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オトコの食、オンナの食 ~「食と満足」を考える

食ラボの視点 ~「食と○○」を考える №1

  • 吉羽 優子

2017/12/19

オトコの食、オンナの食 ~「食と満足」を考える

初めまして。電通 食生活ラボ(通称:食ラボ)の吉羽優子です。

私たち食ラボのメンバーは、その名の通り、いつも食のことを考えています。
ただ、みんな、気付いちゃったんです。

食のことを話し合っているつもりでも、知らず知らずのうちに、生活の在り方や、価値観や、時代のことを話し合っている。食という一つの領域にとどまらない話にたどりついている。

どんな事象もそうだとは思いますが、食は人が生きていくための源であるからこそ、なおのこと、食の範ちゅうを超えて、生活のあらゆる面と影響し合うものだと思います。

だからこそ、食を少し広い視点で捉えてみたい。
日々の献立や食品・食材をどう選んでいるかといった、食フォーカスの視点からあえて離れてみたい。
そんな発想からこの連載をスタートすることになりました。

食ラボ独自のリソースをベースに、「食と〇〇」という形で、毎回異なるテーマを取り上げていきたいと思います。

初回は、「食と満足」をテーマに、食の満足度はどのように/何によって決まるのか、をひもときます。

食ラボでは、2016年9月、インターネット調査で「食生活ラボ調査Vol.5」(*1)を実施しました。このオリジナル定量調査の結果をもとに、現在の食生活への満足度(以下、食満足度)に対する、食や生活にまつわるさまざまな意識・行動項目の影響度を調べた(*2)ところ

・男性と女性では、食満足度ドライバーがぜんぜん違う!
・シニアでは男女の間に切ないギャップが…
・「帰る味」があることの大切さ
が明らかに。以下で詳しく見ていきましょう。

食べ手マインドの男性、作り手マインドの女性

グラフ:男性全体/食満足度への影響
グラフ1-1
 
グラフ:女性全体の食満足度への影響
グラフ1-2

グラフ1は、男性・女性の食満足度に対する影響度の高い項目を抽出して、上から順に並べたものです。

各項目の横にある数値が食満足度への影響度(*3)を表していて、数値の絶対値が大きいほど影響が強い、ということになります。一方、後述のグラフに見られるように、数値がマイナスの場合は、その項目内容によって食満足度が低くなります。

グラフ1から言えることは、男性の食満足度は自分の「健康」「お金」の状況や「家族・恋人」との関係性によって喚起される一方、女性では自分の「健康」状態だけでなく「調理の自信」や作った人への気持ちを伝える「食事コミュニケーション」の要素も食満足度に影響する、ということです。

男性の食満足度が「食べる」ものや環境に偏る一方、女性の食満足度は「作る」ときの気持ちや環境にも影響される。

食べ手マインドの強い男性、作り手マインドの強い女性。
このことの善しあしは別として、食満足度の分析からも日本社会の現状を垣間見た気分です。

私が特に面白いと思った点の一つは、女性の「恋愛には積極的だ」という項目。
一見遠そうな「恋愛」と「食」という二つの事象ですが、恋愛を前向きに楽しんでいる人ほど、大切な人との食を楽しんでいる、というふうに捉えるとなんだかイメージが湧いてきます。

ひょっとしたら、大切な人と「食べる」という行為だけでなく、大切な人のために「作る」という行為も食満足度に貢献しているのかもしれません。

そして、もう1点、女性の「作った人に『おいしい』と伝える方だ」という項目も注目に値します。「おいしい」と伝えることは、女性にとって食の満足をかたちづくる大切な一部だ、ということですよね。

日々食事を作る側にいるからこそ、作った人への感謝や気持ちが自然と言葉になる。だからこそ、逆に、自分にも何か一言かけてほしいな、と思っている人が多いのではないでしょうか。…少なくとも私はそう思っています!

がんばれ、リタイアおじさん!

グラフ:普段、家族そろって食事するときの満足度
グラフ2

グラフ2は、「普段、家族そろって食事をする」という項目の、各性年代グループにおける食満足度への影響度を比較したものです。
女性と男性の差がはっきり見えますね。

総じて、女性よりも男性の方が「家族で食事をする」ことにより食満足度が高くなる傾向にあり、特に男性10~20代が突出しています。

部活動や受験勉強に熱中した後は、新たな学生生活に突入、そして、実家を離れ一人暮らしスタート…とライフステージがめまぐるしく変化する年代。かつてのように家族そろって食事する機会が減っていくことの反動として、「家族で食事をする」ことを求めるのでしょうか。

また、多く場合「家族で食事をする」ことが食満足度にポジティブな影響を及ぼしている一方、衝撃的なことに、女性50代以上のみ、「家族で食事をする」ことで食満足度が低くなるという結果になりました。

子どもが手を離れ、夫婦だけの生活が中心になっていく。さらに定年後は家で過ごす時間が劇的に増える男性。そんな変化にストレスを感じる女性。多くの場合、女性が食事作りの担い手でしょうから、そこもストレスの一因かもしれません。

50代以上夫婦の食卓風景
イラスト 大嶌美緒/電通

50代以上の女性にとっては、家族で食事をすることが食満足度の低下につながる。
実にリアルで、切ない発見。

でもご安心ください!食ラボではこの状況を少しでも変えていくためのアイデアを考え中です。実現して、世の中の食満足度をもっともっと高めていきたい。そんなふうに思っています。

わが家の味がある、ということ

最後は、少しホッとする話で締めくくりたいと思います。

グラフ:わが家の味がある
グラフ3

グラフ3は「わが家の味がある」という項目の食満足への影響度を表したものです。

「わが家の味がある」ことは、10~20代では食満足度に貢献していない(男性)、あるいは、影響度が低い(女性)のですが、30代以上になると総じて食満足度にポジティブな影響を及ぼしていることが分かります。

つまり、年を重ねていくと、自分のベースとなる味や帰るべき味があると感じられる人ほど、食満足度が高くなるということです。

おそらく、結婚や出産・育児を経て自分の家庭を持つことがさらに「わが家の味」を意識させ、食満足度にも影響していく。女性においてより影響度が強い傾向が見られます。

私個人としても感覚的に分かる話だなと思いました。若いときは、多少とんがったり、いつもと違う刺激が欲しくなったりして、「家の外」に楽しみや喜びを見いだすものです。味もまたしかり。

でも、年とともに「家の中」で自分が落ち着ける味の良さを、徐々に感じるようになっていく。自分が家庭を持つようになると、なおさらです。日々の食作り・味作りに追われながら、自分の親がその昔作ってくれていた「わが家の味」のありがたみをひしひしと感じるようになります。

以前はそれを「おふくろの味」と呼んでいました。
これからの時代、なんと呼ばれるようになるのか、ちょっと楽しみです。

さて、次回は、食の未来を担う10代に焦点を当てながら、「食と未来」について考えてみます。

今後もぜひ皆さんと一緒に、「食と○○」を見つめていきたいと思います。


注釈

*1  食生活ラボ調査vol.5 インターネット調査、15~79歳1200人、2016年9月、ビデオリサーチ

*2  食満足度=現在の食生活を10点満点で点数化。これに対する、食や生活にまつわる意識・行動項目の影響度を重回帰分析で把握。

*3  目的変数(食満足度)に対する影響の大きさの指数化したもの。例えば0.177というスコアの意味は、説明変数の偏差値が1上がったときに、目的変数の偏差値が0.177上がる、という意味。