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鍛えよ!コーポレートコミュニケーション力No.3

思わずシェアしたくなる“感情トリガー”、設計できてる?

2017/10/05

「企業広報戦略研究所」(電通パブリックリレーションズ内)の連載第3弾では、生活者が情報をシェアしたくなる動機を分類・マッピングしたプランニングメソッド「感情トリガー・マップ」と、それを活用したコンテンツ設計についてご紹介します。

 

Point
生活者は“感情”をシェアする! 誰の心を、どう動かすのか、を考えよう
・シェアする動機は、ざっくり10分類できる(感情トリガー)
・「感情トリガー」+「PR IMPAKT®」で情報設計をしよう
・「感情トリガー・マップ」をチェックリストとして活用しよう

 

感情トリガーとは、思わずシェアしたくなる生活者の衝動

 

企業が自社ブランドや製品の魅力を生活者に伝えるにはどうすればいいのでしょう。モノと情報があふれている今、生活者が立ち止まるような、つまり人に話したくなったり、ソーシャルメディアで拡散したくなったりするような付加価値の高い情報は生み出しにくくなっています。

でも、実際にソーシャルメディアを見てみると、多くの人たちが日々さまざまな情報をシェアしています。ということは、“どんな情報を企業が届ければ消費者に響くのか”ではなく、“消費者がその情報をシェアしているのはなぜなのか”という視点に立てば、企業の情報設計のヒントが見えてくるのではないでしょうか。

まず立ち返るべきは、自分はどんなときに「情報を人に教えたい=シェアしたい」と思うか、ということです。自分のことを振り返ってみると、“感動して泣いたとき” “アッというほど驚いたとき” “もん絶するほどカワイイ!と思ったとき”などがそれに当たります。

つまり、シェアしたいと思ったとき=自分の感情が大きく動かされたときではないでしょうか。シェアとは、その情報によってもたらされた自身の感情を、誰かと共有したいという衝動によって生まれるものだと思うのです。

どんな情報に生活者は心が動かされるのか ―シェアされる10の感情

 

生活者が“シェアしたい!”と感じる感情には、どのような種類があるのでしょう。YouTube上のヒット動画(シェア数や再生回数、コメント数の多い動画など)をリサーチし、動画をシェアしたくなる感情を割り出して10に分類して整理し、それを「感情トリガー」と名付けました。

この10の感情を対象に、2017年春、生活者調査を行いました。どのような感情を刺激されるコンテンツであれば、誰かに伝えたくなる企業情報になるか、ということを聞いたのです。

 2回「企業魅力度調査2017」(企業広報戦略研究所)
 

結果は、1位が「感動」(49.1%)で、「胸熱」(48.8%)と「信じられない」(40.8%)がそれに続きます。内容に強い“共感”を持つことができるコンテンツや、そのストーリーに心が打たれて胸が熱くなるようなコンテンツ、自分の想像を超えるような驚き、といったコンテンツに支持が集まるという結果になりました。

ちなみに、「ヒドイ」や「セクシー」は、シェアされる可能性はあるものの、生活者の反発や批判を生みやすい感情なので、企業の魅力を高めるという目的においては、ハイリスク・ローリターンになりかねません。要注意です。

感情トリガーをマッピングして、コンテンツ設計の羅針盤に

 

そして、この10の感情をマッピングしたものが「感情トリガー・マップ」です。上下の軸には、一瞬のインパクトで感情を大きく動かす「驚嘆」の方向性と、心の深くにまで届いて強い「共感」を得る感情の方向性を取り、左右の軸には、「理性的思考」と「情緒的思考」を置いて、それぞれの感情を配置しています。

10の感情の円のサイズは、前出の調査結果の数字に比例しています。

MA設問の総回答数を100とした際の各回答数の割合を罫線で表し、その罫線に沿って円をデザインしています。

ちなみに、この「感情トリガー」には性年代別で傾向があることも調査で分かっています。少しだけ紹介すると、「啓発」と「セクシー」を除く8の感情について、女性の数値が男性を上回っています。年代別で見ると、若年層の方が高く反応している項目が多く、「啓発」は60代が最も高く反応する、などの結果が出ています。

さらに、「感情トリガー・マップ」の中央にある「PR IMPAKT」※も、コンテンツ設計には欠かせない視点です。

「感情トリガー」+「PR IMPAKT」で戦略的なコンテンツ設計を

 

「感情トリガー」が、生活者のどの感情を刺激してシェアしてもらうかをプランニングする際の指標だとすれば、ニュース化されやすい情報の切り口を六つにまとめたものが「PR IMPAKT」です。世の中のさまざまなニュースの分析から、どういう視点があればニュース化されるのかをモデル化しました。

「PR IMPAKT」の名称は、下記の頭文字をとって名付けられています。
・Inverse(逆説、対立構造)
・Most(最上級、史上初)
・Public(社会性、地域性)
・Actor/Actress(役者)
・Keyword(キーワード、数字)
・Trend(時流、世相、季節性)
※「PR IMPAKT」は、電通と電通パブリックリレーションズが開発した、電通グループオリジナルの戦略デザイン視点です。詳細についてはこちらをご覧ください。

この「PR IMPAKT」の要素は、「感情トリガー」と組み合わせて考えることができます。

例えば、「感動」「胸熱」を刺激するようなコンテンツが、同時に「Public」つまり「社会」課題を解決するような内容であったら、ニュース性も高く、ソーシャルメディアでもシェアされやすいコンテンツになりやすい、という見方をします。「IMPAKT」と親和性の高い感情をそれぞれ「マップ」内の近くに配しているのです(KeywordとTrendは、どれにも該当するので中央に配置)。

これらの視点を、コンテンツを世に出す前のチェックリストとして活用してみることをオススメしています。「感情トリガー」を軸にしつつ、さらにニュース化する視点の「PR IMPAKT」、つまりメディアがどう伝えるかも意識したコンテンツを戦略的に設計することで、企業の情報発信にさまざまな可能性や機会が生まれるのではないでしょうか。