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この世は「手段」と「目的」で出来ている

ろーかる・ぐるぐる №124

  • 山田 壮夫

2018/01/25

この世は「手段」と「目的」で出来ている

蜂の子 白スパ&レバ野菜
 

「風邪を引きそうになったら、シロスパレバヤサイな!」

会社に入って間もない頃、先輩に言われた言葉です。そしてこの呪文の正体は「白スパ、レバ野菜」。築地にある旧本社ビル近所のフランス料理店「蜂の子」で楽しめる、何もかかっていないスパゲッティ(だから白スパ)とデミグラスソースで味付けをしたレバーと野菜のセットメニューです。

いまでも風邪の気配を感じると懐かしく、無性に食べたくなります。

そういえば、新入社員だったぼくが一番最初に入れてもらったプロジェクトチームのテーマは「ラダリングによるブランド開発」でした。商品やサービスが生活者にどのようなベネフィットや価値をもたらすか把握するための定性分析手法である「ラダリング」を、たぶん当時電通としては初めて、実際の商品ブランド戦略に応用していこうという取り組み。そしてそこでリーダーを務めていたのが、いま電通総研で所長をしている丸岡吉人さんでした。

ラダリング
ラダリング

たとえば「あなたは、なぜビールを飲むのですか?」。インタビューの対象者が「のどの渇きを潤すため」と答えたら「なぜ、それが重要なのですか?」を繰り返し問い掛け、「疲れが癒えるから」という情緒的ベネフィットや「健康で元気に暮らしたい」という価値観にまでさかのぼります。と同時に、対象者が「のどの渇きを潤す」ことを、「どうやって、(ビールで)かなえているか?」を探り、たとえば「炭酸が強く、スッキリした味わい」という商品スペックを大切に思っていることを突き止めます。

このようにラダー(はしご)を登ったり、降りたりするように、価値観と商品スペックの間を行ったり来たりしながら、ある生活者がブランド選択をする際にどんな心理を働かせているのか、構造を把握する手法です。

そして、この「ラダリング」を支えている理論が「手段目的連鎖モデル」。商品スペックという「手段」によって機能的ベネフィットという「目的」は達成され、こんどは機能的ベネフィットという「手段」によって情緒的ベネフィットが達成され…という構造で上の「目的」と下の「手段」がつながっているという考え方です。

手段目的連鎖
手段目的連鎖

会社に入って早い段階で、この「手段」と「目的」の連鎖でモノゴトを整理する経験をしたことは、後々、とても大きな財産となりました。というのも、ちょっと極論が過ぎるかもしれませんが、ビジネスがうまくいかない原因は、たいていこの「手段」と「目的」の混乱にあるからです。「真の目的」が曖昧なまま、いつのまにか手段が「偽りの目的」として君臨しているケースは多いものです。

たとえば「もっとお客さまに愛されるために」ブランドの「提供価値」やら「ビジョン」をペーパーで整理することがあります。その目的は必ず「もっとお客さまに愛される」ことのはずですが、いつのまにか(本来手段であるはずの)「提供価値」や「ビジョン」の文言を守ること自体が目的になったりします。

あるいは(前回も地方自治体の例でお話ししましたが)コミュニケーションの「目的」をあまりよく考えないで「認知の獲得」と置いてしまった結果、いつまでたっても何をすべきか曖昧で、実効のある施策が打てない場面をよく見かけます。

そのままでは手におえない状況を理解可能な小さい断片に分け、それを論理で再び結びつけ全体を把握するというアプローチは、ロジカル・シンキングの基本。「手段」と「目的」で状況を整理する技術は、知的労働者が身に付けるべき方法論です。そしてこれをぼくに教えてくれたのが、丸岡さんでした。

丸岡さん
丸岡さん

ところが。

あれから二十余年。新しい電通総研のプレスリリースを見てビックリしました。そこで感じられたのは「手段と目的では、この世をつかまえきれない」という思想だったからです。その詳細は、また次回。

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