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1+1=∞ のコラボ・マーケティングNo.5

ニュースのつくり方

2018/06/26

やっとの思いで実現したコラボも、世の中に広がるニュースになるかならないかで、手掛けた側の達成感は全く異なってくるのではないでしょうか。

ただ、ニュースをつくると一言で言っても、不定要素ばかりで決して簡単ではありません。どこかの誰かの発言など、ひょんなきっかけでものすごい速度でブーストしていったり、逆に突然の大きなニュースに隠れてしまって出目が全く得られなかったり、と、真逆の結末が待っています。

運だけに頼らず、ニュースづくりのちょっとしたアシストになるようなヒントをお伝えできればと思います。

相乗る「うまみ」と「リスク」

コラボは、ブランド根幹のコミュニケーションとは離れたところに置かれることが多々あります。それは、ブランド活動として行うべきこととして優先順位があまり高くないこと、相手側からの何らかの影響を(良くも悪くも)受ける可能性があることなどが理由に挙げられます。

そのために、リリースタイミングも、本命の「勝負どき」からは外され、閑散期やニュースのない時期に置かれがちです。リソースを使った開発の場合は、他の案件の状況によって左右されることもあります。

ただし、その「時期」は、ニュースづくりを語る上で、必ずしも消去法で決めていいものではないということに、ここでは触れておきます。時期といっても、ティーザー広告※1を打ち始める日、ニュースリリース日、発売日など、さまざまなタイミングがあります。

最も大切なのは「発売日」かと思われがちですが、お披露目タイミングとなる「情報解禁日」もとても重要です。多くの人が忙しくてスマホを見ていなかったり、翌日に情報番組がない金曜日や連休は、あまりリリース日として向いていないといわれるように、1日単位でのズレが、その後の拡散力に差を生みます。

曜日よりもっと大きなくくりで考えると、カレンダーに載るような定例イベントのタイミングに重ねるかどうか、という判断軸もあります。イベントや行事に相乗りしてニュース発信をすることで、意味づけがしやすくなります。

午後の紅茶とポッキーのコラボの場合は、カップルという企画が際立つバレンタインデー&ホワイトデーシーズンに、商品タイミングを持ってきています(他にも理由はありますが)。

ただし、そういったシーズナルイベントに重ねる際の注意があります。それは、あまたある他のニュースに埋もれるリスクに気を付けなければならないということです。大きなイベントであればあるほど、そこを狙った(むしろその日でなくてはならない)ピンポイントのニュースがたくさんつくられます。

しかし、マスメディアやウェブ、SNSなどで、ニューストピックとして取り上げられる量は変わりません。せっかくの露出の可能性を埋もれさせないためにも、当日ではなく微妙に時期をずらしたりするなどの一考が必要かもしれません。

視点を変えれば、大型イベントのブームに乗っかる、という捉え方もできます。

そのコラボが小売商品であれば、エンド棚※2のような目立つ場所に群で積んでもらえるなど、露出の機会は増えます。もちろん、多くの商品の中の一つにしかなれず、単独でスポットライトが当たらない可能性はありますが。

その半面、イベントがない時期は、1品だけ新しい商品を出しても、エンド棚に積んでもらうまでは至らず、話題にもならないで終売していくリスクも秘めています。

コラボの力を借りて、自分たちのブランドだけでエンドを取り、イベント化させるだけの企画力と、世の中のイベント化するように地道に積み上げる継続性が必要なのです。さらにいうとコラボ企画は、それ自体が話題化する可能性が非常に高いので、広告展開もするのであれば「商品リリース」「ティーザー広告」「商品発売」「発売後広告」など、何段階にも分けてフックを準備しておくのが、話題を長持ちさせるための秘訣です。

その際に話題化してくれるであろうターゲットと場所、道筋は複数想定し、時期を分けて段階的に設計しておくのがいいと思います。

また、ブランド視点での時期選定にも方法があります。

例えばポッキーには「ポッキー&プリッツの日」(11月11日:スティックが並んでいる様から)、午後の紅茶には「午後の紅茶の日」(5月5日:ゴゴと55を掛けて)があるように、ブランドにとってのアニバーサリーに当ててニュースをつくるのも、露出を増やす方法のひとつです。

※1あえてすべての要素を明らかにしないことで顧客の注意を引く広告手法のこと。
※2棚の両側の側面に当たる部分で、商品を目立たせることができる場所。

ニュースの浸透

繰り返しになりますが、コラボのニュースはそれ自体が複雑だということを、忘れてはいけません。

驚きというのは、言い換えれば、普通じゃないことが起きている状況。まずそれをどう理解してもらうか。その上で、どこを面白がってもらうか。最初は、なるべくシンプルで分かりやすいニュースとして、世の中に出していくべきなのです。

プロモーションを考える上でも、この認識は前提条件です。その上で、世の中への浸透具合に応じた、3ステップでフェーズを構築していくことをお勧めします。

上下

第1フェーズは「コアアイデアを伝える」ことに特化すること。情報の直径をなるべく狭めて、強くします。

「●●と△△がコラボした」「□□な、●●と△△ができた!」くらいの、ミニマムな情報です。余計なものをつけず、そのコアアイデアだけで勝負する勇気が必要です。

第2フェーズは、第1フェーズの内容はそのままに、そこに「局所的な深さ」を加えます。まだいたずらに広げていくことは、不必要です。

例えば、コラボの片割れのコアファンにだけ響くようなコンテンツを用意したりするなど、どこか狭い場所で確実にヒットできるポイントを見つけて、狙っていきます。

第3フェーズになってようやく、広く情報を行きわたらせる段階になります。今までニュースが届かなかったところまで浸透範囲を広げていきます。

その後は、さまざまなやり方が考えられます。第3フェーズを繰り返していくことで、世の中ごととして浸透させていくこと。第2フェーズのポイントを変えていくことで、爆発力を狙っていくこと。目的に応じたプロモーションが可能になっていきます。

次回は、最終回。ブランドにとっての新たな入り口になるのはもちろん、世の中をちょっと面白くできるコラボの可能性について、総まとめ的にお伝えします。
(次回につづく)