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食ラボの視点 ~「食と○○」を考えるNo.5

何が「モテる」違いなのか~「食と恋愛」を考える

2018/05/17

食生活ラボ(通称:食ラボ)の連載も今回で5回目を迎えました。「『食と○○』を考える」という形で、食をいつもよりちょっと広い視点で捉えてみようというこの企画。

今回は「食と恋愛」がテーマです。

昔から食の場が恋愛の場になることが多くありました。米国の心理学者グレゴリー・ラズランの研究では、飲食をしながら相手と話をすることで、おいしい食事によって得られた快楽が、その時の相手や会話内容に結び付けられて、相手への好意度が高まることが立証されています。

このように結び付きの強い「食と恋愛」。これまでの連載で紹介してきた「食の意識変化」や、出会いやジェンダーの形が移り変わる現代の「恋愛意識変化」の中で、「食と恋愛の関係」は年代別にどうなっているのでしょうか。年代別に見ていきます。

今回は、このあたりのことを見つつ、食をひもといていこうと思います。

年代間で「モテる」食意識は異なるのか!?

「モテる」人物というのは年代が変わっていくことで、大きく変わっていきます。今回は「モテる人」が「モテない人」と比べて食に関するどのような特徴を持っているのか?という部分を年代別にひもといていきたいと思います。

今回も「食生活ラボ調査vol.5」※のデータを用いて、分析していきます。

今回の分析では「10~20代」「30~40代」「50~60代」×男女の性において、「異性にモテる方だと思う」と答えている「恋愛ライフ充実派」と「異性にモテない方だと思う」と答えている「恋愛ライフ未充実派」の2者間の食意識の違いがどこにあるのか解説していきます。

ちなみに、自身を異性にモテる方だと思うと答える人の割合は、性年代別でいずれも3割程度とやや少数派といえます。特に、若い年代ほどモテていると思っている人が少ないようです。

やっぱり「料理好き」は恋愛の最強テクニック

最初に、全性年代に共通する充実派の傾向から見ていきます。昔から手料理は最強のモテテクニックといわれていますが、やはり充実派には「料理が好きだ」と思っている人が多いようです。性年代を問わず、料理好きはいつの時代も満足いく恋愛ライフを過ごしているようです。

以下では、各年代に共通ではないものの、年代特有の充実派の意識を見ていくことで、「恋愛を充実させるために必要な食意識」をあぶり出していきます。

10~20代では「磨かれた食コミュニケーション力」が重要

グラフは各性年代の充実派と未充実派の食意識を比較したグラフになります。「食事自体より食事を通じたコミュニケーションの方が楽しい」「食べる場所や空間の雰囲気を大事にしたい」という意識において、10~20代の充実派男女共通で特徴的に高くなっています。

この年代に強く見られるこの傾向は、“恋愛が充実している”と感じるために必要な意識と考えられます。

確かに、10~20代では他年代に比べても合コンなどで食の場を恋愛の場とすることが特に多く、食そのものだけでなく、食におけるコミュニケーションや取り巻く環境まで含めて気を配れるかの差が、充実派と未充実派の大きな差を生み出していると考えられます。

10~20代の中でも、男性の充実派の特有の意識としては、「ひとりで食べることは寂しい」という意識が強いことです。意外にもひとりで食べることは寂しいと思うような寂しがりな男性ほど恋愛が充実していると感じているようです。

確かに、寂しがり屋な性格の方が自ら人を食事に誘い出す機会が多く、そのような機会が多いことが結果恋愛ライフの充実という結果につながっているのかもしれません。

一方で、10~20代の女性の充実派特有の意識としては、「食べたりしたことがないものでも、新しいものは試したくなる」が挙げられます。

新しい食に積極的に挑戦したいと思う女性ほど充実派である背景には、おそらく話題にしやすい新たな食に積極的な人ほど、その食の場自体やその経験を周囲に伝える会話などでコミュニケーションの機会が多くなり、結果、異性も含めて会話の機会が増加することが要因ではないかと考えられます。

いずれにせよ10~20代においては、「コミュニケーションの場」として食を捉え、そのコミュニケーションの機会をいかに多く手にするかが男女共通して充実派になるための非常に重要な要因になっているようです。

30~40代は「相手思いのコッテリ好き」が重要

30~40代の男女で共通で見られた充実派特有の意識としては、「濃厚・こってりな味が好き」。30~40代で「濃厚・こってりな味が好き」な人が充実派である背景には、あくまで想像ですが「こってり好き」な人の方がよりエネルギッシュな人が多く、恋愛にも積極的なのかもしれません。

このようなこってり好きな30~40代の充実派が「みんなと一緒に食べたいと思う料理」を、未充実派との差分が大きいものでランキング化して見ていきます。こちらを見ていくことで、こってり好きな充実派男女が自分以外との食事の際に、特にどのようなものを特徴的に選んでいるかが見えてきます。

充実派女性を見ていくと、「ステーキ」「天ぷら」「とんかつ」などのがっつり系の料理ともいえるものが上位を占めています。

一方で充実派男性を見ていくと、女性とは対照的に「おでん」「そうめん」などあっさりした料理が上位に挙がってきています。

男女共に充実派のこってり好きは共通していましたが、なぜ自分以外の誰かと一緒に食べる食事のシーンでは選びたい料理に大きな違いが生じたのでしょうか。

この問いですが、そのシーンを想像すると理解できるかもしれません。男女みんなで食事をする際に、焼肉やとんかつのような男性が好みがちながっつり系の食事でも、もし女性が一緒になって楽しんでくれていれば安心であり、一緒に居やすいと感じられ、結果、相手を魅力的だと感じるということは十分に考えられます。

逆に男性においては、こってり好きであるものの、相手の女性にも気を使って「あっさりした食事」をみんなで食べようという心配りのできる男性が魅力的に見えると考えられます。

30~40代においては、こってり好きという共通の傾向があるものの、さらに、食事の場では相手への心配りができることがモテる要因のようです。

50~60代は「日々の食へのこだわり」が重要

50~60代の男女の充実派では、みんなと食べるようなハレの食事の機会ではなく、「朝ごはん」「家で飲むお酒」などの日常に触れる食に強いこだわりを持っている人が多いようです。

50~60代においては、グルメが一つのトレンドだと考えると、そういった流れの中で日々の食の場面においてしっかりとこだわりを持っている人たちの方が「パートナーらとの愛情生活」が充実しているというのも納得がいくかもしれません。

以上のように、恋愛を充実させるために重要な食意識を年代別に見てきましたが、各年代それぞれ特徴が異なりました。恋愛という観点から食を捉え直してみると、年代別に食を訴求する際に、今までと少し違った見方ができるかもしれません。

食を食だけに限った分野で考えるのではなく、異なる分野/領域の視点を取り入れたちょっと広い視野で捉え直そうという発想で始まった連載は各回それぞれ大きく異なる内容だったのではないでしょうか。

食を見ていく際の視点である「食と○○は」、この他にも無限に存在していると思います。今後もぜひ皆さんと一緒に、食と○○を見つめていきたいと思います。

注釈*<調査概要>
・タイトル:食生活ラボ調査vol.5
・調査手法:インターネット調査
・調査対象:15~79歳1200名
・実施時期:2016年9月
・調査会社:ビデオリサーチ