「AIのバナー広告自動生成」のタネ明かし!?
2018/09/20
デジタル広告ではターゲットのセグメント化やパーソナライズなどが可能なため、それに応じて広告表現もどんどん細分化していく傾向があります。さらに何度か目にするだけですぐに飽きられる広告は切り替えのサイクルも早いので、求められる広告表現パターン数が膨大になるという課題があります。
2018年5月、電通AIプロジェクトのAI MIRAIと電通デジタルから、「ADVANCED CREATIVE MAKER(アドバンストクリエーティブメーカー)」(β版)を発表しました。
AIのチカラでバナー広告を自動生成してくれるという魔法のようなツールがついにできたのです!
といっても、実際のところどれくらい使いものになるのでしょうか?そもそも、一体どうやってバナー広告の自動生成を行っているのでしょうか。今回はそんなギモンにお答えすべく、紹介していきます。
概要を分かりやすく解説した2分ほどの動画がありますので、まずはご覧ください。
どうやって使うの?
ADVANCED CREATIVE MAKER(以下ACM)を使うには、最初に作成したいバナー広告のオリエン情報をインプットします。業種やキーワードなどをテキストボックスに入力し、商品画像やロゴデータなどをアップロード。
キャッチコピーをAIコピーライターのAICOが自動生成した候補から選んでチェックし、「生成する」のボタンをクリックすればOK。それだけでバナー広告の全自動生成が始まります。
自動生成のしくみ
AIによるバナーの自動生成をタネ明かししますと、ACMは大きく二つのAIを搭載しています。
一つ目のAIは、どんなバナーにすべきかを人間の代わりに考えてくれるAIです。バナー広告を構成しているのは、テキストや画像素材、レイアウトや色などのクリエーティブ要素です。AIはこれらのクリエーティブ要素とCTR(広告表示回数に対してクリックされた割合)との関係性を過去のデータから学習しており、オリエン入力に応じて適していると思われるクリエーティブ要素の候補を考え出してくれます。学習のところでは、ディープラーニングを使用しています。
次に、選り抜きのクリエーティブ要素を使って、ACMがいろいろな組み合わせのバナーを大量に生成します。例えばコピーの文字色と背景色が同じ色になってしまっていても、お構いなし。細かいことは抜きにして、とにかく大量のパターンをもくもくと生成していきます。玉石混交のバナー広告がおよそ数千〜数万枚。人間にはちょっとマネできない、コンピューターならではの作業です。
ここで二つ目のAIが登場します。出稿すべきバナー広告を選別してくれるAIです。出来上がったバナー広告の一つ一つについて、AIがCTR(クリック率)予測を行っていきます。効果が高いと予想されるバナー広告から順にランキング形式でリスト化されるので、ユーザーは上位の中から良さそうなものをいくつかチョイス。最後はデザイナーが人間の目で見て確認。必要に応じて修正を施し、出稿できるバナーに仕上げていきます。
クリエーティブな作業を支援して、もっとクリエーティブに
より良い表現案を検討するために、候補となる草案をズラリと並べたり、たくさんのパターンを実際に作成したりすることは、クリエーティブの現場では日常的なことです。そのプロセスの中に少しでも反復的な作業があれば、そこは自動化してしまおうというのがACMの考え方です。これまでは感覚的な判断が含まれる作業の自動化は難しかったのですが、AIを活用することで、感覚的な判断の反復作業も自動化できるようになってきています。
面倒な作業をAIに任せることができると、どうなるか。
人はこれまでと同じ時間だけ作業するにしても、もっと大事な判断や新しい発想を必要とする領域にエネルギーを注げるようになります。AIにブーストされることで、人間はさらにその先のクリエーティブを探求することができると思います。
時には、人が気付かなかった表現と効果の関係性をAIが見つけたり、AIが生み出した新鮮な切り口を参考に、新しい表現にたどり着くということもあるかもしれません。そういう関係を、クリエーティブの現場で築くことができればと思います。
AIバナー自動生成の実力はいかほど?
少し夢のような理想論を語ってしまいましたが、ACMはまだβ版。現状でどれくらいのことができるのでしょうか。実際にACMを使いながら試してみたいと思います。
まずはオリエン情報の入力。
「DD TRAVEL」という架空の小さな旅行会社が、競合ひしめく中にブランド広告を掲出する、という状況を想定してみましょう。
想定するターゲットはビジネスマン。キーカラーはブルー。キャッチコピーの生成では、「旅」「リゾート」「海外」をキーワードにしています。
さあ、どんなバナーがAI自動生成されるでしょうか!
ストレートなものからちょっとひねったものまで、なかなかバラエティー豊かな案を出力してくれました。
「コスパ旅。」のように、4文字にシズルを詰め込む芸を見せたかと思えば、「旅のための、昨日でした。」というコピーでは、慌ただしい日常を一区切りして、パーッと海外に出る気持ちよさも表現できていると思います。
思わず二度見してしまったのが「旅行代理店との距離が、少し縮んだ気がした」というコピー。なぜそこを訴求したいと思ったのか…ちょっと気になります。読めば読むほど何のための広告か解らなくなりますが、こういう妙な案が見られるのもAIの楽しみの一つですね。
「働く人の、海外旅行になれると思った」。これは切り口が少し新鮮で、意味も通ります。忙しいビジネスパーソンでも行けるプランが用意されてそうですね。思わず価格やサービスを見てみたくなります。
こんな感じで、使えそうなものから自由過ぎるものまで、ACMはいろいろなバナーを生成してくれます。
さてここで問題です。この中でAIが一番CTRを高いと予想したのはどれでしょうか?
答えは
でした!
人間の肌感覚と合ってましたでしょうか?成長途中のAIの予想ですので、確度はこれからかもしれませんが、AIのよいところは時間が経ってデータが増えるほど賢くなっていくところです。
今後の開発では、予測モデルをさらに精緻化し、レイアウトパターンや他のサイズにも対応するなど、使いやすさもクリエーティブ力もどんどんブラシュアップしていく予定です。
AIを上手に使ってちょっといい未来にしていきましょう。