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スマートフォン 創造的破壊の10年No.1

ログデータが語るスマホ利用の現在

2018/03/06

25年以上の歴史を持つ情報メディア白書が、今年も2月21日に刊行されました。

その刊行記念企画として、『情報メディア白書 2018』の巻頭特集「スマートフォン 創造的破壊の10年」の各テーマの連載をお届けします。

今年iPhoneが日本で発売されて10周年を迎えました。この10年はスマートフォンによる「創造的破壊」がメディアビジネスの領域で進んでいきました。スマホが既存のメディアを大きく変え、全ての情報メディアがスマホを前提としなければ成り立たなくなっています。

この間、何が変わり、何が変わらなかったのか。

電通メディアイノベーションラボの独自調査からの知見に基づき、同ラボの私、美和晃が、さまざまなメディアとマーケットに地殻変動を起こした10年を総括します。

ログデータが明らかにするスマホのリアル

第1回は、インテージi-SSPモバイルパネルによるログデータに基づき、スマホ利用の現状を紹介する。インテージのデータには、日本で多数を占めるiPhoneのデータも含まれている。

「起動」とは、LINEなどで着信があったとき、アプリを立ち上げてスマホの画面の一番前にくることをいう。画面の後ろで動いている常駐アプリは極力排除して、意識して立ち上げたことが確認できるようなログを「起動」としてカウントした。

起動率とはその1時間の間に1回でもスマホのアプリを起動した人の割合を示している。

昨年の1月の1カ月間、1万人強のパネルの人たちの端末に残っているアプリ利用記録のログデータを集計した。

このデータからまず分かるのは、1日を通じて4割程度の人が1時間に1回以上起動しているということだ(インターネットを通じてやりとりするアプリのログだけが「起動」としてカウントされているため、実際の起動率はさらに高いと想像される)。

昼休みに一番のピークがあり、夕方からテレビがよく見られているゴールデン、プライムタイムの19時から22時くらいに山がくる。

1日を通じて使われているのが、グレーのブラウザー、その上の黄緑のインスタントメッセンジャー。さらに、その上の水色で太く出ているのがソーシャルネットワーク。ゲームは夜の方が使われるという特性が見えてくる。

通勤・通学電車の車内に乗り合わせたら、誰が何をしているのを目撃するか?

1日の中でのアプリ利用のバイオリズムを把握したところで、次に気になるのは電車移動の多い日本での通勤・通学時における利用実態だ。

こちらは昨年12月に実施した、ログベースではなくアンケート調査。ログデータからは何のアプリがいつ起動されたかは分かるが、ユーザーに関するTPO、例えばどこにいたのかなどユーザーの生活を見渡す上では十分とはいえない。

生活の1シーンを垣間見るという意味では、アスキングベースの調査にも一日の長がある。学校で?食堂でご飯食べながら?友達と一緒に?一人でいるときに?といった、具体的な生活シーンで切り取ったユーザーの実態を示すために、1シーンの一つである通勤・通学調査の結果からエッセンスを紹介したい。

週1回以上電車で通勤・通学している人を対象に調査した。通勤・通学するうち、スマホを何日、何のためにどのくらいの間使っていますか?と聞き、スマホ以外では「中吊り」「映像ディスプレー」「本」などに何日接しているかと尋ねた。

何もしない、あるいは居眠りしている人もいるので、どれもしていないという人もいる。通勤日数、片道の通勤時間で、ウエートをつけて加重平均したものを割り戻したのがこの図である。「電車に乗り合わせたら何を目撃するか?」を1両の車両全体を100として図示した(サンプル数861)。

図を眺めて第一に気付くのは、スマートフォンが通勤・通学のメジャーな活動になっている(63.9%)ということ。スマートフォン以外に充てている時間は36%。

さらにスマートフォン利用に関してブレークダウンしていくと、SNSなど交流サイト的なものが一番多く(12.9%)、次は検索をしている人が多い(8.5%)。前述のログのデータと変わらない傾向を示している。

次がゲーム(7.1%)で、ニュースや情報配信を見ている人も多い(6.6%)。音楽再生(5.2%)にはただし書きをつけており、音楽再生にちゃんと意識を持っている時間だけ答えてください、としている。

従来型のワンセグ放送を見る人はかなり少ない(0.4%)。若い人のテレビ視聴の落ち込みがいわれてるが、今後放送コンテンツが多くの人に届けられない状態になりかねない。テレビ番組をネットで同時配信して、テレビを見なくなった人にもリーチできるようにしたいという議論にもつながってくる(このテーマについては次回以降に掘り下げる)。