メディア行動データ × ソーシャル・シークエンス分析No.2
「在宅時間帯が多い」12のメディアライフスタイル
2018/08/23
電通メディアイノベーションラボは、ビデオリサーチのひと研究所と共同で、現代のメディアライフスタイルを七つのグループ、30のスタイルで読み解くプロジェクトを実施しました。連載の第1回ではプロジェクトの全体像をご紹介しました。
前回触れたように、七つのグループは1日または1週間の基本的な生活サイクルによって次のように三つに大別されました。
・在宅している時間帯が多いグループ「①テレビ中心族」「②メディア以外中心族」
・日中の外出率が高いグループ「③月~金外出族」「④早寝早起き族」「⑤深夜メディア族」
・1日または1週間の過ごし方が不規則なグループ「⑥外泊・徹夜族」「⑦リズム不規則族」
今回から3回にわたり、三つそれぞれのグループごとにメディアライフスタイルの特徴を解説していきます。
今回は、基本的に在宅している時間帯が多い二つのグループ「①テレビ中心族」「②メディア以外中心族」を取り上げます。メディアライフスタイルの分析結果を性別・年代・職業・家族構成などのデータと突き合せることで分かる人物像も交えて説明していきます。
「テレビ中心族」の七つのスタイル
まず、「①テレビ中心族」から見てみてみましょう。
このグループの七つのスタイルは、まず在宅している時間帯が多く、そのうち多くをテレビ視聴に充てている点で互いに共通しています。異なるのは「外出するならどの時間帯が多いか」「テレビ視聴は専念視聴が多いか、ながら視聴が多いか」「他のメディアを利用する時間帯も多いのかどうか」の3つの分かれ目がどう組み合わされているかです。
このグループは全般的にみると女性50代の主婦層が中心になっていますが、後半の3タイプ(「5.在宅中心・テレビ専念視聴型」「6.テレビ専念視聴型」「7.日中外出・テレビ専念視聴型」)には、男性が多く含まれるか、男性の方が多いという特徴があります。「専念視聴」というキーワードに50代以上のテレビ好きの男性の暮らしぶりが既に垣間見えます。
他方、前半四つのタイプには全て「ながら視聴」というキーワードが付いています。こちらの4つのスタイルをけん引するのは8割が女性層です。
今回は、「テレビ中心族」の7つのスタイルのうち典型的な特徴を示している「1.在宅・テレビながら視聴&他メディア利用型」のタイプを取り上げてみましょう。
「1.在宅中心・テレビながら視聴&他メディア利用型」の特徴
このタイプは、女性が全体の81.4%に上り、特に主婦が64.9%を占めます。平均年齢が50代前半で、世帯構成を見ると親と子または夫婦と親などの2世代世帯が6割を占めています。淡いグレーの稜線に見られる通り、日中でも5割以上の人が在宅しています。
このタイプのメディア接触の特徴を挙げると、
①一日を通じた高い在宅率を背景として、色で塗られた朝・昼・夜の三つの山がはっきりと表れている。
②テレビ視聴がメディア接触の大部分を占める(水色や青)。ただし、その大半がメディア接触以外の他の生活行動との「ながら」行動(青)。
③日中を通じて、在宅時の「ながら」のラジオ聴取も目立っている(黄色)。
そこで、このスタイルへ分類された中から1人を取り上げ、1週間の行動を例にとって見てみましょう。
この回答者の生活サイクルをみると、朝は5時ないし6時に起床した後、10時ごろに外出しますが、正午には自宅に戻っているようです。午後から夜にかけてもう1度か2度の外出時間帯があるものの、基本的に在宅時間帯が多くなっています。
メディア接触をみると、全般的に濃い青で塗られた「テレビの(他の生活行動との)ながら視聴」がほとんどを占めていることが分かります。水色で塗られたテレビの専念視聴は、テレビ視聴時間帯のうちごくわずかです。黄色は新聞・雑誌・ラジオへのながら接触を表しています。このようにメディア接触のほとんどが「ながら」である点に、このスタイルの特徴がよく表れています。
このような情報から読者の皆さんはどのようなメディアライフスタイルを思い浮かべるでしょうか。夫や子どもの送り出しや家事に追われる毎日を送りながら、テレビやラジオからさまざまな情報を得て世の中へのアンテナを張る、典型的な主婦のイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。
「メディア以外中心族」の五つのスタイル
