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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.182

経営の課題に、広告コミュニケーションで答えていないか?

2023/10/05

今回は、経営の課題にクリエイティブで応える時に、陥りがちなことについて、一緒に考えていきたいと思います。

電通のクリエイティブセクションから巣立って、いろいろな企業で活躍している仲間がいます。いわば「Indwelling Creators(組織に「棲み込む」クリエイターサービス)」の実践版。その方々の経験談はとても刺激的です。先日も、とある人物がこんなことをおっしゃっていました。

「世の中は、コミュニケーションだけでできているわけじゃない」

文字に書き起こせば、そりゃ、当然のお話ですよね。しかし今回は特に広告業界の内側にいる方々と、このテーマについて考えたいのです。彼女は続けます。

「企業経営に携わる人間として、広告会社に相談すると、結局すぐキャンペーン的なアウトプットの話になるか、社内に既にあるような分析的な話になるか、そのどちらか。もっと本質的なことを話したいのに、なかなかそれができません。……なんて言っている私も、電通に在籍していたときはコミュニケーションだけで、もっといろいろなことが解決できると信じていたんだけど(笑)」

わが身を振り返っても、たとえば「牛乳の消費拡大」というテーマを、「広告コミュニケーションの問題」に転換して企画を進めた記憶があります。本来そこには生産や物流、商品企画や価格政策など多岐にわたるテーマがあったにもかかわらず、そこに大きな関心を向けたとは言い難い状況でした。

当時のオリエンからして、それはクライアントの期待に沿ったものでしたが、果たしてそれで「真のパートナー」たり得たのか。「真のパートナー」なら、どのように振る舞うのが正しかったのか。いまでも、しばしば振り返ります。

もちろん、広告コミュニケーション領域に限定して仕事が依頼されるケースはあるでしょうし、それを否定するつもりは毛頭ありません。しかし経営全般、ビジネス全般にかかわる相談を受ける際には、ハッキリとスイッチを切り替える必要があると思うのです。

広告業界の大きな資産であり、またクライアントの方々からも大きな期待を寄せられる技能は「クリエイティビティ」です。だからこそ、ビジネス全般のパートになると突然“経営を科学する”ような分析の世界(正論)に頼ってしまうクセを、一度やめてみませんか?

その代わりにボクたちクリエイターの経験が、クライアント組織の創造力を最大化するためにどう生かせるのか、真剣に考えてみませんか?

確かにマス広告中心の時代から、SNSや店頭、イベントにPR、時には商品開発や組織設計など、広告コミュニケーションの手段は格段に多様化してきました。しかし、広告業界内では賞賛されている事例が、経営者から見て本当に満足のいくものになっているかどうか、心配です。もしかするとあまり本質的ではない、一時的な賑やかしに映っている場合も、ある気がします。

クリエイターは、もっと自信を持って、自らの創造力をビジネスのド真ん中に活用する挑戦をするべきです。それは結局、新しい価値(コンセプト)の話に行きつくでしょう。新しい価値創造こそがクリエイターの本分。その領域に関する圧倒的な経験については自信を持って良いハズです。

一方で、まずは「プロフェッショナルなクリエイティビティとは、何か?」について明確にする責任があります。アマチュアのそれと何が違うのか、説明できるようにならなければなりません。

そもそも「コンセプト」や「アイデア」「価値」「クリエイティビティ」といった重要な概念の「定義」すらままならないのであれば(いま、それは完全に「個人任せ」になっているように思えます)、それが業界の武器になるわけもないでしょう。そういった「基本」中の基本を見つめなおすことが、結果として活躍の場を広げ、広告業界の変革期を乗り越える大きな突破口となると思うのですが、いかがでしょうか?

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さてさて。

熱海に行くと必ず訪れるビストロがあります。そこのシェフは最近まで静岡で有名な調理師学校の先生を務めていた方で、だからなのでしょうか、土地の食材をふんだんに使ったお料理の一皿一皿が、キッチリキッチリ行き届いているのです。

「基本」の大切さを再確認できる、オススメの一軒です。

どうぞ、召し上がれ!

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【「Indwelling Creators」に関するお問い合わせはこちら】
E-Mail:opeq78@dentsu.co.jp 担当:山田

 

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