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どこからはじめる?インターナルコミュニケーションNo.4

2021/09/13

コーポレートブランディング成功のカギは「組織づくり」にあり!

コーポレートブランディングを効果的に推進するためには、自部署にどのような機能を持たせればいいのか。あるいは、他部署とどのように連携を図ればいいのか。

私が所属するコーポレートコミュニケーション部には、最近「組織づくり」の段階からご相談を頂くことが増えています。
その背景には、下記のようなことが挙げられるでしょう。

  • 事業の再編(ホールディングス化/M&A/不採算事業からの撤退など)に伴う、広報部門と広告部門の統合
  • 企業理念(パーパス/ミッション、ビジョン、バリュー)の策定に伴う、インターナルコミュニケーションの重要性の高まり
  • SDGs/ESG(環境、社会、ガバナンス)への対応が、従来のCSR(企業の社会的責任)活動を超え、経営に直結する課題になっている
  • コーポレートコミュニケーションのデジタルシフトに対する課題意識
  • 国内とグローバルにおける統合的なブランディングの推進の必要性

コーポレートブランディングやインターナルコミュニケーションのニーズは、さまざまな契機によって生まれます。しかし、課題の高度化・複雑化に伴って、「現在の組織体制では効果的に推進できない。とはいえ、必要なアクションは多岐にわたるため、どこまでの機能を自部署に持たせるかが悩ましい」。そのようなお悩みも増えてきています。

今回は、インターナルコミュニケーションを推進するそもそもの「基盤」となる、コーポレートブランディングを推進するための「組織づくり」について解説します。

コーポレートブランディングの全体像を把握する

コーポレートブランディングの組織体制を考える際には、まず「どのような活動がコーポレートブランディングに含まれるのか」を、正確に把握する必要があります。

筆者は、東洋大学現代社会総合研究所客員研究員の井上邦夫氏との共同研究により、「コーポレートブランディング実践に向けたフレームワーク コーポレート・アイデンティティ、ブランド、 レピュテーションの概念整理を中心に」と題する論文を発表しました。その中で、コーポレートブランディングのプロセスを下記のように規定しています。

図1:コーポレートブランディングの4段階プロセス

コーポレートブランディングの4段階プロセス

コーポレートブランディングとは、「企業としてのアイデンティティを確立し、好ましいレピュテーションを形成するための包括的なマネジメントプロセス」を指します。そして、下記の4つの段階が含まれます。

第1段階:基本理念と戦略的ビジョンの策定
企業の基本理念を策定、あるいは再確認した上で、それを実現するために将来像となる「戦略的ビジョン(ありたい姿)」を打ち出すことで、コーポレートブランディングの方向性を明確に定めます。

第2段階:コーポレートブランドの開発
企業のアイデンティティを、①コーポレートネーム、②ビジュアル・アイデンティティ(以下、VI)、③コーポレートスローガンの3要素を適切に組み合わせることによって象徴的に表現したものが「コーポレートブランド」です。理念やビジョンを内外のステークホルダーに分かりやすく伝えていくために必要な表現手段です。

第3段階:コミュニケーションの設計
コーポレートブランドの認知を高め、ステークホルダーの理解と共感、支持につなげるには、内外のさまざまなステークホルダーに対するコミュニケーションの設計が不可欠です。理念やビジョンを組織内に浸透させて新しい組織文化を確立し、一人一人の従業員の日々の業務に反映させるためのインターナルコミュニケーション、そして、PESOメディア(Paid Media/Earned Media/Shared Media/Owned Media)を戦略的に組み合わせたエクスターナルコミュニケーションを両輪で推進します。

第4段階:コーポレート・レピュテーションの形成
コーポレート・レピュテーションとは、「組織による価値創造の能力について、ステークホルダーが抱いている総合的な評価、あるいは累積的な認識」のことを指します。簡単に言うと、ステークホルダーが「この会社の商品を買いたい」「この会社で働きたい、働き続けたい」「この会社の株を買いたい、応援したい」と評価してくれるかどうか、ということです。それは長い時間をかけて、さまざまなコミュニケーションや企業活動を通じて形成されます。良好なレピュテーションの形成が、コーポレートブランディングの対外的な目的であり、その成果を図る指標としても位置づけられるのです。

このように見ていくと、コーポレートブランディングという活動は、

  • 企業理念や戦略的ビジョンの策定・発信への関与
  • コーポレートネーム/VI/スローガンの開発・運用
  • インターナルコミュニケーションの立案・実施
  • エクスターナルコミュニケーションの立案・実施
  • コーポレート・レピュテーションの測定とマネジメント

がコアとなる機能であることが分かります。

さらに、インターナルコミュニケーションにおいては社内イントラや表彰制度、研修制度、あるいはエクスターナルコミュニケーションにおいては、広報、広告(マス広告/デジタル広告)、IRなど多岐にわたります。まずこれらの機能を、現在自社内のどの部署が担っているのかを棚卸しする必要があります。