これに対して、「②メディア以外中心族」の方はどうでしょうか。
このグループの五つのスタイルは、最初のグループと比べて、在宅する時間帯の多さに対してテレビ視聴の時間帯が比較的少ないグループです。とはいってもあくまでも「テレビ中心族」との比較です。
その5スタイルの中で、「10.朝夜テレビ視聴型」「11.在宅繁忙型」「12.在宅中心・夜メディア型」の3タイプでは、メディア接触行動がテレビのリアルタイム視聴やタイムシフト視聴、パソコンやモバイルのネット行動まで分散しているのが特徴です。
このグループでは、五つのスタイル共通で女性が8割程度を占め、40代が多く、ほとんどが主婦層から成り立っている点にも特徴があります。
「8.日中外出・メディア離れ型」の特徴
そこで、このグループの中でもメディア接触全般が低めの「8.日中外出・メディア離れ型」の特徴を調べてみましょう。
このタイプでも男女比では女性が9割近くに上ります。平均年齢が40代前半と、「テレビ中心族」よりも10歳ほど若く、家族構成では2世代世帯が8割を占めます。
ただし、他の4タイプと比べて主婦の割合は48.8%と最も少なく、職業に就いて販売・サービス職に従事している人が19.4%に上ります。その働き方については、フルタイムではなく週に3日以上パート・アルバイトしている人が27.1%と、このグループのどのタイプよりも多くなっています。
そうした背景から、正午を中心にほとんどの人が外出している時間帯がありますが、それでも15時頃には半分の人が既に帰宅を終えている状態に戻っています。在宅率が高い割には色で塗られたメディア接触部分は全般的に低調といえるでしょう。
メディア接触の特徴を挙げてみましょう。
①昼のメディア接触の山がほぼ見られず、朝・晩の山もさほど高くない。
②メディア接触の中では、それでもテレビ視聴が一日を通じて最も多いが、モバイルによるネット利用(ピンク)がテレビに次いで多くなっている。
そこで、このスタイルへ分類された中から1人を取り上げ、1週間の行動を例にとって見てみましょう。
ここに示したのは、このタイプに属する販売・サービス職に従事する34歳の女性の1週間のメディアライフスタイルです。平日の日中をみると8時半に外出するものの、月曜日や火曜日は14時台、木曜日や金曜日は16時までには帰宅しています。外出には職場への移動時間を含めますから、フルタイムというわけではなく時短勤務あるはパートタイムの勤務形態でしょうか。
その意味で、この回答者が在宅している時間帯は全体的には長めといえます。その中でメディアに接触している時間帯はごく限られていることがはっきり見て分かります。
そんな中でも朝6時30分と夜の7時台にテレビを「ながら視聴」する基本リズムをしっかり保っていることが分かります。また、ところどころにモバイルネット利用が記録されています。
このような生活記録を見て思い浮かぶ人物像として、仕事と家事や育児の両立で目まぐるしい一日を送る女性像をイメージする方も多いのではないでしょうか。「メディア以外中心族」の5スタイルの中で、昼にメディア接触の山がないというのは、昼間にパートやアルバイトなどで外出する必要があるという生活の基調リズムによって決まってきているといえそうです。
生活に埋め込まれたメディア接触のスタイル
今回ご紹介した二つのグループは共に女性が中心となっています。7グループの中では両方とも在宅している時間帯が多いグループですが、専業主婦なのか働く日があるのか、といった生活サイクルの違いを背景としてメディア接触のスタイルも大きく異なってくることが分かりました。
今回ご紹介した二つのスタイルとも、忙しい生活を送る中でメディア接触行動が決まっていることがうかがえました。片方は家事や身の回りの用事に忙しいことからテレビやラジオの「ながら」が基調となり、片方は家事・育児と仕事の両立で忙しい中でメディア全般への接触が限られてくる様子も浮かび上がりました。
また、ソーシャル・シークエンス分析から分類したメディアライフスタイルをグラフ化し、性別・年代・職業・家族構成などのデータと突き合せることで、在宅・外出・睡眠といった生活のサイクルの中にメディア接触行動がどう埋め込まれているのか、よりリッチに理解できるようになりました。
次回は、ソーシャル・シークエンス分析のこのような特徴を踏まえて、日中の外出率が高い「③月~金外出族」「④早寝早起き族」「⑤深夜メディア族」の三つのグループの特徴についてご紹介します。