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料理に欲す、オンナたち。〜「食とSNS」を考える〜

食ラボの視点 ~「食と○○」を考える №4

  • 天畠 紗良

2018/04/12

料理に欲す、オンナたち。〜「食とSNS」を考える〜

初めまして。連載第4回を担当する食ラボの天畠紗良です。

連載第2回では「若者の食」をテーマに、コンテンツ化する10代の食についてひもときました。その中で「インスタ映え」についても触れましたが、今回は自分でつくる料理にフォーカスしながら、各世代の女性における「SNSとの距離感」や「料理との向き合い方」を見ていきます。

結果として分かったのは、料理で満たす欲求が世代によって異なる、ということ。女性の気持ち、特に私自身の世代でもある20代女性の気持ちに、ググッと迫ってみたいと思います。

SNSに〇〇を投稿したい人は減っている

2017年、「インスタ映え」が流行語大賞となり、SNSへの投稿意向は上昇し続けている。

…と思いきや、食という観点からは違った動きが見えてきました。

グラフ1:1年前と比べて増えた/減ったマインド(女性全体)

グラフ1は、2016年9月に食ラボが独自に行ったインターネット調査「食生活ラボ調査Vol.5」(*1)から抜粋したもの。「自分でつくった料理をSNSやブログなどに投稿したい」というマインドが前年と比べてどのように変化したかを表しています。「高まった」と回答した人はたったの3.5%、25%強の人が「弱まった」と回答しており、SNSへの投稿意向が減少していることが見て取れます。

グラフ2:料理の傾向や考え方(女性世代別)

一方、グラフ2は、「満足のいく料理をつくったときはブログやSNSに投稿したくなる」というマインドを世代別に見たものです。依然として10代には「自分の料理をSNSに投稿したい」という人が一定数いることが分かります。

もう1点、別のデータをご覧ください。

グラフ3:料理に対する考え方(女性世代別)

グラフ3は、「自分の料理を誰かに褒めてほしい」「人から褒められる味のものをつくりたい」と回答した人の世代別の割合。

ここから読み取れるのは、

10代は「自分の料理を誰かに褒めてほしい」と「人から褒められる味のものをつくりたい」のスコアが、ともに他世代より高い。

20代は「自分の料理を誰かに褒めてほしい」は他世代より高いが、「人から褒められる味のものをつくりたい」は低い。

30代以降は、どちらも低いスコアに。

先ほど見たグラフ2の結果も併せて考えると、10代と30代については納得の結果です。自分の料理への称賛を求める10代はSNSに積極的に料理を投稿、料理を褒められることを期待しない30代以降はSNSへの投稿意向が低い。

その一方で、20代には奇妙なねじれがあるようです。自分の料理は認めてほしい、けれどべつに「味」を褒めてほしいわけではないし、SNSに投稿したいわけでもない。この20代特有のねじれの原因は何なのでしょうか?

20代は、料理とSNSの「はざま世代」

ねじれの原因を探る上で、最初に見ていきたいのが世代ごとに異なる料理との関係性。

グラフ4:毎日料理をする人の割合(女性世代別)
グラフ5:料理をする上で大事にしていること(女性世代別)

グラフ4は「毎日料理をする人の割合」、グラフ5は「料理をする上で大事にしていること」を世代別に見たものです。

二つのデータの10代の結果に注目してみましょう。料理の頻度からいえば、10代にとって料理をする機会はまだまだまれなこと。普段料理をしない彼女たちにとって、料理は一大イベントなのです。だからこそ、レシピを検索し、そのレシピ通りにきちんとおいしくつくることに重きを置いています。

一方、年齢が上がるにつれて料理をする頻度は増加。それに伴い料理に対する非日常感も薄れ、手際や効率を重視する傾向が見受けられます。10代はイベントとして料理を楽しみ、30代以降は日常として料理をこなしているのですね。

肝心の20代はというと、「ほぼ毎日料理をする」と回答した人は34%。料理をイベントとして楽しむ10代は6%、日常としてこなす30代は59%という数字からも、そのはざまにある20代は、料理との関係値が大きく変わる過渡期といえます。

年齢が上がるにつれて高くなる既婚率が数字に影響しているのでは?と思った鋭いあなた。 そんなこともあろうかと、今回利用した全てのデータを未既婚別に見てみました。それでもやはり未婚既婚に関わらず、20代という世代独特の結果が同じように表れてきました。

次に、各世代のSNSとの関係性の違いを見ていきましょう。

10代はデジタルネイティブ度が高く、SNSと日常の切り分けがうまい。SNSをハレの自分を魅せる場として割り切って活用しています。リムジンパーティーやナイトプールが彼女たちの間で流行したのも、「メリハリバブル世代」とも呼ばれる彼女ら特有のオンオフスイッチにうまくはまったことで、格好のSNSネタとして広まったのではないでしょうか。そんな10代にとって、料理とはあくまでも自分を演出するためのイベントでありツール。だからこそ、ハレの場であるSNSに自分の料理を投稿するのです。

一方、上の世代、特に30代以降は、スマートフォンが普及した06~10年にはすでに成人していた世代。10代のようなデジタルネイティブではない彼女たちは、SNSベースで毎日を日常とイベントに切り分けて考えるような器用さは持ち合わせていません。そのためSNSが日常を侵食し始め、疲れを感じたり、投稿したくない・しなくていいという心理になったりするのかもしれません。

そして20代は、イベントとして楽しんでいた料理が日常のものへと変化する中で、まだまだ褒められたいという欲望を捨てきれず、けれど10代のようなSNSとの付き合い方にはどこかなじみきれず、とはいえ30代以上のように達観できるわけでもなく。料理の面でも、SNSの面でも「はざま世代」。このことが、先述の20代特有のねじれに関係しているように思います。

女性は料理で何を満たす?

では、自分の料理を誰かに褒めてほしい、でも味を褒めてほしいわけではない、そんなはざま世代・20代は一体何を求めているのか(ここからはあくまでも私、23歳の等身大の意見であります)。

社会人になり親元を離れ、晴れて一人暮らしデビュー。仕事をもりもり頑張りながらも、家事もきちんとこなすデキ女な私☆休日には彼氏に健康志向な手料理を振舞ったりしちゃって☆☆…なんて理想の自分は、最初の3カ月程度でいともたやすく崩壊。忙しない日々の中で、包丁を握らない生活へと一変していきました。けれど、「体は大事!」と一念発起。「簡単」「フライパン一つ」などの検索ワードに助けられながら、とにかく野菜をたくさん取れて素早くつくれる、料理と呼べない料理を自分のためにつくる毎日…。

それでもどうにか自炊を続けていることを、認めてほしいのではないでしょうか。学生時代の、お金も時間も省みずにつくっていたきれいな料理はフィクションの世界。リアルの食づくりを目の当たりにした20代は、虚構と現実のはざまでねじれながらも懸命に生きているのです。

料理の質、モノとしての料理を褒めてほしい10代。
料理をする自分、料理のリアルとも向き合い始めた自分を褒めてほしい20代。
料理づくりが日常化しているからこそ、褒められることは求めない30代以上。

食とSNSの関係から、世代ごとの自己承認欲求の形が見えてきました。

さて、最終回である次回のテーマは「食と恋愛」。いつの時代も恋愛の場に「食」は欠かせない存在。そんな「食と恋愛」の関係性をじっくり考えてみようと思います。乞うご期待!


注釈*1 <調査概要>
・タイトル:食生活ラボ調査vol.5
・調査手法:インターネット調査
・調査対象:15~79歳1200名
・実施時期:2016年9月
・調査会社:ビデオリサーチ