ここで一点、気をつけておきたいポイントとしては、多くの企業で「コーポレートコミュニケーション部門」の傘下に、VIの管理・運用やブランド戦略立案・レピュテーション測定などを担う「ブランド担当部署」が存在するケースが見られることです。

このような企業ではコーポレートブランディングを、「コーポレートコミュニケーションの中の一つの活動」と位置づける傾向があります。しかし本来は、前述のように「コーポレートブランディング」が「組織としてのアイデンティティを確立し、好ましいレピュテーションを形成するための包括的なマネジメントプロセス」として上位概念に位置づけられ、「コーポレートコミュニケーション(インターナル/エクスターナル)」をその中の一つの機能として捉える方が正確です。

「広報マトリックス」で自社の現状を棚卸しする

コーポレートブランディングにおける諸活動に、現在どの部署がどのように関与しているのか。それを整理する際にぜひ活用いただきたいのが、前述の井上氏が提唱する「広報マトリックス」です。

図2:広報マトリックス

広報マトリックス
※◎、〇は関与の強さを表す(上記のステークホルダーや部門、◎〇のプロットはダミー)

表側(行の見出し部分)に自社が関係するステークホルダーを、表頭(列の見出し部分)に自社の各部門を並べ、どの部署が、どのステークホルダーに対応しているのかをプロットしてみましょう。これだけでも、各ステークホルダーに対するコミュニケーションにおいて、本来どの部署とどの部署が連携をしなければいけないのかが見えてくるはずです。

その上で、自社の現状に照らし合わせながら、

  • コーポレートブランディングの主管部署の設定
  • 主管部署において管轄すべき機能の設定
  • 主管部署以外の部署における、「コーポレートブランディング担当者」の設置
  • 主管部署と各部署の定期的な会議体による情報共有・推進

を念頭に置いて、自社にとって最適な組織体制を検討していきましょう。

コーポレートブランディングは、製品やサービスを対象とするマーケティング活動の一環としてのプロダクトブランディングと異なり、すべての部門、ステークホルダーを対象とした「全社変革運動」であることが大きな特徴です。また、その統括責任者は企業トップが最もふさわしいと言えます。プロダクトブランドとコーポレートブランドの主な違いをまとめたのが下記の図となります。

図3:プロダクトブランドとコーポレートブランドの違い

プロダクトブランドとコーポレートブランドの違い
出典:井上・望月・中町(2021)「コーポレートブランディング実践に向けたフレームワーク コーポレート・アイデンティティ、ブランド、 レピュテーションの概念整理を中心に」

これから求められるのは、情報発信マネジメントの一元化

コーポレートブランディングの組織体制における最近のトレンドとしては、広報や宣伝広告、IR、CSRなど社内に分散している各コミュニケーション機能を集約する動きが進んでいることが挙げられます。

その背景としては、ソーシャルメディアの普及などにより、「情報発信のマネジメントの一元化」がより求められるようになったことが大きいと言えるでしょう。また、デジタル化やグローバル化の進展や、ホールディングス化の流れもコーポレートブランディング推進部門の「大部屋化」を加速させています。

例えばある企業では、従来は採用活動に関しては人事部、株主に対してはIR・総務関連の部署、社会貢献に関してはサステナビリティ(持続可能性)専門部署とそれぞれが情報発信を行っていたのですが、トップの強いリーダーシップのもと、それらの活動を統合する新部署を発足しました。そして、予算の集中投下やタイムリーな情報発信を実現することで、大きな成果を上げています。

企業にはさまざまな経営機能があり、それぞれに関連するコミュニケーション活動があります。これらは複数の部署にまたがり、相互に絡み合っている場合が多いです。例えばIRは財務部門や経営企画部門と、採用広報は人事部門と、SDGsの推進はCSR担当部門と密接なつながりがあります。これらをどのように調整し、コミュニケーション活動に一貫性を持たせるかは大きな課題です。前述の「広報マトリックス」などを活用して、集約する機能と必要に応じて連携する機能の「さじ加減」を考え、各企業個別のコンディションを勘案した上で判断するといいでしょう。

コーポレートブランディングのための組織づくりに「ただ一つの正解」は存在しません。電通 コーポレートコミュニケーション部では豊富な実績をもとに、その企業のDNA(価値観や規範など)や事業活動、そして未来に向けてのビジョンを見据えた上で、組織づくりからコミュニケーション活動までを一貫して支援しています。


参考文献:
・井上邦夫・望月真理子・中町直太(2021)「コーポレートブランディング実践に向けたフレームワーク コーポレート・アイデンティティ、ブランド、 レピュテーションの概念整理を中心に」『広報研究』第25号(日本広報学会)P4-19
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kohokenkyu/25/0/25_4/_article/-char/ja
・「主要企業の広報組織と人材 2020年版」(経済広報センター)

 
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