It's PR, but not as we know it: 外国人が驚く日本のPR事情No.2
ポイント2:直訳ではなく、日本のスタイルで書く~日本流の伝え方
2018/03/23
まずは日本語で
英語は世界的な「共通言語」だ。しかし、日本では英語がビジネス文書で通用しない場合が多い。ある外資系上場企業のクライアントに「和訳するとニュアンスが変わるため、株主をミスリードする恐れがある」という理由で、英語のまま翻訳せずにプレスリリースを配信してほしいと言われたことがある。
香港やシンガポールでは、英文のプレスリリースをそのまま配信しても読んでもらえるので、日本でも英語のままでよいのではないかと、本国のPR担当の方が思われたのであろう。しかし、英語のままメディアに送っても、忙しい記者に読んでもらえるチャンスはほとんどない。
直訳ではなく、ローカルのスタイルで編集
日本では日本語のリリースが必要だが、それも直訳のままでは記者から嫌がられる。プレスリリースの問い合わせ先も、欧米ではPR会社の社員の名前があればOKだが、日本では、発信元の企業の担当者の名前がないものはメディアから好まれない。PR(パブリックリレーションズ)という職業の社会的な立ち位置が、欧米と日本では異なるためであろう。
言語、文章のスタイル、情報発信のルールなど日本のメディアが好むルールがある。それらを守らなくてはならないことを、外資系企業のPR担当者は、本国のPR担当者に知ってもらう必要がある。
「夜討ち」「朝駆け」
『Communicating: A Guide to PR in Japan』では、こういった報道資料の留意すべき点に加え、「夜討ち」「朝駆け」といった日本メディアの取材方法についても触れている。夜討ち、朝駆けは、メディアの記者がアポイントメントや予告なしで、取材対象者の自宅に深夜の帰宅時や早朝の出勤時を狙って取材に行くことである。
実際に記者の夜討ちにあった外資系の日本法人の社長がかつていたが、広報担当者はトップ、役員などの本人だけでなく、家族にも夜討ち、朝駆けの対応策について説明しておく必要がある。
記者クラブ
外資系企業の広報担当者はさらに、日本の記者クラブについても本国にその仕組みを説明しなくてはならないことが多い。確かにアメリカのホワイトハウスやフランスなど、プレスに記者証を発行し、メディアによる情報アクセスに制限を設けている国もあるが、日本ほど報道情報を管理しているところはない。
全国の官公庁、経済界のすみずみに、限られたメディアのみが所属できる記者クラブが存在し、情報発信のタイミングや発信方法のルールを取り決めているのである。その正確な数は定かではないが、2004年8月22日付のThe Japan Timesの記事「Keeping it in the club」によると、当時の推定数字ではあるが、日本には約800の記者クラブが存在するともいわれている。
第3回では、日本のソーシャルメディア事情を外国人に手短に説明するためのポイントに触れていきたい。