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AIビジネスで躍進を狙う、電通×データアーティスト社の強力タッグ

AI MIRAIが考える、ちょっと先のAIとシゴトNo.2

2018/05/22

AIビジネスで躍進を狙う、電通×データアーティスト社の強力タッグ

AIの新たな可能性を模索する電通のプロジェクトチーム「AI MIRAI」。その推進エンジンとして新たにデータアーティスト社を迎え、AI戦略をさらに加速させていきます。AIの未来を、電通グループはどう描く? AI MIRAIを統括する電通の児玉拓也氏とデータアーティスト社社長の山本覚氏、2人のキーマンが語り合います。

左からデータアーティスト社社長・山本覚氏、電通・児玉拓也氏

電通×AIはマーケティングを超え、事業・社会課題へチャレンジ

児玉:広告・マーケティングの企業として、AIをビジネスの現場でどう絡ませていくか?このテーマに向かって、2017年からAI MIRAIが走り始めましたが、データアーティスト社(以下、DA)の子会社化で一気にその推進力が増したなと感じています。

山本:テクノロジーの領域は、電通の成長戦略の大きな柱だと認識しています。AI MIRAIの取り組みが第一歩になって、電通の広告ビジネスが革新的に変われば、マーケティング領域だけでなく、社会にも影響を与えることができると思っています。

児玉:DAはこれまでもマーケティング領域のAI開発に取り組んでいました。そもそも、電通との協業を始めたきっかけはなんでしたか?

山本:AIがどんどん普及していく中で、AIマーケティングを他の領域に活用できないかと思ったからですね。例えば、「人々の行動から感情を分析するエンジン」。どんなときに心の具合が悪くなるのかをデータ化すれば、その結果をメンタルヘルスケアに生かせるんじゃないかと。

そう考えたときに、電通が一番データを持っていて、なおかつ各企業への営業チャネルが豊富な会社ということで、ぜひとも一緒に開発することができたらなと思いました。

児玉:実際、電通のAIビジネスは広告以外の領域にも期待されていると感じています。企業からよく相談を受けるのが、「事業全体の中で、どこでAIが使えるのかを一緒に考えてほしい」というようなことです。電通の強みは、広告領域の実績もさることながら、今まで培ってきたコネクションやデータの豊富さに加え、本質的な事業課題の発見力にあると感じます。

ちなみに、今までのDAとの取り組みをざっと振り返ってみましょう。まず、デジタルマーケティングの最適化に取り組みましたね。

山本:そうですね。最初はメディア周りからですね。テレビの視聴率予測システム「SHAREST」だったり、マスメディアとウェブ広告の統合マーケティングプラットフォーム「STADIA」だったり。

児玉:データ推論のAIから始まって、その後は、言語や画像の分析といった他の技術領域にまで拡張しました。電通との取り組みによって、DAのサービスラインの可動域もかなり広がってきてると感じています。相互に可能性を広げ合っている感じがします。

2018年、AIは「予測・推論」から「自動生成」へ

児玉:実は先日、電通の決算説明会がありまして。その中で社長の山本が、「電通のデータ/テクノロジー戦略のひとつには、AI領域が据えられている」と、AIについても触れていました。

広告領域をAIでどう最適化して、どう付加価値の高いものにしていくか。それだけでなく、クライアント各社の経営課題をAIでどう解決していくか。今後は、社外にソリューションを提供する局面が増えていくんじゃないかと思います。

山本:そのあたりは、世間からも期待されていると思います。2020年には、東京オリンピックもありますからね。それまでに少なくとも、広告関連のAIテクノロジーは完成しているべきだと思うんですよね。

児玉:電通としても、そのための戦略やロードマップを練っていかないと。僕らからするとDAの存在は、「使える武器がひとつ増えた!」ということで頼もしさを感じています。

山本:これからも武器はどんどん増えていくと思います(笑)。AI業界でも、今がまさにAIのターニングポイントだといわれています。これまでのAIは、「どの商品がいいか」「視聴率はどのくらいか」というような、選択肢から最適なものを選ぶことしかできなかった。これからは、AI自らが何かを「つくる」という方向に向かっていきます。

児玉:なるほど。今のAI MIRAIでも、「自ら画像をクリエートする」「コピーを考える」といった、分析フェーズからクリエーティブの自動生成フェーズへ差し掛かっています。デジタルだけでなくリアルやオフラインを含めてデータを連携させ、そこからクリエーティブをつくっていき、AIを活用して「電通とDAでしか提供できない価値」を提供できるといいなと思っています。

※参考:AIコピーライターAICOの連載

データ化しにくい「クリエーティブ」こそ、AIの出番

児玉:AIの広まりによって、ビジネスのやり方にも変化が出てくると思っています。さまざまなクライアントやプレーヤーを巻き込んでの新たな展開が期待できるのではないかと。

山本:DAとしても、引き続きデータの予測や最適化を目指しつつも、同時に「AIでクリエーティブをつくり出す」という大きな目標を掲げています。コピーライティングや映像、画像などはデータ化しにくい部分ではあるのですが、だからこそAIの得意領域で、どうにかして自動生成できるようにしたいと思っているんですよ。

児玉:近い将来、「AIがテレビCMをつくる!」なんてこともあり得ますね。そうなると、クリエーターに求められるスキルは一変しそうです。

山本:この1年間で、電通のクリエーターにも変化があったんじゃないですか?

