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コラボするということ

1+1=∞ のコラボ・マーケティング №6

  • 坂本 弥光

2018/07/17

コラボするということ

最終回となりました。コラボマーケティングの総論として、今、私が考えていることを取りとめもなく(?) 書いていきたいと思います。

人は「話題」にいくらまで払えるのか?

コラボレーションは、ご存じの通り、話題になりやすい手法です。話題になるということは、世の中で活発な情報発信・交換が行われているということ。二つのブランドや商品のコラボであれば、ファンも2倍。会話の相手がそのブランドを知っている可能性が高まり、情報も拡散されやすくなります。

最近では、商品本来の価値だけではなく、「話題に上りやすい仕掛け」が求められています。これはメーカーサイドだけに限らず、常に話題を探している消費者サイドからもニーズがあります。

もちろん「ハワイに行ったよ」「車買っちゃった」といった、“単価”の大きなニュースはそれだけで大変盛り上がりますし、逆に「セールで失敗した」というような感情が入るトピックも会話を活発化させるでしょう。

同じ理屈で、話題を提供してくれる商品であれば、そのもの自体が必要でなくても情報発信のために購入するという、購買と情報発信の関係が入れ替わってしまう現象がよく見受けられるようになりました。本来の流れとは異なる購買行動や商品開発が起きているともいえます。

アイスブランドで例えてみると、消費者たちは自分が食べたいフレーバーよりも、Instagram映えを優先して見栄えでアイスを買ったり、メーカーサイドもSNSにアップしてもらうためのメニューを開発したり、といった具合。

これらはすべて、商品や行動を「話題」(この場合の「話題」というのは、リアルな場での会話はもちろんのこと、SNSでの投稿トピックをも含みます)に、価値変換させるためということができるかもしれません。

Instagramで“いいね”をもらうためのアングル探しや加工をするのも、ハッシュタグをたくさんつけるのも、自分の消費行動をよりパワーのある「話題」に還元させることを、本能的に狙っているのだと思います。そう考えると、コラボでニュースをつくる際も、話題としての価値をどこまで高められるかという観点で、企画を詰めていくことが必要です。

ビッグネームブランドと組むのでも、未知のアウトプットを発表するのでも、方法はそれほど問題ではなく、そのニュースが消費者自身の話題として受け入れられるよう「誰に、どこまで、どうやって伝えるべきか、そして、伝えたくなる話題なのか」という、計算がなされていることが大切になってくるのです。

一つ付け加えるとするならば、もちろん、そうして生まれた話題が会話のテーブルに載ることも、メディアに取り上げられることも、SNSで拡散されることも、重要ではあります。ただ欲をいえば、消費者がその商品を買ったり、サービスを使うところまで、つまり実行動・実体験まで促すことができればベストです。

話題として注目され、その先に、ビジネスのど真ん中に価値を還元できるものが、ブランド・コラボの目指すべき場所なのではないかと思います。

イラスト
(イラスト:瀧亜沙子)

見たことないもの、見たことあるもの

広告をつくるとき、“今までにない企画が正義”という暗黙知があります。

一般的に見て「それ、よくあるやつだね」「どこかで見たことある」というようなもの、つまり「二番煎じ」が最も嫌われがちです(もちろん、繰り返し同じフレームで企画をするからこそ、支持されているものもありますが)。

しかし、商品やサービスをつくる、というときは、必ずしも「これまで見たことない」ことだけが正しく評価されるわけではありません。

今日もきっと日本のどこかで、新しい商品・サービスが生まれては消えています。その中で「見たことあるもの」、言い換えれば繰り返し同じものが求められることは、その商品が定番として社会に受け入れられ、愛されていることを表し、たたえられるべきことなのです。

そんな時、コラボによる商品・サービス開発は、「見たことあるもの」を使って「見たことないもの」をつくり出せる、数少ない方法ともいえます。

これまで培ってきたファンや世の中でのイメージは継承し、活用しつつも、全く新しい挑戦ができるのです。安心と革新のハイブリッドとでも、いえるかもしれません。だからこそ、コラボによって生み出される商品・サービスは、インパクトが強く、世を驚かすニュースになりやすい性質を持っています。

新しい挑戦の下地には、これまでの涙ぐましいブランディングがある。そのことを忘れず感謝しながら、ブランドにより新しい風を吹き込むコラボが望ましいのだと思います。

すべての働く人に、コラボレーションを

書籍の刊行を機に、代官山蔦屋書店、青山ブックセンター本店をはじめとした書店にお声がけいただき、何度かトークショーを行わせていただきました。広告業界の方ばかりかと思いきや、メーカーやサービス会社にお勤めの方やデザイナー、メディアに携わる方、学生など、あらゆる職種の方々がお集まりくださいました。

皆さんに共通していたのは、新しいビジネスやプロジェクトをたくらむも(それは自分の意思でも、上層部の「何か新しいことを!」と号令に近いような指示でも)、アウトプットまでこぎ着けるのがなかなか難しいという声でした。邪魔をする要因は、伝統という名の社内のしきたりだったり、柔軟なメンバー編成ができない組織だったりとさまざまで、その答えを探しに来た、そもそも、やり方が分からなくて途方に暮れている、といった声もありました。

そんな時にこそ、コラボが状況を打開する一手になればと思います。これまでできなかったことをやるための道具として、ヨソと組み、非日常の中でプロジェクトを進めていく。きっと、ひとりではたどり着けなかった結果に出合えることでしょう。

そしていつか、部署がとか、競合他社がとか、そういった壁を一切取っ払って、いろんな会社のいろんな人たちがどんどん一緒になって、一つの仕事をしていく。コラボレーションの最終形態がそこまで流動的なものへと進化していければ、日本のビジネスはもっともっと楽しくなると思います。

さて、今回をもって全6回の連載が終わります。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

イラスト

 

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