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差別化を焦る大人、“唯一無二”が重要な若者。

Uターン予備軍を動かせ! №2

  • 奈木 れい

2018/05/18

差別化を焦る大人、“唯一無二”が重要な若者。

前回の記事でご紹介した調査で最も印象的だったのは、有望なUターン移住予備軍の平均年齢が37歳、と想定よりも若かったことです。この結果を見て、どう感じられたでしょうか? Uターンと聞くと想起するのは、いわゆる上京物語にありがちな「東京に出て一旗揚げてやる!」と勢い勇んだものの、思い描いた結果にならなかった…という姿かもしれません。

移住時年齢

しかしながら、今の若い人たちのUターンにはそういった悲壮感はありません。むしろ、生き方の選択肢の一つとしてUターンをポジティブに捉えている様子が見えてきます。この変化には、若い人の価値観の変化、そして世の中の環境の変化が影響していると言えます。連載2回目の本記事では、20代・30代を動かす上で押さえておきたい彼らの実態について触れていきます。

キーワードは、“若者の持つ身軽さ”“親子の意識変化”そして、“都会じゃないと消費できないものの減少”の三つ。

 

ポイント1:若者の持つ身軽さ

若者の身軽さ=一般的な身軽さ(守るものが年長者に比べて少ないため身軽)、ということではありません。ここで意図しているのは、一度地元を出ていったとしても、今の若者は戻ってくることに対しても身軽になっている、ということです。

一昔前は、恐らく地元から出ていくというのは不退転の覚悟で出ていく、成功するまで帰ってこない、といったニュアンスを持っていたのではないでしょうか。それは、地元とのつながりを維持することが難しく、主だった連絡手段が手紙や電話だったこともあり、連絡に費やす労力が今よりもかかったことが理由として想像できます。物理的距離・精神的距離のどちらも遠いことが地元と自分を引き離していたのです。

今であれば、SNSのおかげでどこにいても、小・中学校・高校・大学の友達とつながり続け、LINEを介してすぐに連絡を取ることができます。それは家族も同じです。昨今では、家族のLINEグループをつくってコミュニケーションを行うことが当たり前になっていますが、地元にいても、東京にいても、つながりを維持し続けることができる環境になっていることが、戻ることに対する心理的なハードルを下げているといえます。

 

ポイント2:親子の意識変化

ポイント1では、心理的距離の近さを通じて地元に対する意識が途切れないことを挙げましたが、若者側の意識だけではなく、“親”側の意識の変化もUターンに大きな影響を及ぼしています。家族旅行の写真をインスタグラムに投稿する、家族仲の良さを友達に話す、といったことが当たり前のように近年行われています。

父親・母親を《友達のようだと感じる》母親とLINEを使用

“家族”という存在に対する信頼が改めて上昇していることがさまざまな調査からも分かりますが、この変化は同時に、親側の意識変化も表しています。親としても、近しい存在の子どもたちを受け入れる素地があり、一度地元を出ていったとしても「いつ帰ってきてもいい」という緩やかなスタンスで受け止めることができるのです。

また、昨今では若者の生活状況も変わり、働きながら子育てをすることを考えると、親と近くに住む方がいいという思いを持つ人が増えていることも挙げられます。

実際、先立っての調査でも親の近くに住みたいという回答がUターンの理由として多く挙がっていたことも考えが変化している実態を裏付けているのではないでしょうか。

 

ポイント3:都会じゃないと消費できないものの減少

都会じゃないと消費できないものが少なくなってきた今。もちろん、都会に出ないと体験できないものや場所はまだまだありますが、インターネット環境の普及にもよって、ある程度のものはネットで購入が可能、そしてエンターテインメントもネット環境に応じて体験できる幅が増えてきた。実際に社会学の調査でも、大型のショッピングセンターがある地方と、そういった施設が一切存在しない地方を比較した際の幸福度にはあまり差がない、という結果が出ているようです。

特に一度都会に出た際にさまざまなツールを使いこなせるようになってしまえば、地元に戻っても不便を感じず、同じように生活を行うことができる。むしろ、周囲に家族や友人がいることでより生活の質は上がる、と言っても過言ではないのかもしれません。

これらのポイントから振り返っても、若い世代の中でUターンという行動に対する意識は従来のものと比較した際に大きく異なってきていることが分かります。

「賛成!あたらしい生き方。」(マイナビCMから)などをはじめとして、近年の広告表現などにも顕著に表れていますが、従来当たり前とされていた価値観や概念にとらわれず、“そうじゃなくてもよい”と考えることができる世代がやってきているといえます。

また、どうしても若者を呼び戻したい自治体の方の気持ちに寄り添うと、「いかに自分たちの地域が充実しているか」と主張をすることに注力してしまいがちです。実はそれはもう重要なことではないのかもしれません。

むしろ、どこにいても同じような生活を工夫ひとつでできる時代になりつつある今だからこそ、自分が本当に大事にしたい、唯一無二の存在や経験が生きていく上で重要になっているのです。例えばそれは、忘れられない初めてデートで行った地元の駄菓子屋のおばちゃんとの交流、友達といつも遊んでいた公園など、自分が過ごした街にしかない思い出や人、そしてモノだったりします。

「従来の“こうあるべき”という価値観から脱し」、「自分にとって唯一無二を重要視する」ように変化した若者にとって、地元に戻るということは当たり前の人生の選択肢という時代が来た、ということなのかもしれません。