児玉:実は最初、社内に「クリエーターの仕事をAIに取られるのではないか」という声がありました。ですが今では「新しい時代のクリエーターの在り方を模索するべきだ」という考えの人が多いですね。

さらに、社内のクリエーターたちによる「AIクリエーターズクラブ」も始動しています。AIコピーライターの開発チームや、質疑対応型のチャットボットを設計するチームなど、いくつかのチームが同時多発的に動いています。

クリエーターの仕事がAIに移る、という直線的なものではなくて、AIとクリエーターが互いに協力しながら、それぞれの得意領域を伸ばしていくというイメージになってきました。

山本:クリエーターの変化に合わせて、AIのロジックも進化させていかなければならないと思っています。ビッグデータをそのまま取り込むだけのデジタルマーケティングから、今は、クリエーターのセンスをAIに学習させるというフェーズに突入しています。

例えば、AIコピーライターの開発チームでは優れたコピーをAIに学習させていますが、コピーライターに100万本ものコピーを書いてもらうわけにはいきません。だから、「100本の中から名コピーのエッセンスを感じ取ってくれるAI」の開発が必要なんです。

児玉: いわゆる「転移学習」てすね。たくさん学習して「良いコピーのコツ」を学んだら、別の案件で、そのコツを活用(転移)し、少ないデータの中から良いものを選び取るという。AI時代に対応すべくクリエーティビティーを進化させるというだけでなく、求められるクリエーティビティーからAIを進化させる。

山本:その両面から進化させることが大事だと思います。

児玉: こうした進化が実現すると、クリエーティブという仕事そのものが一気に変わりますよね。今までは打ち合わせでクライアントの要望を聞き、社内に戻ってカンプをつくり提案する、という流れが一般的でしたが、もしかしたら「その場でカンプをつくり、提案し、調整する」ということができるようになるかもしれない。

働き方というよりビジネスモデルが変わり、「受注型ビジネス」から「協創型ビジネス」に移り変わっていくのではないかなと感じています。

また、これによって、クリエーター以外の人間でもクリエーティブ領域の仕事することも可能になります。例えば、定型的な案件であれば、ビジネスプロデューサーが素早くクリエーティブな提案をするというようなことが容易になる。

そうなると、ワークフローもガラリと変わると思います。AIを開発する上では、それによりビジネスの全体像がどう変わるのか、を常にイメージすることが重要だと考えています。

モンゴルを拠点に、世界レベルの開発が進む!

児玉:今後、DAは電通のAIソリューションの開発部隊として、モンゴルに開発拠点を設置する計画を進めています。「なぜ、モンゴル?」と不思議がる人も多いと思いますが…。

山本:そうですね。まず、国の経済成長率がすごい。たった十数年でGDPが10倍ほどに増えています。

児玉:シンガポールでさえ年8%ですからね。

山本:しかも、彼らの基礎学力が非常に高いんですよ。学校の部活動に数学部があって、その中でも特に点数の高い生徒を集めて特進クラスをつくる…ということが普通に行われているんですね。

児玉:すごいですねえ。

山本:そんな中で今、「数学だけでなくAIも」と、国策で教育面をどんどんAI寄りにかじを切っている状況なんです。

さらに、実はモンゴルって、資源大国なんです。日本からのAI技術支援で、先進国化させるという人類初の試みにチャレンジしてみたいんですよ。

児玉:国と国との新しい連携の仕方ですね。モンゴルのエンジニアとの協業もますます進んでいくと聞いています。

山本:そうなんですよ。約20人のDAのエンジニアがモンゴルからやって来ます。優れたエンジニアは常に、いかに自分の業務を減らし、繰り返し作業を効率化するかということを考えています。いつまでも汗をかき続けているんじゃなくて、汎用化できるものをどんどん積み重ねている。こうした考えや動きから、電通社員が学ぶことは少なくないと思います。

モンゴルのエンジニアにとっては、電通における「心遣い」や「営業マインド」が刺激になることでしょう。やっぱり、エンジニアの動き方と、プロデューサーや営業の動き方は全然違うと思うんですよね。国の違い、職種の違い、企業文化の違いが双方にとってプラスの作用をもたらすのではないかと、とても楽しみにしています。

児玉:僕らも彼らに飽きられないように、面白い課題をいっぱい投げ込みたいと思っています。

山本:ありがとうございます。距離が圧倒的に近くなるので、どんなささいな案件も即対応できればと。速いスピードで、小さなPDCAをたくさん回すことを目指します。

児玉:AIの開発では、「AIならではの予測不可能性」を受け入れることが欠かせません。僕らが思う通り、正確に、狙った精度で学習してくれるとは限らない。ですから、「失敗もひとつの成果」と割り切って、スピード感を持って進めなければならないんですよね。

多産多死をしていかないとうまくいかないというか。いかにクイックできるかも競争力になっていくと思います。小さくスピーディーにプロジェクトを進めていくというのは大切なことだと思いますね。

山本:そうですね。電通社内のクリエーティブな仕事だけでなく、クライアントへの提案もよりスピーディーに進められる体制になると思います。

児玉:それは楽しみです。僕らだけでは見つけられなかった新しい価値観を、どんどん生み出していけるという予感がしています。国籍も職種も文化も違う中で、お互いにいい刺激を与えることができるとうれしいです。