やその検討につながるケースが多いことが分かります。

魅力は高まったか?“過渡的な目標”が、日々の広報活動の指標になる。

議論をもう少し進めましょう。

広報活動全体の目標を「企業の魅力を高めること」に定めました。その計測の方法もあることが分かりました。が、ここには一つ問題があります。

この目標と計測方法はあまりにも大き過ぎて、個別の広報活動の成果を測るのには適していない、ということです。

ここで必要となるのが、“過渡的な目標”の設定です。

ポイントは、過渡的な目標と全体の目標が必ずしも理論的に説明できる必要はないということです。過渡的な目標の設定は、過去のデータに照らして関連性が認められさえすれば、十分に意味があります。

魅力度向上がビジネスインパクトにつながることは先ほどご覧いただいた調査結果から明らかですので、魅力度向上に影響のある過渡的な目標を設定することができれば、その過渡的な目標を目指す個別の活動を行うことで、企業魅力度向上=ビジネスインパクト創出につなげることが可能です。

コーポレートサイトのビジット数やFacebookページの投稿のクリック数が増えることで魅力度が高まった、さらにはビジネスインパクトにつながった、そういうものがきっとあなたの企業にもあると思います。

記者からの問い合わせは絶えないし、現場からニュースリリースの要請はひっきりなしだし、社内報の締め切りも迫る。そんな中で仕事をしていると、ついそれらが何のために、それぞれに何の目的でやっているのかを考える時間がなくなってしまいます。ときには上位の目的と下位の目的があべこべになってしまいがちになることもあるでしょう。

全体の目的を見定め、それと関連する個別の指標(過渡的な目標)を見つけ出し、それに基づいて活動を行うことで、リソースの無駄遣いを回避し、適正に仕事を進めることが可能になります。

何のためにやっているか分からない広報を今すぐ脱し、企業の魅力の向上と、その先にあるビジネスインパクトに資する広報を目指しませんか?